魔王の息抜き
「ロレンスー」
「どうしましたか?」
俺はやっとこっちの言葉を覚えようと思った。なのでロレンスを呼んだ。
「言葉教えて」
「いいですよ」
そっからこっちの文字を教わった。やっぱり世界が違うと言葉も全然違って難しい。
「陛下は覚えが早いですね」
いきなりそんなことを言われた。でも嬉しい。ロレンスに言われると照れるけど。
「そんなことないよ」
照れ隠しでそのまま黙々と続ける。そのお陰で大体は読み書きできるようになった。時間は少しかかるけど。
「今日はありがと、ロレンス」
「いえ、俺も楽しかったですし」
でももうちょっとだけロレンスと一緒にいたい。
「ロレンス、もうちょっと一緒にいよ?」
「はい、ユート」
執務室にいるのは暇なので裏庭に行った。
裏庭にはいろんな花があった。どれも綺麗だ。
「綺麗、だね」
「そうですね」
ロレンスの優しい顔、ずっとこのままここにいたいと思えるほどいい顔をしている。
「俺さ、こっちにこれて良かったって思ってるんだ」
「俺も、ユートがこっちに来て良かったと思ってますよ」
それは本音かどうかなんて俺には分からない。けれど、本音だって信じることならできる。だから俺はロレンスが本当にそう思っていると信じている。
「魔王なんてふざけてると思ったけど悪くない」
ロレンスと出会えたし、向こうじゃできないような経験もできるし。
「変わりましたね」
変わったのかな。自分じゃ分かんないや。
「壁作ってましたから、ユートは」
「そうかもね」
自覚症状は無きにしも非ずだ。
「さて、そろそろ部屋に戻ろうかな」
多少惜しいがでももっと離れたくなくなる前に部屋に戻らなきゃ。
「ええ、陛下」
俺たちは部屋に戻った。
部屋のベッドは相変わらずでかい。
段々こっちにも慣れてきたな。魔王らしくなれてきてればいいけど。
そんなことを考えながら寝た。
朝起きると目の前にロレンスの顔があった。
「ろ、ロレンスどうしたの!?」
起きたてで凄く驚いた。
「おはようございます」
ニコッとしたロレンスの顔を見て何故か安心する。
「おはよ、何でここにいるの?」
「ガブリアスに呼んでこいと言われたので」
また書類地獄かな。めんどくさいな。
「行くから待ってて」
「はい、陛下」
ロレンスは部屋を出て行き、俺は着替えたりなどしてから執務室に向かった。
執務室には相変わらず怖い顔をしたガブリアスとディレアが仕事していた。
「やっときたか、さっさと仕事しろ」
俺やっぱりガブリアスに嫌われているのかな。いつもこんなだし。
「分かってるよ」
俺は書類にサインを始めた。少しは読めるけどまだまだ読めないとこばかりだ。
数時間してやっと終わった。
「あぁ、疲れた」
「お疲れ様です」
ロレンスが飲み物を持って来てくれた。
「ありがと」
それを受け取り飲む。
こっちの飲食物も舐めたものではない。いろいろ美味しいものばかりだ。
「ねえロレンス、こっちって学校ある?」
単なる興味で聞いてみた。
「ありますよ、士官学校と普通の学校が」
「行ってみたい!」
俺がそういうとロレンスは少し困った顔をした。
「たまにはいいんじゃないか」
そう言ったのは驚くべきことにガブリアスだった。
「仕方ないですね」
そして明日行く約束をした。こっちの学校にも興味がある。
明日が今から楽しみだ。明日まではこっちにいよう。
ワクワクしてたらすぐに時間が経って夜になった。
今日はいつもより早目に寝た。
そしたら夜中に目が覚めてしまった。
どうしよう、やることもないしな。
部屋を出て裏庭に行った。裏庭にはロレンスがいた。俺は何故か隠れてしまった。
「俺は何度貴女を望んだか、でもどれだけ望んでもあなたは帰ってこない」
こんな声を出してるロレンスは初めて聞いた。
部屋に、戻ろう。
部屋に戻ると何故か胸がモヤモヤして眠れなかった。
ロレンスの好きな人のこと言ってたのかな。
そんな憶測ばかり頭を過ぎる。そして気付いたら朝になっていた。
俺は着替えて執務室に向かった。
「おはよ、皆」
「おはようございます、ユート」
「陛下、おはようございます」
「ああ」
ガブリアスが挨拶はしてくれなかったけど返事はしてくれた。
ロレンス...ダメだ、忘れよう。
「ロレンス、学校いつ行くの?」
普通通り接せてるかな。ちゃんといつも通りの顔かな。
「朝食を食べて準備できたらです」
いつも通りのロレンスだ。
「楽しみだな、学校」
朝食などを済ませ準備もさっさと終わらせる。それから玄関に向かった。
「早かったですね、陛下」
「ああ!早く行こう」
馬に乗って学校に向かった。まあ俺はロレンスの後ろに乗ってるだけだけど。
「ロレンスも学校行ってた?」
「はい、まあ士官学校ですがね」
今日行くのは俺に合わせて普通の学校らしい。
30分くらいで学校に着いた。
「ここです、陛下」
学校には昨日ロレンスが話をつけてくれたらしい。なので早速校内に入った。
入口のとこで先生らしき人物がいた。
「今日ご案内させて頂くジュリアンナと申します」
ジュリアンナ先生が頭を下げたので俺も咄嗟に頭を下げた。
「お願いします!」
校内案内が始まる。今は休み時間だったようで廊下にも生徒がいた。
「ジュリ先生、その人は誰ですか?」
生徒がそんなことを聞いた。
「こらっ、この国で一番偉い魔王様ですよ」
生徒は驚いて目が点になっている。
俺は少ししゃがみ生徒の頭を撫でる。
「俺は悠翔よろしくね。君の名前聞いてもいいかな?」
できるだけ笑顔で聞く。
「わ、私は、カンナ、です」
「カンナちゃんか、かわいい名前だね」
照れて俯いてしまったようだ。そんな顔もかわいいな。
チャイムがなり皆教室に戻る。
それからも校内を見て回った。
城に帰った時には満足していた。
「楽しかったー」
「良かったですね、ユート」
また行けたら行きたいな。
俺は夕食を食べながら今日のことを思い出していた。
「充実した一日だったな」
久しぶりにこんないい一日を送った。やっぱりこっちに来て良かった。
「ユート、そろそろ寝ましょう」
俺はいろいろ済ませて寝ようとしたが、部屋に着いたら床が消えた。
俺魔力使ってないのになんでだ。
気付くと地球の自分の部屋のベッドだった。
やっぱり帰ってきたのか。
まだ夕飯までは時間があるので腹をすかすため少し外に出て運動した。
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