91.異世界ハイキング11 お祝い
開いてくれてありがとうございます。ヽ(´▽`)/
今回はいろんなお祝いの話。
零司は休憩室へ戻るとマリーが神になった事と同時に狼がマリーの僕として神獣になったと伝える。
全員が驚き祝福のパーティーを開く事にした。
ただエルたちの件が片付いてないので正式な公表前に内々のパーティーとしてここでやろうとなったのだ。
そしてこれはサーラも同じく正式な公表をしておらず何かの折りについでの様な扱いでしか祝っていなかったので一緒に祝ってしまおうとなる。
これもついでの様ではあるがそれは仕方が無い。
リリとマリーは出来立ての仲間と親睦会の最中だった。
ゾロゾロと納屋の奥から出てきた女たちが騒いでいてもマリーの気持ちが分かる狼たちは気にする事は無い。
先頭を歩く楓が親狼に近付き頭を撫でると嬉しそうに尻尾を振っている。
これもマリーが楓を上の者と認識しているからに他ならない。
女たちに囲まれてわしゃわしゃと撫でられまくる狼たちは自分達がこのグループで受け入れられたと喜んでいる。
何せ自分のご主人様は猪三頭を一瞬でやっつける力を持っているのだ。
そのご主人を従える存在からも認められるなど喜び以外の何があるだろうか。
そろそろ日暮れではあるが神化したマリーとサーラ、それに増えた仲間の為に猪肉パーティーをする事になった。
もちろん突然始まった野外パーティーの光が外に漏れない様にと新たに周囲をぐるっと取り巻く壁を創り出す。
ほぼフルメンバーで始まる賑やかな料理支度は次々と何も無い所から取り出されるテーブルや椅子、調理器具、食材などでいっぱいになる。
中央には焚き火を配置していながらコンロを使い様々な料理ができる。
そんな様を日が暮れて物陰になってしまった場所で唖然として見ているエルたち五人。
マリーたちが狼と一緒に戻って来た所から見ていたのでどういう動きがあったのかは分かっていても、そこで何が起きていたのかは言葉が解らないのでさっぱりである。
そこへ零司がやって来た。
「どっちにするか決まったか」
「あの、主様。畏れながらお訊ねしたい事があるのですがよろしいでしょうか」
エルたちが真剣な眼差しで零司を見つめる。
「答えられる範囲でならな。それで何が聞きたいんだ?」
「有り難う御座います。主様は神なのでしょうか」
「それについては今の時点では何とも言ってやれない。少ない判断材料で済まないな」
「いえ、本来ならば無かった命、それに我らの唯一の希望を救って頂きました。もし許されるならこれからもラナ王女だけでも守って頂きたく存じます」
「俺の所で生きると言うんだな?」
「はい、宜しくお願い致します」
「分かった、正直その方がお互いに助かる話だったからな。それじゃ皆こっちへ来てくれ」
「はいっ!」
「皆聞いてくれ」
賑やかだったパーティーの準備が一瞬で静かになり零司へと視線が注がれる。
「ここに居る五人が正式に家に来る事になった、皆仲良くしてくれ。それと言葉が解らないからラチェットに教育係を頼む」
「えっと零司さん、それなら言語変換術を掛けても良いですかぁ?」
「なん……だと? そんなものがあったのか」
零司は改めて自分のインフォメーションを確認する。
たくさん並ぶステータスの中に紛れて確かにあった。
あの世界は単一言語しかないので全く気にしていなかったのだ。
「はい、零司さんは最初から持っていましたし気付かないのも無理ありませんねぇ」
「その方が手っ取り早いが文字は……無理だな、分かった彼女たちに掛けてくれ」
「はーい、えいっ!」
「……クーリス、エルと話してみろ」
「はい。エル様、私の言葉が解りますか?」
「はい」
異世界組から歓声が上がる。
「ふむ。感謝するぞラチェット」
初めて零司にまともに感謝された気がするラチェット。
「どういたしまして、でも零司さんだって出来る筈ですよ? んふふ」
何気に機嫌が良くなる。
「なら感謝する必要は無かったな」
「なっ!? 酷いですぅ~!」
周りは笑いで溢れるがラチェットはやっぱり面白くない。
「まあ感謝してるぞ、これからも宜しく頼む」
エルたちにしてみれば今まで何を喋っているのか解らなかった人たちが突然流暢な母国語で喋り出す様は驚き以外の何物でも無い。
「主様、これは一体……何故皆さん私たちの言葉を話せるのですか?」
「それは違うぞ、俺たちの言葉をエルたちが解る様になったんだ。まあ細かい事は気にするな、お前たちも今日から俺たちの家族だからな」
「家族、ですか?」
「そうよ、そのお祝いにパーティーするから一緒に楽しみましょ。家に帰るのはその後ね」
その時、大きな波紋を生み出す一滴が落ちた。
「エル、私たちのあのお兄さんのお嫁さんになったの?」
静まり返る納屋の前、焚き火の音だけが聞こえている。
「えーっとレージ、もしかして私たち全員家族と言ってお嫁さんにしてたのかしら?」
「えっ!? そうなの零司!」
「そんな訳あるか!」
「にゃ~、ネコもお嫁さんなのにゃ~」
零司の右腕に抱き着いて腰を振るネコ。
「魔王様、照れ屋さん。ふふ」
零司の真正面にゆっくりと抱き着いたリリ。
「零司様……」
熱でもあるかの様にぼうっとして背中から抱き着くサーラ。
「駄目よ! 零司は私のなんだから!」
皆知ってる楓の居場所、左腕を取ると確りと抱き締めて零司に求めた。
零司も楓に求められて悪い気はしない。
腰を下げて楓と軽く口づけを交わした。
「ああ~……良いなあ」
本音が漏れる女たち。
「貴女たちはまだ駄目だからね!」
「まだ?」全員の口から漏れる疑問。
「へ? イヤ! 何でも無いから忘れなさい!」
「フーン……そう言う事なら待っててあげるわ。楽しみねレージ! あははっ!」
嬉しそうに羽を出して飛び回るマルキウ。
ソワソワする巫女たち。
自分もなのかと胸を押さえて零司を見つめるラチェット。
「楓、将来私とも結婚させてくれると約束して。そうしたら私はその時まで我慢する」
「零司様……私も……」
「私が行く時はイーノも一緒だからね!」
「はい! 姫様」
たった一言、ルールミルが初めて家にやって来た日に二人だけで交わした話が思い浮かんでしまい、つい口から出てしまった言葉はもう決定事項の様に認識されて収拾がつかない。
「……はぁ。もうしょうがないわね。零司、ちゃんと責任取りなさいよ」
「俺のせいか?」
「しょうがないでしょ! ただし私が一番だからね、それは忘れちゃ駄目よ?」
「何と言うか……分かった。楓がそれで良いなら受け入れよう」
「ヤッター!」
「今から楽しみ」
「零司様……」
「あわわわ、私はどうなるんでしょうか……」
ラチェットが慌てている。
「楓に聞け」
「零司様、有り難う御座います。ルールミルはきっと立派な子を生んで見せます」
「姫様共々宜しくお願い致しまーす!」
「ネコもにゃ?」
「あー……」×異世界組
「ねえエル、あの人飛んでるよ?」
「そ、そうですね。この方々は一体……きゃっ!」
「知りたいですかぁ? 知りたいですよね!」
突然目の前に現れたラチェットに驚きたたらを踏んだエル。
「この方々は何と! こちらの世界で生まれ育ち、異世界で神と成られた方たちとそのご家族となられた方々です!」
目を爛々と輝かせ、待ってましたと言わんばかりに「えっへん」して白い翼を広げて見せる。
「神、様?」
エルたちはポカンとしている。
そうではないかとは夢見る感じでは思っていたがまさか本当に神だったとは。
「そして貴女方も今その家族として迎え入れられたのです!」
「ようこそ皆さん、私たちは貴女たちを歓迎するわ」
「歓迎するのにゃ」
「ん」
「おめでと! 見つけたのがレージで良かったわね!」
「でも最初に見つけたのはマルキウさんですよねぇ」
「ようこそ皆様、何かあれば何でも訊いて下さい」
「私も王女なので気軽にお付き合いしましょう」
「私は姫様の侍女をしているイーノです。宜しくお願いしますね」
「ワンちゃんたちも一緒に宜しくお願いします「ワン!」きゃははは、ダメそこは、きゃははは「ワンワン!」」
「皆様の下に置いて頂いている者ですどうぞ宜しく」
巫女たち全員が僅かな狂いも無く礼をする。
「私はラナ、助けてくれて心から感謝します。主様のお役に立てる「待て」様に……?」
「お前たちは家族だからな、奴隷じゃないぞ。そこは忘れない様に、解ったな?」
「はい! それじゃお父さん? お兄ちゃん?」
「ラナ様! 零司様です」
「零司様これから宜しくお願いします」
「ああ、宜しくな。ははっ、それじゃ皆でパーティーの準備をするか」
「ええ、始めましょう」
「パーティーにゃ!」
『まさかあの娘もお嫁さんに?……!!』
大半がそんな事を考えていた。
◻
肉はさっき仕留めたばかりの猪をリリが回収していたので新鮮なそれを浄化して寄生虫や細菌類、排泄物、血抜き作業程度に血液を消し去ると一旦零司の無限倉庫に入れる。
料理では一頭あれば充分なので三頭の中からどれが一番良いのかインフォメーションチップで確認したところ全部メスで、オスの方が柔らかくて美味しいとあった。
更に十日ほど置いた方が美味しくなるとあったのでコピーして十日分進める。
それから刃物など使わずに無限倉庫内で部位毎に分類して不要部位を消去する。
そうして出来上がった元素材から用意できる最高に近い肉を用意してポーチを持つ全員にコピーを提供した。
もちろん肉はインフォメーションチップで確認済みだ。
「この肉なら何の心配も無く生食できるレベルに調整してあるから好きな様に使ってくれ」
「ありがとう零司。後は私たちに任せて」
零司はやる事が無くなり適当な椅子に座るとエルたちを眺める。
五人とも馴れないながらも皆に混じって一緒に作業していた。
家に帰ったら彼女たちの部屋を用意しなくてはと考える。
南棟にはまだ部屋が余っているのでそれを使えば良いとして、家具や装飾類に関しては普通の物で良いだろう。
無限倉庫に保管された数多くのオリジナル家具類を確認する。
あーでも無い、こーでも無いとディスプレイに表示しながら配置して行く。
現地では無いので3D間取りアプリの様に使えるのはとても助かるのだ。
そんな作業を女たちは料理の合間にチラチラと目を向けるが決して邪魔はしない。
それは零司が真剣に自分達の事を考えてくれているのだと知っているからだ。
◻
「まあまあ上手くいったかしら?」
焚き火に掛けられたぼたん鍋を残してあっという間に完成した。
テーブルにはビュッフェ形式で料理が並び、肉は丸々一頭分使われている。
用意された皿とトングを持ち、食べたい物を好きなだけ持って行くのだ。
「次の祭りはビュッフェ形式で良いかもな」
「そうね、でもあの子達のやる気が一番良い感じになるのが良いかしら」
「大丈夫だろ、あいつらなら何だって一生懸命にやるぞ」
「それもそうね、ふふふ」
「さてと、そろそろ全員準備出来たか?」
「はい、後は零司様のお言葉を頂ければ」
「わかった、ありがとう」
サーラは礼をして下がる。
「このパーティーは三つのお祝いを兼ねた物だ。一つ目はラナたちが俺たちの家族になった事。二つ目は神格化したサーラと俺を救った事に対する感謝。三つ目はマリーと狼の親子がマリーの眷族になり神格化した事だ。正直これは俺も驚いた。と言う訳でこの三つを祝うパーティーだ」
「アタシたちとの婚約もあるわよ!」
「わかった、四つだ。食べ物は幾らでもあるから好きなだけ食べてくれ。まあ食った後寝てしまってもきちんとベッドまで届けてやるから今日は安心して楽しんでくれ。それじゃグラスを持って、良いか? カンパーイ!」
「カンパーイ!」×全員 +「ワンワン!」+「キュンキュン!」
「あっはははは! こうなってみると野生の狼も可愛いわね。さあ、ワンちゃんたちにもどうぞ」
狼用に山になった小間切れ肉の大皿をマリーに渡す。
「有り難う御座います楓さん」
「これから宜しくね」
「ワンワン!」
「良い子ね」
「ほら、楓さんからよ。行儀良く食べてね」
「ワン!」
皆嬉しそうに会話しながら食事は進む。
今日はお祝いなので食べ放題だが毎日こんなに食べていたら子豚になってしまうだろう、そんな量が既に用意されている。
しかし帰りは零司がベッドまで送ると約束しているので食い過ぎで倒れても問題ない。
寧ろ倒れたり眠った振りをした方が良い思いが出来るのだ。
だったらやるしかない、日頃は零司に尽くしているが将来貰ってくれると約束してくれたこんな日くらいは甘えても良いだろうと思えた。
それにさっきの言葉はそれを誘導している様に思えた。
普通にとは言わないまでも一緒に料理して会話で楽しめる程度に仲良くなれたエルたちも嬉しそうにいろんな料理を口にしている。
「エル、美味しいね!」
「そうですね、このご恩をきちんとお返し出来る様に頑張りましょう」
「ええ、零司様は私の事も貰ってくれるかな」
「きっと大丈夫ですよ」
少し恥ずかしくなったラナは声が小さくなりエルとの密談の様になっているが、神の耳には普通に届いていた。
楓は失敗したと思いはするがもう後戻りは出来ないのだ。
後は零司の一番として他の女たちを上手くコントロールしなければならない。
お祝いの席なのに盛大な溜め息が漏れそうになる楓だった。
ついにやってしまった楓の公認発言。でも逆に約束されたことで暴挙の可能性が減ったかもしれない?
今回で異世界ハイキング古代ローマ編は終わりになります。




