79.王家の闇とロリコン魔王
今回も開いてくれて有り難う御座います。 (*´▽`*)
楽しんでもらえたらうれしいです!
しかし今回のタイトルは酷いですねw
零司が国王とこれからの世界の行く先と個人的な話を終えて、共に皆の中へやって来た。
国王はイーノからの報告で、ここに居る人々は普通の一般人でしかなかったが零司が用意した設備と教育により、恐らくこの世界で最も多忙で大変な部類の仕事をしているにも関わらず、皆健康的で生き生きとしていると話を聞いている。
これは今後零司がファーリナから他の街へも利益の還元、商品の譲渡、教育環境の整備、優れた文化など様々なものを無償提供する事で起きる大きな流れにより人々の意識も変わるだろうとも伝えられている。
ならば、その始まりの中心的なこの場所で活躍する彼らと接するのが今後の国の舵取りには必要だと考えた。
彼らの中には王妃トリーノの実家ミラ家が治めるキースルの街で商売していた者や王都の聖堂に勤めていた元聖職者、隣街のリーデルからも講師として人を呼び寄せ、一般人の教育に採用したとも聞く。
様々な街の人間を集めるその手腕や全く未知の物をあっという間に馴染ませて日常に組み込まれていく様はとても自然な行程を経て普通化されて行くと言う。
それが国中に広まった時、国王が今ままでの時代に取り残されていていては話も通らなくなると言うものだ。
二つの家だけで継がれる王位だけに外からの新しい流れが入り難いと言う難点がある。
今までならそれでも良かったがこの変化の速度は両家だけでは追いきれないだろう。
そこでその変化の根源たる魔王零司の子を我が娘に宿らせる事が出来たなら、この世界をより良く導いてくれるのではないかと考えている。
他の世界でなら権力闘争の最優位に立つ為の道具でしかなくても、この世界ではそれこそ民の為にしなければならない事をする。
政治的な駆け引きなどでは無く、純粋に必要な事なら娘が魔王に対して心を焦がす様に誘導する事も必要だろう。
斯くしてそれは成功したが最後の壁は中々に難しそうだと見ている。
「国王様、初めてお目にかかります。わたくし先代ファーリナ領主ネセラ・カミルよりこの地を継承しました現領主ネセラ・シエルと申します。こちらは妻のナティです。若輩者ではありますがどうかお見知りおき下さいますようお願い申し上げます」
シエルは祭りとは異なり、ゆっくりとした礼のお陰か顔色は悪くない。
「うむ、ご苦労。代々禁足の地を監視し続けたそなたらの一族に心から感謝する。そなたの若さもこれからの時代を背負って行くには寧ろ都合も良かろう。今後もこの地を善く導いて欲しい、頼んだぞ」
「勿体無き御言葉、心より有り難く頂戴し今後も精進する事をスラゴーに誓います」
深く礼をするシエルとナティ。
次に国王の前に出たアーレは軽くお辞儀をする。
後ろに控えた三二五期担当と作法担当、その二人の後ろに居るマリーはお辞儀で顔を伏せたままだ。
「国王様、王妃様、お久し振りに御座います」
凛々しくはあるが笑みを浮かべているアーレ。
「そんなに昔の話では無いと思うがの? なあトリーノよ」
「雪解けの頃ですわね」
国王とは一応の線引きはしてあるものの馴染みの顔であり、歳も近い事から堅い話もそれなりに柔軟な応答が出来る間柄だ。
それは零司が現れる以前から神の意向にどう対処するかを話し合う場を設ける機会が多い立場故に出来上がった関係であり、神待宮でも教育課程で巫女候補から外される程に我が儘だったアーレだからこそなのかもしれないが。
そしてそんなアーレを国王ホウシランは決して邪険にはせず、寧ろ友人として気軽に話せる関係として見ている。
勿論そこには神待宮に対する配慮も含まれてはいるのだが、若過ぎる嫁との話だけでは疲れると言うのもあるのだろう。
「折角こちらが雰囲気に合わせていると言うのに」
「はっはっは、もうお互いスラゴーからお呼びが掛かるのも近い歳だ。そこまで気を使う事も無かろう」
「あなた、まだ逝かれては困ります」
「あっはっはっは。そうじゃな、まだまだ頑張るとするかの」
ホウシランにはルールミルともう一人、まだ十歳前の娘が居る。
ひ孫と言っても通じる様な娘を溺愛しているはいるが、世継ぎとなる息子を何とかしなくてはならないのだ。
これはトリーノの実家でも同じく女ばかりで男子が居ない状況であり、場合によっては永く続いた二つの家での王位の座を守ると言う伝統(ル王朝)も捨てる時が来る可能性も高かった。
もしルールミルが零司の子を身籠れば、それは男女関係無く受け入れるだろうが、そうでない内は既に爺と呼ばれるのが適切な年齢であっても若い嫁と頑張らなければならないのである。
最悪の場合、王が逝去する前に両家の女子全てと試さなければならず、その中で一人でも男子がいれば良いとなるだろう。
当然だがそんな事をすれば古代神話の様に、怪物が生まれる割合も高くなると同時に生命体としての強度が下がり若くして死ぬ者が続出するだろう。
それは長い歴史を誇る王家の闇が今の両家にも残されて、ルールミルや妹のルーミナル以外の子達がそれを証明していた。
「それだけ元気ならまだまだ大丈夫だね。挨拶は終わった、私は下がるよ」
「うむ、また後でな」
アーレは三人を引き連れて戻る。
その後はモールのチーフたちとケインが次々と挨拶を済ませた。
ケインとダリルはそれなりに社交経験があったので何も問題は無かったがそれ以外のレストランのローゼとホテルのバンはソコソコに、銭湯のマリルとセーラ、果樹園のハスラは普通の一般人なのでぎこちないものだったが、そこは国王から気にするなと言われ安堵していたりする。
一般人枠で残ったのは厩舎代理のバローと開始間近の商取引窓口チーフのサーラだ。
兄妹という事もあり並んで王の前に立った。
まだ未成年のサーラが前に居るのは少しばかり妙な感じはするものの、どう見ても縮こまっている兄のバローと何も問題は無いといった姿勢で接するサーラではどうしてもサーラが前になるだろう。
「初めてお目に掛かります国王様。わたくしは白亜の館に置いて頂いているサーラと言います。近々ショッピングモールで始まる予定の商取引窓口のチーフをさせて頂く事になっています」
「ほお、そなたが」
王にもサーラの話は当然届いていた。
しかし最も近い情報源のルールミルとイーノも先日の話でも言われた様に、サーラ本人が望まない限り館の住人と神待宮の客人以外には黙っていて欲しいと要請されていたのでサーラが神格化した事は知らず、ただ魔王零司に選ばれ寵愛を受ける唯一の人間とだけ認識されている。
サーラの歳を考えると『このロリコンめ!』と思ってしまいがちではあるが、零司の歳とサーラの年齢差は六歳なのに対して国王と王妃の年齢差は四十歳以上であり、しかも世継ぎを強く求められていた事もあり実際には王妃が成人するずっと前に交渉している。
王妃の実年齢は公表されている訳では無いので王家の闇と言えるかもしれないが、二つの家の中で最も血縁関係が遠いと言える相手が彼女しか居なかったのだから国王に残された時間を考えると仕方が無いと言う事情もあった。
「そなたの事は稀に見る才女と聞き及んでいる。これからもその才能を生かしてこの国を支えて行く力となって欲しい」
サーラを真っ直ぐ優しい目で見ながらも、まだその芽すら無い我が娘ルールミルよりも零司に添い寝すらしていると言うこの娘の方が零司の子を授かる可能性は高いと考える。
「この身も心も全ては魔王零司様の為のものではありますが「ぉぃ」、国王様の御言葉を有り難く受け取らせて頂きます」
笑顔で答えたサーラに国王は面食らうが僅か十三の娘に動じると言うのも国王としての度量が足りないと言えるだろう。
「うむ、中々正直で心地良い。そのままで良いから存分に力を振るって欲しい」
「有り難う御座います」
もう一度深く礼をするサーラ。
このやり取りに突っ込みを入れていた零司は今までのサーラの言動で一番危ないと感じていた。
確かにサーラは母親譲りの豪快な毒舌を日常的に口にしてはいたが、今回のは完全に『国王の言葉より零司が優先』と公言しているのだ
今はこの国の民の一人の人間という前提なのだから国王に対してもう少し抑えると思っていた零司が甘かったのである。
その後にサーラから紹介される兄のバローは場の雰囲気が変わった事だけは分かるがどうして良いのか全く判らない。
「続いてこちらはわたくしの兄でバローと言います。今回は厩舎のチーフに代わり、代理として来ております」
紹介されて頭を下げるバローは本当に普通の田舎の一般人だった。
これも先の銭湯のマリルやセーラと対した様に淡々と話は終わり、二人して深く頭を下げ後ろに下がると国王の隣で冷や汗をかいている零司が居た。
「戦の女神リリ様、お目に掛かれる事を光栄に存じます。我らの世界を救って頂き、全ての民を代表して心から感謝致します」
今度は国王が膝を着き控えていた。
「畏まらなくていい」
「はっ、それでは」
ゆっくりと立ち上げる国王ホウシランとカーテシーから姿勢を直す王妃トリーノ。
「あれは偶々(たまたま)でほとんど零司のお陰だ。私は確かに戦の神ではあるが実力は零司の方が上であろう」
リリが珍しくまともに話をしている。
「戦の神よりも上、で御座いますか」
「そうだ。だから私は零司を魔王様と呼び敬愛しているのだ。いや、心から愛していると言って良い「ちょっ」な。んふふふ」
突っ込みを入れたかった楓にひとり悦に入るリリ。
「そうで御座いましたか。知らぬ事とは言え、失礼致しました」
「構わない。今の私は戦の神では無く、魔王様に身も心も捧げた一人の愛の奴隷「バシッ」たっ!」
頭を擦りながら零司を見上げるリリは待ってましたと言わんばかりの良い笑顔であり、リリの中ではこれこそ魔王零司の信頼の証と考えている。
突然叩かれた小さなリリに驚きを見せる国王と王妃は零司を凝視する。
「これが魔王様の愛情「バシッ」。いつでもウェルカム「バシッ」。魔王様、もっと来て「バシッバシッ」」
おでこから煙が出そうな程のチョップを喰らい気を失ったリリは、零司の腕に抱かれ晴れやかな笑顔だった。
「いつもこの調子だがリリが言う様な関係は無い。ネコ、リリを隅に連れて行って回復してやれ」
「ハイにゃ!」
零司からリリを受け取るネコ。
『戦の女神を叩き伏せる魔王、恐るべし』
人間側の共通認識が出来上がる。
「アタシはミテールヌ山脈の主、マルキウよ! よーく覚えておきなさい!」
人サイズでスーツを着たマルキウが国王夫妻に対して偉そうに胸を張り言い放つ。
「おお、これは、あなた様があの有名なマルキウ様でしたか。お目に掛かれて光栄の至りで御座います。永きに亘り我らを見守って頂き心よりお礼を申し上げます」
深々とお辞儀をしている国王ホウシラン。
「いーのよ、その方が楽しいわ」
「それはそれは、その様に想って頂けたとは本当にマルキウ様はミテールヌ山脈の様にお心が広い」
「まっ、当然よね! どこかの誰かさんとは違ってね!」
楓を見つめて言って退けるマルキウは「ケチ!」と言いたそうだ。
「マルキウさん、後で大事なお話があります」
楓は笑顔だが怒っているのが良く分かる。
「ア……アタシはこれで失礼するわ」
国王の前なら言い返せないだろうと踏んだがどうやらそれは大きな地雷だった様で、一気に旗色が悪くなり飛んで逃げた。
リリの回復を終えたネコが零司の下へと戻る。
「出来たにゃ」
「よし、良くやった」
誉められたネコは零司に抱き着き頭を撫でられている。
それを眺める女たちの想うところは気持ちの大小はあれど皆同じだった。
『羨ましい』
最も身近で零司のフィアンセでもある楓ですらそう思う。
その愛され方は歳の離れた小さな妹を可愛がる様な純粋なものではあるが、それ故にそんな無条件に受け入れられる関係を羨ましく感じてしまうのだ。
ただ、実際にはそれだけではない。
巫女の先触れが到着した時にサーラが無意識で使った大規模神術による影響もある。
つまりこの世界の女性全てが無意識下で零司に対する親愛な感情を有していると捉えても過言では無い。
そこに目の前で無邪気な笑顔で零司に抱き付いているネコを見ればそれが刺激されるのは当然と言える。
無意識だった者もそれで自覚したが強度が低いのでパーティーが終われば以前に戻れるだろう。
「こいつはネコ。楓にそっくりでも耳が違うから直ぐ分かる。ネコ、挨拶しなさい」
「ネコにゃ」
ただそれだけだった。
「それだけか?」
んー、と考えるネコ、そして閃く。
「ネコは大好きな零司様の為なら何でもするにゃ!」
言った後、ネコは嬉しくて零司にもう一度抱き付いて甘える。
しかし今の言葉を聞いた周囲が連想するのは、体を密着させて零司が喜ぶ事を何でもするネコである。
もう零司はロリコン認定して良いのではないだろうかとさえ思えるが、一方で国王ホウシランは王妃トリーノに懐いていたネコと同じく小柄な体と未成年の時に結んだ記憶からずっと躊躇いがあったのだが、零司を取り巻く環境を思えば自分など大した事は無いと思った途端にまだ若い王妃をまた今夜にでも誘ってみようと思う。
ネコを撫でながらそんな二人をモニタリングしていた零司は両家に長年積み重ねられた近親婚による遺伝子の異常修復とある術を掛けておいた。
その後は完全に食事会となり、次々と出てくる新しい料理の数々に舌鼓を打ちながら美味しいお酒と共に満たされたのはお腹だけではなかっただろう。
ぶっちゃけてしまえば、王家に連なる両家に遺伝子修正して正常化。そして次は男子が出来るようにと小細工したのでした。
ルールミルにしてあげられなかった時の為の保険でしょうか。
今回の話を用意しながら過去の話をちょこっと修正してたりします。
多くは誤字脱字等ですが、分かりにくい言い回しの修正等も含まれます。
ストーリー上では変化はありませんので読み進めている読者の皆さんは特に気にしなくても良いと思います。
さて、次回辺りから異世界ハイキングに入れると思いますが、いつも通りこの時点では全く書かれていないのでどうなるか分かりません。




