60.揺れる希望の光
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今回はいつもの半分ですが早めに出しました。
「もう、零司のせいでずっと泣きっ放しだわ」
楓はそんな事を言いながら、また目尻に手を遣って涙を拭う。
今はサーラも落ち着いていつもの席に戻り、零司からこれからも一緒に居られると確約して貰って幸せ一杯の笑顔で零司を見ている。
リリはマルキウに額をペシペシされて目も覚めた様だ。
「よし、皆落ち着いたみたいだし本題に入ろうか」
五人は零司に注目している。
「まず最初に、今回皆には迷惑を掛けて本当に済まなかったと思っている事を伝えたい」
いつもの席で頭を下げる零司を皆は黙って受け入れている。
そして頭を上げると、一度深呼吸してから説明を始めた。
「今回俺が倒れた原因は力の使い過ぎだと言ったが、その理由は大きく分けて二つある。まず第一に異世界に繋がる転移門だ」
「レージ、その話は長いの?」
「長くなるな」
「短くしない?」
「善処しよう」
マルキウは長い話が苦手では無く嫌いだ。
物語なら別だが一般会話で長い話は記憶力が良いだけに負担が掛かるのかもしれない。
「異世界転移門は俺たちが元の世界に帰る為に必要な物で、取り合えずこの世界同士で接続出来るかを確認する実験で生まれ、モールにも使われている」
ここで一旦区切り、リリの頭に載っているマルキウを見る。
「良いわよ」
「通常神は自分自身で転移するんだが、その場合はリリの転移に関する話から時間が数百年単位とか大きく前後する可能性があるのが分かった」
目線をマルキウに向ける。
「それで?」
「俺たちは元の世界の元の時間に帰らなければいけない。数百年も時間がずれる直接転移じゃ駄目なんだ」
チラリ。
「うん」
「だから一度渡ったら元の時間に戻れる可能性が低い直接転移じゃなく、空間を繋ぐ門を創った」
チラッ。
「ん」
単に首肯だけ。
「これなら一度繋げばモールへの行き来みたいに普通に歩いて行くだけで確実に同じ時間で移動が出来る」
チラッ。
「ん」
「ただ、この世界同士を繋ぐのと違い、異世界を繋ぐと俺の力で大体半分くらい持っていかれる」
チラッ。
「……」
「モール建設以来、今まで毎日の様に異世界転移門を創り続けてその全てで失敗していたが、今回やっと元の世界に接続出来た」
「ふーん、それじゃ何で今回だけ倒れたのよ」
マルキウを見る前に返される。
「問題はそこだ。接続した元の世界は約千四百年前だと判った」
「千四百年だなんて、そんな……」
「楓、話を最後まで聞いてくれ。帰る目処がついたって言っただろ?」
一瞬だけ希望が崩れ落ちそうになった楓は零司の言葉に落ち着きを取り戻す。
「そして俺が倒れた第二の原因、理由だな。その異世界転移門の先にある世界の時間のずれを、門に力を加える事で調節出来る様にしたら力を使い過ぎた」
「!はぁ!?」
大きな声を上げて驚く楓は慌てて自分の口に手を当てる。
サーラたちは楓の声に驚いている。
「話はまだ終わってないぞ。今はまだ力が足りなくて調整中だが本当はきちんと元の時間に繋げてから報告しようと思ったんだがな」
ニッと楓に笑顔を見せる零司。
「零司のバカ。私に何も相談しないで心配掛けて……でも約束を守ってくれてありがとう」
立ち上がった楓はソファに座る零司の首に手を廻して抱き着き、最後に『本当にありがとう、大好きよ』と、皆の前で口にするのがちょっと恥ずかしいと心の中で呟く。
「ふーん、そう言う事なのね。それでいつ頃帰れそうなの?」
「私も魔王様の世界に行ってみたい」
「出来たら私も見てみたいです」
「ネコはご主人様と楓様と一緒にゃー」
零司に抱きついている楓に横から二人まとめて抱き着くネコはいつもと変わらない笑顔で幸せそうだ。
「きちんと繋いだら……繋ぐ前に過去の世界を楽しむってのもアリだな」
「ちょっと零司、そんな事して歴史が変わったりしたら大変でしょ?」
ネコに抱き着かれている楓は零司を見上げ、心配してそうで実は呆れている。
「姿を消せば大丈夫じゃないか? それに姿を見せるにしてもその当時の服装をしていればバレないだろ」
どう見ても日本人顔の零司が言っても説得力は無い。
「それに。こっちでいくら時間を使っても、向こうの事故で俺たちが消えた時とそう変わらない時間に帰れるしな」
「……そうね、それなら有りかしら?」
楓も誘惑には勝てなかったらしい。
「と言う訳で! 近々館のメンバーで異世界ハイキングをするぞ!」
「「「「やったー!」」」にゃ!」
◻北極点オーロラ観測所
その晩は皆に気疲れさせた詫びにと、北極点オーロラ観測所へ案内してラウンジにある衝立の向こう側のベッドへと誘う。
それを見た楓は開放感満点の大きなベッドで零司に抱かれる自分達を想像して待ったを掛けた。
「ま、まさか、このベッドに皆で寝るのかしら??」
「ああ。駄目か?」
「魔王様とベッドでひとつ、サーラも同意」
目を閉じ両腕を組んで何度も頷くリリ。
「はい! またご一緒したいです」
「ちょっ!? またって零司どう言う事なのよ! サーラさんはまだ十三なのよ!?」
いつの間にと楓は焦る。
「心配するな。ベッドに寝転がって一緒に夜空を見上げただけだ。それに丁度もう直ぐだしな」
「皆早くベッドへ寝るのだ。良い物が見える」
リリに促されるままにキングサイズよりも大きくしたベッドに寝転がる女たち。
零司の頭を中心にぐるりと周りを女たちが取り巻く。
楓とネコが零司を挟んで手を繋いでリリとサーラも二人と手を繋いでいる。
マルキウは零司のお腹をベッド代わりに寝転がっていた。
「来るぞ」
ワンテンポ遅れてスラゴーの天幕から地上に向けて緑の光の幕が降り、ひらひらと風に靡くカーテンの様だ。
「レージ! これなに!? 何なの!」
零司の腹に寝転がっていたマルキウは慌てて零司のシャツに逃げ込んだ。
シャツの襟首から頭だけ出して揺れ動くオーロラを見ている。
「んふふ、これはオーロラと言って風や雨と同じ自然現象だから安全よ」
「なーんだ、生きてるんじゃないのね」
シャツから出て零司の顔の横に立ち、頬に両手を着いて空を見上げる。
「キレイなのにゃ」
「うむ、美しい」
サーラは静かにそのダイナミックな光景に見入っている。
五人で手を繋ぎ輪になっているベッドから皆で見上げるスラゴーの天幕は、未だ見ぬ異世界への揺れる希望の様に彼女たちの心を魅了していた。
ついに異世界から元の世界へ。しかもハイキングでw




