プロローグ
フォーサイス侯爵家ではいつも通りの日常――ではなく、人々が慌ただしく動き回っている。
3人の息子を持つフォーサイス侯爵夫妻はたった1人の娘をそれはそれは可愛がり、甘やかして育ててきた。
確かに娘は親の贔屓目を抜いてもとても可愛らしい。
ふわふわと波打つ明るいピンクベージュの髪にぱっちりとした薔薇色の瞳、白い肌という、妖精のようだと誰もが褒め、将来も期待されている。
今日はそんな娘の4歳の誕生日。張り切らないはずがない。
普通、誕生日というのは5歳、10歳、と5年事に祝う風習の中で毎年誕生日を祝っているというのだから、その溺愛振りは言うまでもないだろう。
そんな中、当人である娘は自室で侍女と支度をしていた。
それは侯爵夫人が、主役なのだからかわいいものを仕立てましょう、といって作らせたドレスである。
小さく可愛らしい主人の晴れ姿に内心わくわくしながらドレスを用意する侍女の前で、娘はにこにこと立っている。
ドレスを手に取った侍女が主人に着せようと振り向いたその時、主人の小さな体が傾いていくのが視界に入り……
「きゃああああっ!!お嬢様っ!?」
侍女の悲鳴が屋敷中に響き渡った。
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眩む視界の中、今日4歳の誕生日を迎える私、アレクサンドラ・フォーサイスは思い出してしまった。
この世界が前世でプレイしていた乙女ゲームであることを。
そして、自分が悪役令嬢であることを。