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93.また新たな始まりの朝がやって来た

ブックマークありがとうございます。ヽ(´▽`)/

大変遅くなり楽しみにして頂いている皆さん申し訳ありませんでした。

今回はちょっとあれなので理由を後書きに記します。


それでは楽しんでいただけたら嬉しいです。.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.

 異世界ハイキングの翌朝。

 零司たちホテルのバンと厩舎のデンク爺さんは夜明け近くまで飲んだあと零司の回復で二日酔いも無くスッキリとして仕事前のひと休みに入る。


 零司は異世界転移門へ向かうと力の半分を注いで転移先の時間を進めた。

 こんな事を毎日十ヶ月以上続けないと元の時間に繋げられないのをまどろっこしく感じるのだが確実にあの場所へ帰るためには今はそれしか出来ないのだからしょうがない。

 そして異世界転移門の格納庫を出ると東の空は白み明るくなってきた。

 大陸づくりの話し合いは出来なかったと思うがラナたちを保護出来た事で良しとしよう。

 それに彼女たちだけ救われて他の奴隷たちは置き去りな現実から見れば単なる偽善かも知れないが、歴史に干渉しない手段しか選べないのだから仕方ない。

 神の力を持っていても過去改編しない範囲で選択出来る事は限られているのだから。



◻零司の部屋


「零司……んふふ」

 ベッドで眠る楓は枕に抱き着き夢を見ているのだろう優しい笑顔で声が漏れた。

 その背中は日焼けの肌に細い紐の跡が残る。


 零司はベッドに腰掛け楓の名を呼ぶと、楓はゆっくりと目を開け明るくなってきた部屋を見回して零司の部屋に居るのを思い出した。

 そして目の前でこちらに向き直り唇を寄せる零司の期待に応える。

 まだ頭が廻り切ってはいないが昨日何度もキスしたのはきちんと覚えているしその延長線上に今があるのは理解していた。

「帰って来るのが遅い」

 楓は零司を引き寄せて甘える。

「済まない、待たせたな」

 寝ている楓を優しく起こし抱き寄せる零司に楓も零司の首に手を廻して夢の続きを楽しむ様に何度も口づけを交わす。

 零司が抱き寄せたまま体を起こすと大きな枕がずり落ちて楓の日に焼けた上半身が露になり薄い胸に残る僅かな白い肌が日焼けをより強調しているそれは零司に沢山愛されたいという楓の物言わぬ主張だ。


 月曜の朝だと言うのに火が着いてしまった二人は止める事など出来ない勢いのままに結ばれた。

 零司が求めるまま与え、楓が差し出すそれを優しく強く愛しいと感じるままに貪る。

 揺れるベッドの上で声にならない声を上げ、求め合い与え合いひとつになるその喜びを確かめ合う二人。

 零司の背中に残る幾条もの赤い筋を作り出すその指には輝く銀色の指輪がひとつだけ嵌められている。

 四つん這いになった楓の小さな手の甲を零司が上から重ねて確りと包み込み、二つの指輪は重なり合い、揺れる二人の想いは増して行くのだった。




「みんなおはよう」

 リビングの扉を開き爽やかに挨拶した楓は零司と共に入室する。

「おはようございます楓様」

 真っ先に挨拶したサーラは気が付いていても普段通りに応えた。

「何だか機嫌良いわね」

 マルキウはこの辺りの機微には疎いので怪しむだけだ。

「おはようございます」

 笑顔で返したラチェットは流石に気が付いたらしい。

「鉄の臭い……」

「!!」

 リリは含みを持たせた独り言をポソっと口にする。

 楓は浄化したからそんな筈は無いと思うもののやっぱり気になってしまうが直後に事情を察していた他の女たちが小さく首を横に振った。


 零司はそんなやり取りを見ながら何をやってるんだかと思いながらいつも通りの挨拶をする。

「おはよう」

「おはようございます零司(ご主人)様」

 次々と応える女たちは昨日の事実上の婚約宣言に色気付いている。

 それは鍵として渡した指輪を左手薬指に嵌めている事からも判る様に女たちは非常に機嫌が良く、二人が結ばれたと解っていてもそれは将来の自分を重ねたものであり問題どころか喜ばしい事と認識している。


 零司は住人全員が揃っていない今の内にやっておく事があった。

「人数が増えたし模様替えするぞ」

 零司たちが来る前に懸案として話に上がっていたが零司がやってくれるならそれに越した事はないとそこに居た全員が風情のある奥の食堂へ移動して楓たちは朝食の準備を始め、サーラはラナたちを呼びに向かった。


 零司は二十人全員が中心に向いた形の無駄が多い大きな丸いテーブルを回収して少し余裕を持ったレストラン型のテーブルセットを出した。

 今までの皆一緒のテーブルにと言うスタイルは失われてしまうが増えた住人に対してそろそろひとつのテーブルでは限界に近いものを感じている。

 零司としては少し申し訳ないと思っているのだがポピュラーな配列でありながらも零司らしい観葉植物や美しい装飾などの細かな気配りから思いの(ほか)好感を以て受け入れられた。

 そしてリラックス出来るリビングはエントランスと新しい通常の食堂の間に置かれる。


 サーラがラナたちを連れて戻ると通常の食堂では既に配膳が始まってラナたちもサーラに続いてトレーを受け取り順に器によそって貰うその有り(よう)はまるで日本の学校給食だ。

 空いている席に着いた六人は楓に続いて感謝の言葉を捧げ食べ始めた。

 今日の予定や昨日の話などで活発な会話が始まる。


 テーブルにあるのは昨晩の様な肉祭りとは異なり比較的質素な食事で六枚切り厚のトーストに野菜スープ、ギールにスクランブルエッグとリンゴのウサギだった。

 トーストはそれぞれのテーブルに置いてある籠に纏めて入っているし、スープが足りなければ配膳台にある保温鍋まで取りに行けば良いので特段難しい事は無い。


 そしてパンに関して楓はとても気を使っていた。

 何をかと言えば『便秘になり難い様に』である。

 最初の内は日本で結構人気があったモッチリとしたパンを目指していたのだが、モッチリパンは噛む時に確りと固めてしまい水分が浸透し難く便が硬くなり易いのを発見。

 それにより寧ろサックリとした仕上がりになる様にあまり捏ねない方向で仕上げる様に調整した。

 食感はザラッとしたがそれ以来通じが改善して女性たちからの受けが良いパンとしてそのレシピを一般に公開した。

 これ以来その製法を用いたパンは楓パンとして広まり各家庭でも普通に食べられる様になっている。


 『料理は愛情』

 本気で零司の嫁になるのを望んでいた楓は神の力を手に入れた事で更に料理の本質を極めて行く。

 食べる人が健康であるように、一緒に食べるひとときが幸せであるように、楓の愛情は抱えた沢山の人々の幸せを願う『慈愛の女神』と呼んでも良い程である。

 しかし慈愛の女神として人々から認識されているのはネコであり、楓はショッピングモールの立案者『救済の女神』として人々の記憶に刷り込まれている。

 確かに便秘と言う苦しみから解き放たれたのは救済にあたるのかも知れないが楓にしてみればそれは人々が名付けたもので本人が主張した訳ではないからその辺りはどうでも良いのだが。


 そうやって生まれた楓パンを口にするラナやエルたちはその軽さやサックりとした歯触りに驚き喜んでいるが従来のドイツパンに似たどっしりとした腹にたまるパンとは違うので見た目上では多目に食べる必要があった。

 それは出来るだけ荷物を減らしたい携帯食には向かない事を意味しているが一食程度のランチとして食べる分には問題無いとそちら方面へも広がりを見せている。


 野菜スープはミネストローネで先日から試験的に配布している日本で売られていたタイプの野菜を使った物である。

 ギールは白いレタスでサラダドレッシングが掛かりそれに軽くフワッと仕上がった卵焼き、程よくカリッと焼けたベーコンとトマトにデザートのリンゴウサギだ。

 それらを口にしながらサーラに質問するラナたちの食事はすすむ。


「ごちそうさまでした」

 楓たちのテーブルではラナたちの今後について話し合いがあり、食事が終わったら二階のバルコニーへ来る様に伝えて零司と楓は食堂を離れた。

 零司は家族だと言ってくれてはいるがエルたちにとっては命の恩人であり自分たちの主であると言うのは共通認識と言える。

 今まで王と国に身を捧げてていた彼女たちにとって王を越えた存在である神の家族だなどと畏れ多いと思えた。

 白亜の館の簡単な説明は昨日夜のリビングでサーラから聞かされてはいたがあくまでも大まかな話でしかないのでこれから失礼が無い様にして行かなければならない。

 あんなに汚れ弱っていた奴隷という立場の自分達に気を使って優しくしてくれた神々と人々に恩返しがしたいと思うのは当然だった。


 エルたちも直ぐに食事が終わりサーラの案内でバルコニーへやって来た彼女らはサーラに言われるまま席に着いた。

「少し待っててね」

 優しく告げる楓に緊張していたエルたちは肩の力を抜く事が出来たがラナは零司がやっている事に興味が向いている。

 零司はディスプレイに映し出されたラナたちの緒元一覧(スペックリスト)を見ながら考え事をしていた。

 少しして考えがまとまったのかディスプレイを横に押し流す様にして消す。



「待たせたな。お前たちにはこれから暫くの間ここで十分な休養を取るのと、こちらの世界の勉強をして貰う。会話に関してはラチェットが解決してくれたから勉強はかなり楽になると思う。俺の予想では一ヶ月もあれば充分にこちらの世界に順応できるだろう」

「そうね、こちらの世界では戦争どころか争いそのものが殆ど無い世界だし基本的に相手を疑う必要は無いわ。だから安心して話をして良いわね。ただし礼儀は大切に、ね」

「基本的にお前たちの教育はサーラに任せるがサーラも学校と仕事に出なければならないから日中は殆ど構ってやれん。最初の勉強は今晩の風呂を上がってからになるからそのつもりで休んでおいてくれ。それと昼食もサーラに頼んでおくから昼になったらさっきの食堂に集まって居て欲しい。話はここまでだ、何か聞きたい事はあるか?」

「お花畑……零司様、お花畑に行っても良いですか?」

 ラナが質問した。

「他人の部屋に入ったり機材を弄ったりしなければ屋敷の敷地内で自由に過ごして良いぞ。他はあるか」

 特に思い付かない様だ。

「それじゃ夕飯までは出来るだけ休んでおく様に。解散」



「皆さんおはようございます。あれ?」

「おはようございますケイン先生」

「日焼けしてますよね?」

「ええ、ちょっと暖かい所まで出掛けまして。ふふ」

「おはようございます」

「おはようにゃ!」

「おはようございますぅ」

「おはよー」


 職員室に到着した楓は早速日焼けした肌が話題になった。

 そしていつもの様にラチェットが煎れた茶を啜りながら講師たちも一緒に朝のミーティングが始まるが特に連絡事項は無い様で和やかに会話は進む。


「ねーケイン、『謎かけ』やらない?」

 マルキウは零司の頭の上で寝そべりながら問う。 

「『謎かけ』ですか? それは何でしょうか」

「やれば解るわよ。えーとね、朝は四本足、昼は二本足、夕方は三本足ってなーんだ?」

「え? えっと……動物でしょうか? 足があるのですから動物ですよね……んー、分かりません」

「ふーん、他は分かる?」

 マルキウは白亜の館の住人以外で知識層のケインに訊いたが答えられそうに無かったので次に答えられそうなダリルに目を向けるが腕を組んで考えている風ではあるが思い付く様子も無い。

 答えを知っている零司たちは黙って茶を啜っているがマルキウは寝そべりながら他の講師たちを見回して何故か得意気(どや顔)だ。


「それじゃ答えを言うわね」

 初耳のケインたちはマルキウをじっと見ている。

「人間よ」

 予想外の答えに何故? と言いたそうな面々。

「それはねー、赤ん坊の時は四つん這いで大きくなると足二本で歩くでしょ? それから年を取ると杖をついて三本になるから答えは人間ね、どーお? 面白いでしょ」

「ふむ。成る程、人生を日の位置で表現しているのですね、面白いと思います。ある程度の誤認を誘発しながら有り得ない物を想像させて、その答えを聞いた時にのみ真実に至る。確かに納得出来るのですが自分で答えを導き出すには通常の対話とは異なる独特のルールが解っていないと解けませんね。確かに面白いです、ふむぅ……」

 『長いわよ!』と、心で憤慨して零司の頭を一発叩く。

 ケインは考え込み黙ってしまった。

「まあ情報としての正確性に問題はあるが遊びだからな」

 零司の言葉にあまりにも真剣に納得を示すケインに周囲が微笑んでいる事に本人は気付いていない。


「ある程度言葉に余裕を持たせて想像力を膨らませ、通常では考え付かない発想を生み出す原動力になるんじゃないか?」

 当のケインは真剣にこの言葉の認識の揺らぎは面白いと考え、授業でも一定の口調やスタイルだけでなく変化を付けた『揺らぎ』のある物に変更すれば、よりスムーズに生徒たちに解り易く、ただ覚えるのでは無く自分から想像して考えさせる事でより深く理解出来ないかと考える。


 特に連絡事項も無いのでまた世間話をしているとホームルーム前の予鈴が鳴った。

「えっと、昨日のお出掛けの土産でお肉がありますから帰宅前に声を掛けて下さいね。それでは皆さん今日もよろしくお願いします」


 楓たちはそれぞれに担当教室へと向かい、今まで通りの日常が始まる。

やっと結ばれましたねぇ。うん、長かった。

出来たらもう少し描写したいところですがそれやっちゃうと注連縄さんやR18になっちゃうw


それと今回遅れたのは風呂上がりにいつまでも裸で居たからで、新しく見つけた小説を読んでいたらくしゃみが出てその晩から寒気に襲われ熱だしてました。(;゜∇゜)

頭痛でズキズキとする頭では脈の度に思考が中断してしまい寝てる間に読んでたその小説も良く解らない始末。あーあ、何やってるんでしょうねw


と言うわけで何とか続ける程度には復帰できました。これからもよろしくお願いします。

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