71.それは運命の出会い?
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可愛いと叫び、突然リリをぎゅっと抱き締めるマリー。
リリは特に気にした風も無くされるがままだ。
それを見た神待宮の三人は驚き慌てる。
金色短髪が止めるように言おうとする前にマリーはリリを抱き上げて走り出し、純白の道を外れて芝生に乗るとリリを降ろした。
何をしているのだろうとリリがマリーを見上げると、マリーは笑顔でリリの腰を両脇で確りと掴まえて一気に真上に持ち上げ、リリの顔を見上げたままくるくると回り出す。
「かっわいー! あはははは」
何がそんなに嬉しいのかいい笑顔でリリを見上げてくるくると回って顔を赤らめているのだ。
その逆に神待宮の三人は顔が青褪めていく。
サーラはリリ次第で良いと考えているのでその様子を微笑ましい光景として眺めていた。
「ふふ、ふははは」
リリはマリーの笑顔と笑い声につられ何だか楽しくなってきた。
両手を広げて嬉しそうに笑うリリを見てもっと嬉しくなったマリーは回りながら少し腰を下げて一気にジャンプするとリリを空中に手放した。
神待宮の三人は声に成らない悲鳴をあげ反射的に両腕をリリの方へ伸ばすが足が動いてないので意識だけ救いの手を差し延べ、浮いているリリはぐるぐる回る世界で唯一動かないマリーの顔を見ながら心底楽しそうに笑っている。
落ちて来たリリをキャッチしてまたぐるぐると回っていた。
そこに零司たちも学校から帰って来る。
「随分と楽しそうだな」
はしゃいでいる二人に声を掛ける零司は楓とネコに挟まれながらリリたちの方へ歩くと、リリの周りに居た全員が零司たちの方に向いた。
そこには零司、楓、ネコとラチェット、マルキウがいる。
回転を落として止まったマリーはふらつく事も無く確りと立ち、零司たちを見たが、リリはゆっくりと降ろされてマリーと相向かいに立っている。
「魔王様、おかえり」
「ああ」
「ただいまサーラさん。そちらが神待宮の皆さんかしら?」
「はい、そうです。皆さんお帰りなさいませ」
サーラが答えると神待宮の三人はリリを降ろしたマリーにほっとして姿勢を正して零司たちに向き直ったその顔付きは真剣だ。
お付きたちは零司たちと神待宮の客の間に居たので下がって控えている。
そこへ玄関前から聞こえる声で来客に気付いたジーナたち六人も館から足早に駆けつけお辞儀する。
「零司様お帰りなさいませ」
「ああ」
「神待宮の皆さん初めまして、ようこそお越し下さいました。私は楓と言います」
チラリと隣を見上げて話を続ける。
「こちらは零司、その向こうがネコで零司の頭に乗ってるのがマルキウさんです。どうぞよろしくお願いしますね」
アーレたちは突然始まった予期しない紹介を受けたが、慌てず片膝を着きこれに応じる。
「突然の拝謁の申し入れを快く受け入れて戴いただけでなく宿泊の世話までして戴き、心より感謝致しております。私は神待宮の責任者でアーレと申します。どうぞお見知り置き下さい。向かって右に居りますのがジーナたちの第三二五期担当者です。左に居りますのは作法と舞の教育担当者になります。今回の拝謁にはこの三人で参るつもりで「待った」」
アーレたちはうつ向いているので直接目を向ける事は出来なかったが神からの指示であり話は予期された形で止められた。
「ジーナたちから聞いてなかったのか? 俺たちの事は人として扱って欲しいんだが」
話終わると辟易といった風に盛大な溜め息を吐き、初見の年配相手にも相変わらずの物言いである。
「人としての関わりであったとしても大恩がある事に変わりはありません。その恩人に礼を尽くすのは人として当然の事と心得ております」
その姿勢はファーリナ領主のシエルと同じく、引くつもりは無い様だ。
そんな中でもマリーはリリと手を繋いだままこちらの様子を他人事の様に傍観している。
「零司」
楓は零司を諭す。
「ああ、まあいつもの事か。それならせめて立ってくれないか。同じ目線で話がしたい。普通の街の人間と同じ気軽さで構わないぞ」
「御意」
「よし、こんな所で話してるのも何だ、家に入るぞ」
零司たちがアーレの前を通り過ぎ白亜の館へと向かうと神待宮の者たちも立ち上がり後に続く。
その様子を眺めていたマリーは置いていかれるが、手を繋いでいる笑顔のリリに手を引かれ、仲の良い姉妹の様にリリと二人並び皆の後を着いて行く。
◻リビング
零司たちがリビングに入るとそこにはルールミルとイーノが並んで立ち、テーブルにはお茶の準備が出来ていた。
事前に客が来ると知らされていたので、二人はお茶の用意をして待っていたのだ。
零司たちはいつも通りに自分の席に座り、マルキウはネコの頭に乗り換えて胡座をかいている。
クーリスはアーレたちをいつも自分達が座る場所へ誘導するとその反対側に回ってジーナと共にラチェットの横に座った。
サーラは零司の、ルールミルとイーノは楓の、八人のお付きたちは左右に別れて椅子の後ろに控えている。
その中でソファに座るご機嫌のマリーはリリを抱き抱えてご満悦であり、リリも満更ではないらしくマリーに頬擦りされたりとされるがままにきゃっきゃとちちくり合っている。
リリから見てマリーの最初の印象は、やはりその見た目の特異性と言うよりも親近感だろう。
リリの戦闘装備の見た目に近いそれは、マリーに対して関心を持つのに充分な要素である。
そしてお花畑系の性格ではあっても狩人としての腕前は確かなものであり、動物を食料として捕らえる事に躊躇は無いが故に技術の習得と行使に対しても同じく真剣である。
もしもマリーの欲求とその状況にズレが生じるとしたら、それは狩り場を守る為に捕り過ぎを抑制する場合だろう。
狩り場から獲物が居なくなるのは狩人にとって死活問題なのだから。
子孫も狩りを続けて行ける様に獲物の育成環境を含めて狩り場を守らなければならないのだ。
しかもマリーが狩り場としているのは王都に隣接する山である。
ミテールヌ山脈の様に広大な土地では無いので捕り過ぎによる生態系の破壊はあっという間に起きるのだ。
獲物を捕りながらも、その獲物たちが成長出来るだけの配慮を欠かさない。
獲物が無い時は山菜や川魚をとっている。
狩人と言う職業は自分の土地をあまり必要とはしないものの、狩りで獲物を探す範囲が非常に広いので場合によっては数日間帰らない事も多い。
それは予定外の大物を仕留めてしまった時も同じである。
あまりに大きい、例えば零司が最初に見つけた大型のヘラ鹿並のクリーテルの様に、マリーが一人で持ち帰るには無理のある獲物は解体して数度に亘り運ぶ必要が生じる。
この時残した肉が食い荒らされたり腐ったりしない様に現地で燻して虫や動物が食べ物とは思えない臭いを付ける。
最初に持ち帰る分は日も掛からないのでそう悪くない香りで軽く燻して顧客へと卸したりするが、後で取りに来る分は保管方法にも気を使う事になる。
一番多い方法は風通しの良い乾燥した日陰に草などで雨避けと偽装を兼ねて吊るすのだが、その時に一時的な代用品としてベルトが役に立つ。
厚く丈夫なベルトは百キロ以上ある肉塊も余裕で吊るして置ける代物で、丈夫な蔓を水に浸けて腐らせてから綺麗な水で良く洗い、残った繊維だけを集めて織り込んだ物で、柔軟性と強靭性、寿命などの性能を向上する為にある種の草や油で煮込んだりして中々手間が掛かった代物であり、更に使い勝手を良くする為に要所に金属の環を仕込んである。
これがパッと見でリリの実用的では無い筈の戦闘用装備と似ているマリーの衣装がリリの遊び心に火を着けていた。
「改めて、ようこそリリの館へ。皆さんの来訪を歓迎する。今夜はゆっくり楽しんで行って欲しい。楓」
事前に何の説明も無くいきなり進行を振られる楓だが当たり前の様にそれを受け止めた。
着席した面々にルールミルとイーノがお茶を配り、最後に自分達の席へと座る。
アーレはソファを置いて座るには大き過ぎるローテーブルと空間に戸惑いを感じているが、今はそれどころではない。
椅子に座る顔触れを確認すると、巫女とお付き長の報告書にあった王室の第一継承権を持つ第一王女とその侍女、そしてミテールヌ山脈の主である精霊マルキウまで居るのを確認して零司の人脈が次世代のこの世界に大きな影響を与えるどころか、零司が望む世界に創り変えられるのだと普通に予見出来た。
何故ならアーレは神待宮の住人ではあっても、その役職から外に出る事も、王と会談する事も多い人物である。
とても緩やかな変化しか起きない世間の時勢も外に置いた情報網からそれなりに話も通じては来る。
だがその立ち位置もアーレが子供の頃に巫女には向いていないと巫女候補から外された頃から当時の最高責任者によって計算されたものであり、今のアーレなら自分がどうしてこの役職に就いているのかも解っていた。
そのアーレが今のルールミルを見る時、ここに居て零司に支えている時点で王家からの忠誠と王家が差し出せる最高の贈り物が献上されている様なものであると考える。
王にしてみればルールミルが零司の子を宿して王の後をついで欲しいと願うのは当然とも言えるし、もし子を持つ事が無くても神との繋がりを持てるのならばそれに問題は無いのだろう。
『さすが王、あざといが正道、正道だがあざとい』
それとは別に初めて目にしたマルキウだ。
確かに小さな存在ではあるがミテールヌ山脈周辺に於いて、人々からの信頼と信仰にも似たその有り様には神と同じ扱いが必要なのだろう。
そして信じられない事にさっきからずっと小間使いのマリーに良い様にされて喜んでいるあの小さな少女が焔の魔神を倒した戦の女神リリだという事だ。
成年にはまだ大分早いくらいの見た目ではあるが、神なのでそれは当てにはならない。
だが、あの弄ばれ方は見た目相応よりも低く見えるが館の住人は特に違和感などを持っている様には見えず、これが戦の女神リリに対する通常の認識なのだろうと受け入れる事にした。
それは神待宮の他の二人にとってもあまり変わりの無い印象として受け止められていた。
このあと女性だらけの会話で進み、零司と言う男性が居なければまた違った内容になっていたのかもしれないが現状それは判らない。
内容は主にファーリナでのモールと学校経営の話であり、当たり障りの無いものではあったが、相手との距離を縮める世間話の様に気軽な言葉遣いで話は進んでいる様に見えた。
楓にしてみればずっと年上の、しかも高い地位にある同姓との対等な会話は疲れるものではあるが、何とかこれを乗りきってまた平和で穏便な生活を送りたいと思っている。
途中何度か茶を注ぐ為にルールミルとイーノが席を立ったが、そんな中で頃合いを見て楓はサーラを呼び夕食の準備を頼むと、サーラが席を立ちそれにルールミルとイーノが続いて食堂へと続く扉を抜け食事の準備を始める。
部屋を浄化して、サーラの無限倉庫に収納されていた楓の料理をテーブルの上に次々とコピーを産み出して行く。
適当に置かれるそれをルールミルとイーノが綺麗に並べて全体を整えて行くのだ。
最後に暖かいスープが入った大きな真空保温鍋をキャスターごと取り出した。
これに合わせて巫女のお付きたちも席を外し、今日はジーナたちの部屋がある北側のキッチンを使って自炊する事になっている。
久し振りの自炊は零司が提供した普通では入手出来ない数々の食材が用意されて彼女たちにちょっとした冒険心を与えている。
そんな今まで無かった挑戦と言う楽しみにたっぷりと時間を費やしながら、今夜の彼女たちはより仲が良くなって行くのだ。
数分で準備が出来たサーラは扉を静かに開けてリビングへ戻った。
それに目を遣る楓に神待宮の三人も気付いた。
「お食事の準備が出来ました」
深くお辞儀をするサーラ。
「ありがとうサーラさん。それでは冷めない内に頂いてしまいましょうか」
笑顔でアーレたちを誘う楓は零司の左腕に掴まり、並んで食堂へと向かった。
何か良い感じのリリとマリー。
そして何気に主張する楓。
今回の楓とアーレたちの会話が丸っと削られて自分でも驚いたw




