61.リリとサーラにご褒美を
今回もショートになります。
オーロラは三時間ほど続き、その間はポツポツと零司と楓の昔の話や元の世界の文化風習などを話しているが、マルキウは零司のシャツに潜り込み布団代わりにして眠っていた。
「オーロラもお終わったし帰って寝るか」
「うん」
零司は楓とネコの手を放し、シャツのボタンを外してマルキウをそっと押さえるとベッドから起き上がる。
そのまま前屈みになって手のひらの上でうつ伏せになっているマルキウを静かに楓へと預ける。
全員立って一ヶ所に集まると、零司は全員一緒に白亜の館のいつものリビングへと転移した。
「今日は心配掛けて済まなかった」
「うん、零司ありがとう。おやすみなさい」
「零司様お休みなのにゃ」
「魔王様と寝た「ダメよ」い……」
楓にダメ出しされたリリは零司に向けていた目を楓に変える。
「まだ楓やネコの半分もしてない。朝まで魔王様と楽しんでも良い筈」
「ちょっ!」
「どう言う事だ?」
「えっ! 何でも無いわよ?」
冷や汗が流れそうな楓に訊いても答えないだろう。
「サーラ、ちょっと来てくれ」
「あっ! 待っ……て」
楓が声を発した時には零司とサーラの姿は無かった。
◻学校の屋上
「零司様……あの、その件でしたら楓様、ネコ様、リリ様が順番で看病されて居ただけですので心配する事は何もありません」
その時は人だったサーラにとっては、それが男女の交じり合いにしか思えなくても、リリが言う回復法なのでそれはそれで問題は無いとサーラは思っている。
「目覚めた時に俺とリリが裸だったのは何故だ?」
「そ、それは……」
そう思っては居るが、現在零司と言う神の眷族になったサーラは言い淀む。
零司の眷族になったあの時、リリの回復法で自分も零司を回復しようとした可能性を考えると『自分だけ良い子』に見えてしまうのは心苦しかった。
敬愛する零司に対して嘘を吐く事を良しとせずに、誤解が無い様に全てを話す事にする。
◻
「そうか、言い辛い事を良く話してくれた、ありがとう。それとサーラには後でお祝いしないとな」
優しい笑顔で誉める零司にサーラは嬉しくなり、ネコの様に抱き着いて喜びを伝えたいと思うのだが、自分がそれをして良いとは思えない。
いつも優しくしてくれる零司だが、自分から捧げた立場で図々しいと思われてしまわないか不安だから、そう思われてしまうのが怖くて素直に抱き着けない。
それに、零司の腕に抱かれるのは楓とネコの特権の様なものだと考えている。
婚約していると言う楓を差し置き、その腕に抱かれるのは不貞だろう。
「今回の事は聞かなかった事にする。適当に誤魔化しておいてくれ」
零司はサーラの目の前に膝を着き、両腕で抱き寄せる。
サーラがして欲しいと願っているのが分かるのは、サーラの言う零司の眷族化によるものだろうかと思うが深くは考えない事にした。
「これは感謝の気持ちだ。これくらいなら良いだろう?」
驚くサーラは最初は体を強張らせて居たが、零司に抱かれるままにその小さな薄い体を仰け反らせて受け入れる。
その温かなひと時の幸せがどうかずっと続きます様にとスラゴーの天幕を見上げて願うのだった。
◻白亜の館 リビング
「零司聞いて! 誤解なのよ」
「ずっと看てくれていたと聞いたが誤解なのか?」
「えっ!? うん、そうね」
何か肩透かしを食らってしまう楓。
「俺はもう大丈夫だからリリも俺の所に来る必要は無いぞ」
「ぐぅ…!…魔王様は私を抱くと約束した。マルキウが証人」
リリは零司が気を失う直前のやり取りを思い出す。
「あれか、あれはその時点で抱き上げていたから良い筈だが」
「魔王様のイジワル。あれも途中で終わったから無効、続きを要求する。楓も許可を出すべき」
リリが楓を見るので零司も釣られて楓を見た。
「な、何で私に振るのよ!」
「楓は零司のフィアンセ。楓が許可すれば零司も安心」
婚約者の意味が解っていないとしか思えない暴言である。
ただ、神の世界では重婚は普通にあるのだが、今ここに居るメンバーでそれを知る者は居ない。
知っているのは異世界テンプレのハーレム知識だけだった。
「ぬぬぬ……仕方無いわね、今晩だけよ。零司を看てたのは確かだし。但し、あ、アレはダメだからね! 零司、解ってるわよね」
「ふー、分かった。楓がそれで良いなら今晩だけな」
「……ホントに?」
リリはまさか通ると思ってなかった要求が通ってしまい、気が抜けて逆に訊ねてしまった。
「嫌なら来なくても構わないぞ」
「行く!」
零司に抱き着いたリリの鼻息は荒い。
「直ぐ行こう」
「それじゃ行くか、夜明けまで時間も無いしな」
「零司様リリ様、お休みなさい」
さっき挨拶が出来ていなかったサーラが二人に挨拶する。
だがリリはサーラの手を引いた。
「サーラも来るのだ」
「「えっ!」」
楓とサーラが驚いたが楓にしてみればサーラが一緒に居てくれた方が安心出来るのでそれには何も言わなかった。
「私ですか!?」
「そうだ」
サーラはリリを見ていた目線を上げて零司を見上げる。
零司はいつも通り優しい目で首肯した。
楓に振り返ったサーラは零司と同じく優しい目で首肯している。
もう一度零司を見ると手を差し出していた。
「行くぞ」
「はいっ!」
元気良く笑顔を見せて零司の手を掴んだ。
◻零司の部屋 就寝中
初めてのオーロラ観察の時の様に、零司を真ん中にして左右にリリとサーラが寝てそれぞれに手を繋いで眠っている。
サーラは眠りながら寝返りをうち、解けた手で零司に抱き寄せられて二人仲良く顔を寄せ合い寝息を立てている。
一方リリは目を覚まし、繋いだ手を離してサーラを少しだけ横に避けて零司を脱がし自らもパジャマを仕舞う。
そっと零司の横に添い寝し直して、じっと零司の横顔を眺めた。
徐に零司に跨がりニヤリと笑う。
『今度こそ魔王様と結(バシッ!)』
気を失って転がりベッド脇に落ちるリリ。
サーラは温もりを求めて再び零司に寄り添い、さっきまでと同じ様に零司に抱き寄せられて安心して朝まで眠り続けた。
先に目を覚ましたサーラは上半身裸の零司に抱かれている事と、リリが居ない事からリリがお膳立てしてくれたのかもしれないと感謝して、もう少しだけと零司の胸に抱かれるのだった。
◻リビング
「おはようございます。昨日はありがとうございました」
リビングで楓を見つけたサーラはお礼をした。
「おはよう、ゆっくり休めた?」
「おはようにゃ」
「おはよー」
楓は笑顔のサーラを見て零司の所にやって良かったと思う。
「はい、皆様のお陰で」
「リリさんはまだ寝てるの?」
「なーに? 昨日はリリと寝たの?」
マルキウは寝ていたので事の成り行きを知らない。
「はい、でもリリ様は私が起きた時には部屋に居ませんでした」
「そう、なら良いわ」
そこにルールミルたちがやって来る。
「「おはようございます」」
「おはよう」
「おはようにゃ」
「おはよー」
「おはようございます」
全員の顔色が良いのに気付いた二人は零司が復活したのだろうと話を振った。
「零司様はもう大丈夫なのですか?」
「ええ、皆のお陰よ、ありがとう」
「そんな、私たちは何も」
「ううん、そんな事無いわ。それと近々ハイキングに出掛けようって零司が言ってたからそのつもりでね」
「ハイキングですか?」
イーノが訊ねる。
「ええ、面白い場所になる筈よ」
二人にはサプライズにする事にしたらしい。
それから少しお茶を飲んで今まで通りの世間話をすると朝食の準備に向かった。
◻
「いただきます」x 八
朝食が始まった頃、ベッド脇に裸で転がるリリが目を覚ました。
リリの扱いが酷いw




