5話 読めない
主人公がちょっと成長しました。
語学って難しいですよね…
そうと決まれば今日の暇潰しは決まりだよね?そう、もちろん読書!これしかないでしょ!
「ねぇマリー、本が読みたいの。」
「本…ですか?分かりました。私が書庫から持って参ります。ですがお嬢様、文字はまだ習ってないのでは?」
「うぐっ…」
どうしよう…忘れてた。私はまだ読み書きを教わってない。でも本からの情報収集は基本だしなぁ。ダメ元で聞いてみるか。
「じゃあマリー、教えてくれる?」
「分かりました。旦那様に家庭教師をつけて頂けるようお願いしてみますね。」
家庭教師!これでこの世界の事とかも色々聞けるかな?一応記憶との照合はしておかないといけないからね。
「やったぁ!ありがとう、マリー!でも、今読みたいの。だって暇なんだもん。ダメ?」
「それは…その…」
マリーが言い淀むなんて珍しい。何か物凄く困った事情でもあるのかな?もしかして勉強は安静してる事にならないから迷ってるのかな?
「ベッドの上にいるから。ね?お願い!」
「……では、僭越ながら私が知っている範囲でお教えさせて頂きます。」
「ありがとうっ!!」
そして早速マリーが書庫から絵本を持ってきてくれた。それを使ってまずは読み方を教えてくれるみたい。
「ではお嬢様、まずはこの本を使いましょう。」
マリーが本を渡してくれる。表紙はとても綺麗な絵で、仲睦まじい男女が描かれている。これはきっと、よくある恋愛モノの絵本ね。囚われのお姫様を王子様が助ける、みたいな。
「この絵本は、初めて文字を習う時によく使われるものです。簡単な単語ばかりなので、お嬢様ならきっとすぐに読めますよ。」
「へえー。マリーは物知りなのね!」
「……まずは題名からですね――」
何か変なこと言ったかな?ばつの悪そうな顔をしてから話題を変えられちゃったけど。まあそれは後にして、出来ればさっさと読めるようになりたいしね。
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という事で始まったマリーとの読み書き講座だったんだけど。実際私には前世があるし、この世界は前世でプレイしてたゲームだし、読めるんじゃない?って思ってました。
……読めない。
何この文字。暗号じゃん。だって表紙にある題名、絵の一部だと思ったんだもん。まさか絵本すら読めないとは。四角、三角、丸、点の組み合わせで文字を表してるせいで、どれもこれも似た感じになっちゃってるし。それに26文字もあるんだって。
これ流暢に使えるようにしなきゃいけないんでしょ?きついなぁ…。でも輝かしい未来のために頑張らなくちゃ!今思い出したんだけど、確か前世の『アルファベット』って似たようなものだったよね。対応させたら覚えやすいかも。
初めから挫折しかけたけど持ち直し、途中で昼ごはんを挟んで数時間。何とか絵本レベルなら初めての話でも1人で大体は読めるようになりました。似たような内容が多いせいで、使われてる単語がほぼ一緒だからね。
前世の記憶が邪魔しちゃって大変だったけど、やっぱり子供の頭は柔軟だよね、本当に。もっと時間かかると思ってた。あと、マリーの教え方がとっても上手だったおかげだね。文字の区別が出来なかった私に根気強く教えてくれたし。
それにしてもこの世界の絵本は面白い。内容はよくある英雄譚が多いけど、この世界には魔法のモンスターも実在する!つまり、物語に出てきた英雄達の行動は、実現可能なのだ。とはいえ魔法に関しては大規模過ぎるし、そこまで強大なモンスターは人語を話せ、人とは互いに不可侵の約束だから、本当には出来ないらしいけど。
魔法かぁ…。早く使ってみたいな。やっぱり誰しも1度は憧れるよね、魔法って。そして魔導書!我が屋敷の書庫にも何冊かあるらしい。読まねば。その為にももっと難しい本が読めるようになるまで勉強してやるぞ!
実際のところ、言語の習得速度ってどのくらいなんでしょう?多分絵本って数時間じゃ読めないですよね?そこは理論的に考えられる&子供の吸収速度&英語に対応してるって事で。
元のゲーム自体、文字はアルファベットを参考に作られています。
そういえば数年前に読めそうで読めない文字とかって流行りましたよね。ひらがなっぽく見える英語とかならいいんですけど、どこかおかしいひらがなとかって見てて背筋ぞわってしませんでした?懐かしいなぁ。