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86.異世界ハイキング6 エル

少し短いですがキリがいいので早めにアップしました。ヽ(´▽`)/

 広場を離れた零司たちが乗る馬車はそのまま街の外れで人気の無い場所までやって来た。

 そこに来るまでの間に女たちは荷台に居る五人の少女たちを護る様に取り囲んでいた。

 奴隷の少女ラナを抱いているエルはこれからどうなるのかは分からないが、少なくともあのまま死ぬよりは良い未来が待っているだろうと肩の力を抜いている。

 それは同じく荷台に乗っている女たちが異民族であり、それでも不幸な境遇にあるとは思えない優しい目でエルたちを心配して気遣ってくれているからだ。

 そして案内をしてくれた少女サーラが新しい主の名を教えてくれた。


 零司は周囲に走査を掛けて人が視界に居ないのを確認すると、街に来た時と同じくリリに頼む。

 そしてもうひとつ。

 サーラには彼女たちに目を閉じていて貰う様に命じた。

 言われた通りに目を閉じさせて零司に報告すると、馬車が格納されていた建物の前に居た。

「目を開けて良いぞ」

 サーラは彼女たちに目を開ける様に言う。

「一旦休憩だ。中に入ったら降りて先に部屋へ行っててくれ。それとネコ、彼女たちの服を用意しろ。サーラは奥の小部屋で着替えさせてくれ」

 馬車は建物に入り、女たちはバスの終点の様に次々と降りて行く。


「これはどう言う事だ……」

 エルは目を閉じていた間に起きた変化に驚きを隠せない。

「こちらへどうぞ」

 サーラに呼ばれてその疑問をぶつける。

「ここはどこなんだ、さっきまで街の中に居た筈だ」

 その疑問は他の三人の女たちも同じだった。

「心配しなくてもいずれ判りますので今は体を休めて下さい」

 嬉しそうに心底優しい笑顔で答えた目の前の少女。

 これ以上の質問をしても仕方が無いと、恩のある主人の迷惑にならない様に素直に馬車を降りることにした。

 だがその時、衰弱している筈の体は妙に力がみなぎっている事に気が付く。

 見た目では何の変化も無いのに力が涌き出る様に体が軽い。

 振り向いて他の従者を見ればやはり身のこなしが軽そうだ。

 もう一度同じ疑問が湧いて来るがサーラの言葉を思い出してラナを優しく抱えたまま手を借りる事無く一人で馬車を降りた。

 『本当に体が軽い。普通に暮らしていた時よりも調子が良いのはやはりあの薬が原因か? もしかしたらあれは話に聴く神薬ではないだろうか』

 などと考えたりもする。


 サーラに促されるままに納屋と思われる純白の飾り気の無い建物内を進み通路の一番奥まで行くと、継ぎ目が全く無い平らな扉を開き中へと入る。

 そこは倉庫の様な場所で小さな明かり取り窓から光が差し込み人の輪郭が判る程度だったのが、すうっと明るくなり部屋全体が問題なく見える。

 まるで新月の真夜中から突然昼間になったかの様な事態に思考が停止しそうになるがこれも黙って受け入れた。

「それでは皆さんにはこちらの服に着替えて頂きます」

 サーラはネコから預かった五人分の服を壁際にある棚に一人分ずつ分けて置いた。

 その内一人分だけを一枚ずつ手に取って着用の仕方を説明しながら気付かれない様にゆっくりと浄化を掛けておき外で待つと伝えて部屋を出た。


 エルたちは新品に見える服を体が汚れた自分達が着ても良いものかと心配するがこれは主の命令であり、その主から信頼されている少女が指示するのだからと着替えを始めた。

 従者たちも手伝いラナを台の上に寝かせてボロ切れの様な薄い布を外して裸にする。

 痩せ細った体が露になり笑顔で庭を走り回っていた頃のラナを思い出してエルの心は締め付けられた。

 だがそれも今日までだと信じて辛かった今までを振り切りラナに服を着せた。


 暫くして部屋の中から着替えが終わったと伝えてきた。

 サーラは扉を開けて全員がきちんと着替え出来ているのを確認する。

 彼女たちに与えられた服は楓が作ったワンピースだ。

 ネコは零司に服を用意する様に言われた後で楓から服を指定されていた。

 それがこのワンピースなのだがハイウエストで膝下まであるフレアがツートーンの薄い青灰色だ。

 袖は肘上で留めてあり現代日本で見ても普通にお洒落な服である。


 サーラは仕上がった彼女たちを見てもうひとつ追加する。

 五人のインフォメーションチップを表示して足のサイズを確認するとショッピングモールの従業員用に確保してある全種類の靴と靴下の中から最適な物を選んで支給した。

 どんな服でも普通に似合う普通の革靴に見えるがその造りは零司が創造した物なので品質は極めて高い。

 本来はひとつしか無かったがネコに大量コピーさせて男女別に様々なサイズへと修正してあり、更にそのコピーを持っていたのだ。

 将来モールの最高責任者になり全てを管理する立場として、サーラは既にモールの建物と人員以外の全てを用意出来る程の物資を無限倉庫に確保してあった。

 それは零司の命令でありサーラは場所と人員さえ用意すればモールと同じだけの物を用意出来ると言える。

 もちろんそれは従業員の教育も含めてだ。


 そしてエルが靴下を履く時になって初めて気が付く。

 『手足が白い』

 泥などですっかり汚れて洗う事すら出来なかった手足が以前よりも白いのだ。

 しかしここでも騒いだりせず淡々と受け入れ指示された通りに靴下を履けば体にピッタリと貼り付く伸縮力に驚く。

 そして紐など無くすっかり足を包み込む形状の靴に足を滑り込ませて履いてみるとこれもピッタリとして違和感が無い。

 この時代に靴と言えばローマの兵士が履いていた一枚の革で足を包み込む様に紐で括られた簡素な物や革のカットにもう少し手間を掛けて装飾された一般向けなどの比較的簡単な造りの物だった。

 それらは靴底のサイズはあるものの殆どは紐の絞め具合で加減が出来る。

 だが今履いているこの靴は調節する場所など何も無いのに、ただ足を入れただけで脱げたりずれたりもしなかった。

 この靴はローファーと呼ばれる学生の靴として良く知られ、一部ではその縫い合わせの形状からギョーザなどと呼ばれたりもする。


「これで大丈夫ですね」

 サーラはもう一度ひと通り見て回り、問題が無いのを確認した。

「それでは皆さん行きましょうか」

 笑顔で楓たちが休んでいる部屋へと向かう。


 エルは廊下に出るとそこで初めて建物内の奥深い廊下が明るく不自然だと気付いた。

 見回しても明かりなど無く、それでも壁は明るい。

 いや、壁自体が明るかったのだ。

 あまりにも常軌を逸した事が次々と現れて、エルは死後の世界にいるのではないだろうかとさえ思えて来た。


 納屋から来た通路を少し戻りT字路を曲がる。

 その先には外の風景が見える四角い穴があったが何か変だ。

 良く見れば穴だと思ったその空間に何か水の膜の様な物があり、そちらへ向かう自分達が映っていた。

 それは風の無い水面に映っているかの様だが水面は壁には無い事くらいは知っている。

 これもまた不思議なと思うだけにとどめてサーラの後に続く。

 その穴の横に部屋の入り口らしき場所があった。


零司(ご主人)様、着替えが終わりました」

 サーラに続いて入った部屋はただ白かった壁とは違い暖かみのある白木の板で出来た壁と建物の奥の部屋だと言うのに外に居るかの様に明るい部屋だった。

 部屋を良く見れば天井と壁面に四角い穴が空いているのだがそこにはさっきの穴と同じく何かがある様に見える。

 そして隅の二ヶ所に胸くらいの高さの観葉植物の鉢が置かれ、それ以外の飾り気は無いが壁と同じく白木の大きな確りとしたテーブルと同じく確りとした造りの椅子が幾つも並び、それらは木でありながら水面の様な光沢を持っている。

 『ここは一体……』

 王族であればもっと装飾に拘るだろう。

 簡素さから見れば平民かもしれないが平民であったのならまるで神殿の様にきっちりとした造りの筈も無い。

 そしてまたサーラの言葉を思い出してただそれを受け入れる事にする。


 先に来ていた女たちは既に椅子に座り、中身が見える透明なコップで何かを飲みながらそれぞれに話をしている。

 部屋の入り口で立ち止まり呆然としていたエルにサーラが声を掛けて抱えている少女を部屋の隅にあるベッドとは言えない床から一段上がったお座敷へ寝かせる様にと指示された。

 そこは畳が敷かれているので板張りよりはずっとましで椅子に座らせて不意に転がるよりもずっと良かった。

 エルは言われた通りにラナを優しく寝かせてその隣に腰を下ろした。

 思ったよりも優しく感触の良い床に好感を持つエル。

 他の従者は椅子に座り次にどんな指示が来るのかを待っている。


 サーラはその場で彼女たちに対して順番に飲み物の注文を受け付けた。

 しかしエルたちにして見ればどんな飲み物と言われても水か酒くらいしか思い付かない。

 直ぐに気が付いたサーラは白亜の館の露天風呂に備えてある一通りの飲み物をまるで手品のトランプを台の上に広げる様にズラッと並べて見せた。

 それを一つずつ説明すると一人ずつ手に取ったので蓋を取り、コップを渡した。

 最後にエルの前にしゃがんで注文を受けようとするが、椅子に座って既に飲み物を口にして喜んでいる三人の従者と違い、どんなものがあるのかが見えていなかったエルがどうすべきかすら悩んでいる様だったのでコップとももジュースを取り出してコップに注ぎお盆に乗せて差し出した。

 その光景に唖然とするエル。

 テーブル席で離れている場所では良く分からなかったが、目の前で起きた何も無い所から当然の様に現れるそれらを見て言葉を失っている。


 エルはサーラたちが呪術師か何かだろうかと考えるが、サーラの笑顔にただ受け入れたら良いと考えを改めた。

 彼女たちにはエルたちを蔑む感じは見られず普通に接してくる。

 寧ろ国の仲間たちよりも丁寧に接してくるのだ。

 主である零司も不思議な人物であり普通なら捨て置かれる自分達を態々助けてこれ程の施しをしてくれる。

 今身に付けている服もデザインはシンプルだが生地を見れば高価な物だろう事は言われなくても判る。

 本当に夢を見ている様な、もしかしたら死ぬ間際に見ている幻覚なのではないかと疑ってしまうのだ。


 既に離れたサーラから手元にあるコップに注がれた飲み物を見る。

 濁り酒の様に見えるそれはさっきの薬と同じ香りがした。

 コップを手に取り目の前まで持ってくると香りは確かにあの時の薬と同じ物だとハッキリと分かる。

 不思議な透明のコップを口元に寄せると甘く芳醇な香りが鼻腔を抜ける。

 その香りを吸い込んだだけで心が溢れる様に満たされるのはあの時の想いが甦るからだろうか。

 暫くその余韻を楽しみ、もう一度コップを口に寄せて今度は口にした。

 その飲み物は香りに違わぬ濃厚で芳醇な甘味と香りでエルを満たしていった。

エル達はどうなるのかなーと、何も考えていないw


それとタッチ不良のタブレットを分解動画を見て自分で直しました。

お陰でタイプスピードが回復してこんな感じです。今回は早すぎましたが早めに上げられるようにしますので今後ともよろしくお願いします。

それではまた(@^^)/~~~

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