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私の彼はユーチューバー  作者: 八田ガナ
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私の彼はユーチューバー プロローグ1

私達の進む道を遮るように、

巨人が仁王立ちしていた。


ショッピングモールに設置された

特大看板の中で

美人モデルがポーズを決めている。


手を腰に据え、吊り上がった目は

真っ直ぐにこちらへ向いていた。

店内に吸い込まれていく人々の中、

私達だけを睨んでいるように。


横幅が私の歩幅で約3歩だから

約三メートル。

縦幅は四倍ぐらいありそうだから

ざっくり目分量で十二メートル。


このサイズを一杯に使って、

今流行りのハイウエストな

ワイドパンツを履いている。


自慢げに足を開き、末広がりに伸びる足。

トップスの白いシャツを

パンツにインさせて

その足を強調させている。


モデル体型だからできる格好とポーズに、

何より揺るぎない自信に満ちた端正な顔。


この巨人は何があっても

動じないだろうなあと思う。




私は隣にいるツボッチに

意地悪な質問をした。

「あのモデルが、ツボッチに告白してきたらどうする?」


「それは困る」


「どうして?あんなに美人なんよ」


「美人でも困るな」


「なんや困るって。私がおるんやから、きっぱり断らんかい」


「そんなことで困ってないよ。

あのサイズで告白してくるんやろ。

凄い目立って恥ずかしいやんけ。

デートにも気軽に誘えへんし。

それにあんなサイズの服、

どこ探しても売っとらへんで。

あの子あの一着しかもってへんことになる。

クッサイでー。

それにあのサイズやから、

余計にクッサイでー」


「私、そんなつもりで質問してへんわ。

誰がそこまでマジメに考えろー言うた?

でもその考えで言うとな、

胸がもの凄いことになるで。

それは嬉しいやんな?」


「なんでやねん。

あの子に寝そべってもらわんと、

自分から触られへんのやで。

触りとーなったら、

いちいち触りたくなったでーって、

大声で叫ばなあかんのか。

お前の好きな雰囲気とやらが台無しやがな。

しかもな、ああいうもんは、

掌で鷲掴みにできるから気持ちいいんやで。

触る方も、たぶん触られる方も。

あれやったらパイずりもでけへんし、

体ごと埋もれるで。

窒息死してまうわ。そないなったら、

あの子は警察になんて説明したらええねん?

私の胸で静かに息を引き取りましたってか?

なあ?」


私は慌ててツボッチの二の腕を摘んだ。


「ちょっとー。声がでかいって。

これやから関西人はって言われるんや。

もう、下品なんやから」


「下品って、

お前がへんなこと聞いてくるからやろ」


ツボッチは摘まれた二の腕を振り払うと、

私より先に店内へ入っていった。

開かれた自動ドアから冷気が押し寄せる。


ツボッチは、

いつも通り一階奥にある電気店へ歩みを進めていた。


私は真っ先に、

夏のクリアランスセールを開催している、

服売り場の方へ行きたいのだけれど


自然と足はツボッチの方へと向かってしまう。

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