魔王だけどやっぱり高校生
朝学校に着き教室に入ると定期テストのお知らせが貼ってあった。
「定期テストか」
もう学年末テストだ。もうすぐ進級する。
この学校では学年末テストは進級テストとも呼ばれている。なので皆必死に勉強する。
僕も勉強しなきゃな。
学生は学校に通って勉強するのが仕事だとたまに言われる。だとするならば、僕の本業は高校生と魔王、どちらなのだろう。
僕はそんなことをかんがえながら教科書類を開ける。
これは国語か。勉強したって無意味だろうに。
僕は基本頭がいいとされる部類に入る。しかし国語の筆者の気持ちを考えなさいとか、登場人物の気持ちを考えなさいとかは酷いほどにできない。
他人の気持ちなんて分かるわけない。想像してその想像の結果に点数をつけるのはおかしいと思う。
僕の苦手は教科書開いて勉強しても無意味だなと思い、ため息を一つついて机の中にしまった。
僕は、いつかは決めなきゃいけないのかな。こっちか向こうか。
でもこんな相談こっちの人にはできないんだよな。
「おーはよ、悠翔」
「ん、あぁおはよ」
「悠翔、勉強教えてよ」
こいつは試験の度に勉強を教えている。とはいえこいつ頭いい方だし特に教えることがない。
「めんどくせえ」
理解力あるし、授業寝てるからできないだけで自分で勉強すりゃできるだろ。
「最近悠翔冷たい」
「るせえ」
別にこいつが嫌いというわけではない。そういうわけではないのだがこういう扱いになってしまう。
「隼斗、異世界って信じるか?」
「信じてないよ」
やっぱりそうだよな。僕だって行くまで信じてなかったし。
トイレに行こうと席を立った。
「どこ行くの?」
「ついてくんな」
それだけ言ってトイレに向かった。
個室のトイレに入る。そしたら扉を閉めたタイミングで落っこちた。
さて、今回はどこだろうか。
床があるのを確認して目を開ける。
「ここはどこだ」
とりあえず僕が来たことない場所だ。
ロレンス、来ないかな。とりあえず人が通りかかるのを待つ。
あー、暇だ。
することもなくうだうだ待っているだけというのは性にあわない。
仕方なく頭の中で勉強していた。
それからすぐにロレンスが来た。
「遅くなってすいません、陛下」
「別にいいよ」
僕は立ち上がる。
「それで、ここは?」
「どこだと思います?」
いたずらっ子みたいな笑顔で聞いてきた。
質問を質問を返すなんて子供みたいだ。まあこの笑顔みてたら答えちゃうんだけどね。
「近くの城」
「正解です。正確にはガブリアスの城です」
ガブリアスの城か、でもなんでこんな人いないんだろう。
「今兵士は訓練中ですので」
え、今心の中読まれた。
僕が混乱しているとロレンスは僕の頭に手を置いた。そして撫でてくれた。
ロレンス、あったかい。
僕は暖かさを求めていたのかもしれない。もしかしたらだけど。
「ロレンス、ありがと!」
今、決めた。今から一人称を僕から俺にする。魔王として、その方が魔王らしいだろう。
「ロレンス、俺たちの城に戻ろう」
「ユート、はい」
そこからロレンスの馬に乗って戻った。
城ではいろんな人が相変わらずいっぱいいた。
「戻ったか」
待っていたのはガブリアスだった。
「どうしたんですか?」
「仕事だ」
そっからまたサイン地獄だった。結局夜までかかってしまった。
終わって部屋に戻りロレンスと話した。
「いつかはこっちか地球か決めなきゃいけないかな」
「ユート、魂のあり方が魔王なら場所なんて関係ありますか?」
優しい顔してそんなことを言われたので俺は首を振った。
「関係ないね、ありがとねロレンス」
どっちかに決めなくてもいいんだ。ロレンスのお陰でそれがわかった。
「ロレンス、今回はもう帰るね。勉強しなきゃいけないし」
そう言ってベッドに横になる。そして目を瞑り魔力を使う。落ちてく感覚に襲われ気付けばトイレだった。
「戻ってきたのか」
俺は立ち上がり教室に戻る。
「おかえり」
「ああ」
また教科書を開き勉強を再開する。俺はやっぱり魔王であっても高校生なんだ。どっちかに決める必要はないんだ。
「何か悩みが吹っ切れたような顔してるぞ」
「そうか?」
でも、そうだな。悩みは吹っ切れた。ロレンスのお陰で。
「ということで勉強教えてくれ」
「しゃあねえな、問題集貸せ」
隼斗に勉強を教える。授業開始五分前に勉強を中断した。
もうすぐ二年か、早い一年だったな。
「隼斗、姉さんの誕生日プレゼント何がいいと思う?」
「心がこもってりゃなんでもいいと思うぞ、ブラコンだし」
隼斗曰く俺たち姉弟はブラコンでシスコンらしい。まあ実際はそんなことないと思うけど。
何かうまそうなお菓子でいいか。姉さんお菓子好きだし。
教室に教師が入ってきて授業が始まった。
授業が終わると急いで家に帰った。別に用事があったわけではないけど家で向こうに行きたかった。
今日こそ自分の魔力で向こうに行ってやる。とりあえずベッドに横になる。そして魔力を使おうと頑張ってみたら向こう世界に行けた。
「ここは、城の自分の部屋かな」
「正解です、陛下」
ドアのところにロレンスがいた。
「ロレンス!あのね、自分の魔力でこっち来れたの!」
そう俺が言うとロレンスは微笑んだ。
「さすが陛下です」
ロレンスに褒められるととても気分がいい。何でかよく分かんないけど。
「またサイン地獄かな」
そう言いながら執務室に向かう。
「どうでしょうね」
執務室のドアを開けると書類の山があった。やっぱりまたか。
「さっさと仕事しろ」
ガブリアスがそう言ってきて、俺は椅子に座りサインを書き始めた。
しばらくはサイン地獄から脱せなさそうだな。
そんなことを考えながらやった。
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