53.新しきもの10 巫女たち
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今回は少しだけ短いです。
「お帰りなさい零司」
「お帰りなさいなのにゃ!」
「おかえり」
「レージどこ行ってたのよ」
「お帰りなさいませ零司様」
拷問部屋、もとい、魔王の謁見室から戻った零司は皆から声を掛けられた。
「まだ聞いてる途中だけど話は巫女さんから聞いたわ。それで、あの男はどうなったの?」
「ああ、もう顔を出す事は無いから忘れて良いぞ」
「えっ、どう言う事?」
「そのまんまの意味だ。気にするな」
「やっぱり死んで「生きてるぞ」……良かった」
安堵する楓を見てあれで良かったのだと零司も安心する。
「さてと、主賓も居なくなったし館に帰るか」
「ちょっと待って零司、まだ巫女さんたちが居るじゃない失礼よ」
「それなら大丈夫」
そう言って契約書を取り出して楓に渡した。
楓が契約書を持つと、リリとマルキウ、ラチェットが囲んで一緒になって声を出しながら読んでいる。
「何よこれ! そっちはこれで良いの!? それにこんな事を勝手に決めちゃって大丈夫?」
「救済の女神楓様、我らには過分なご配慮、心より感謝致します。しかしながらこの契約は何ら問題無いと報告させて戴きます。我らの目的は神々より異世界の情報を頂く事に御座います。この様に正式な形でお約束をして戴いている以上、我らを魔王零司様のお好きな様にお使い戴くのは当然の権利と心得ます。我ら一同の心身の全ては魔王零司様に捧げられました。この件に於いてはどうぞご安心下さいます様、報告申し上げます」
「どう言う事なの……」
「友達一杯にゃ」
「あわわ、天界に報告しないと」
「長ったらしいのよ!」
「魔王様は巫女よりも私を抱くべき」
それぞれに受け止められた様で何よりと零司は概ね満足してロータリー内に張った障壁を解除した。
◻白亜の館
スラゴーの部屋で待っていたサーラと先触れのお付きたちはクーリスの指示で速やかに白亜の館、裏の正面玄関内に集められた。
そこには巫女や他のお付きたちも揃い、現在この館の住人となる全員が対面で顔を会わせていた。
巫女側の十名に対して零司、楓、ネコ、リリ、ラチェット、マルキウ、サーラ、ルールミル、イーノの九人で、住人は一気に倍以上になった。
「ようこそ我が家へ、ここは『リリの館』って呼ばれてるわ。元々は零司の家だったけどリリさんの為に改装した今ではそう呼ばれてるのよね。他に白亜の館とか呼んでるけどリリの館で良いわよ。それじゃ荷物はとりあえずここに置いて敷地内を案内するわね。零司は部屋の準備をお願い」
零司はネコを呼んで荷物を持たせ、階段を上がると北側の部屋に向かう。
こちらは日当たりが良いとは言えないが、美しいミテールヌ山脈を見渡せる。
そこで零司は館を護る障壁に加え、太陽光を反射する平らな障壁も用意した事で、光が部屋に差し込む様に改善した。
明るい部屋で作業を開始する零司は彼女たちに必要な物は何だろうかと考える。
零司の感覚で言うと人が寄り付かない山中の神社で滝に打たれたり、凍える冬に冷たい川の水を被ったりして身を清める禊、悪霊退散とか言いながら払い具志を『うりゃうりゃ』と振り回したり、窓口でクジ引きやお守りとお土産販売などが思い浮かぶが、こちらの世界でそう言った話を聞いた事が無い。
それに以前の神待宮に居座る神の世話をするのと違い、こちらで生活する事になるのでそのスタイルも違って来る筈だ。
これまではリジカーネスの相手をするだけだった彼女たちは、楓に仕える形になるのでその在り方も大分変わるだのろう。
まあ今から全てを決めてしまうよりも様子を見ながら適所を見つけて行こう。
さて振り出しに戻って部屋をどうするかだ。
彼女たちのインフォメーションチップを見る限り、二人一組で相性が良いのが判ったので部屋を五つ用意するのは確定であり、巫女にはそれなりの部屋を用意する必要があるだろう。
基本はルールミルの部屋と同じで良いとして、彼女たちが神待宮から私物など持って来る物があるならそれを置くスペースも必要だろう。
巫女とお付き長の部屋を北東の角にしてそこから四つの二人部屋、北西の角を彼女たちの為の多目的ルームとし、楓たちが居る南側でも採用。
今のところ多目的ルームの使用目的は思い付かないが装飾を抑えた板張りで小さめの椅子があるだけの広く開放的な部屋にした。
元々あった一階南面のリビング、キッチンと食堂も拡張して余裕を持たせ、これを北面にもミラーコピーした。
最後にローマンジャングル銭湯風露天風呂を拡張して完了だ。
「ふむ、こんなところか?」
「こんなところにゃ!」
ネコは広くなった風呂を見て、他に人が居ないのを良い事に突然裸になって嬉しそうに走り回る。
「にゃはは!」
「ネコ!」
「零司様も来てにゃーっ!」
ネコは立ち止まって振り替えると、体全体を使って大きく手を振り、両腕を広げ水飛沫をあげ浅瀬を走る。
そのネコの姿を含む、以前にも増して開放的な風呂全体の絵面は、広くて真っ白な足場とジャングル染みた装飾、そして以前の四角とは異なる丸みを帯びて緩やかな傾斜を持たせた湯船の組み合わせ、それはまるで白い砂浜に居るかの様である。
零司は『南国ビーチ風露天風呂』と名付けて風呂の入り口に立て看板を設置した。
◻
一連の作業を終えた零司たちは館の二階西に接続された通路を使い本館へと戻る。
本館に入るとその左右にあるのは多目的ルームだ。
その右側、南の多目的ルームから楓たちの声がする。
板張りの部屋は何も無い事もあり声が反射して良く響く。
風呂の連絡通路側にある北側の扉を開くと南北に細長い部屋の奥、南西の角に楓たちが集まり、そこから見える風景を楽しんでいた。
そこは未だに何処にも繋がれていない正面玄関の前にある広い庭園で、当然そこも零司の管轄だった。
何処にも繋がっていない以上こちらの方が裏にすら思えるのだが、楓はそんな事は気にもせず毎朝この庭園に咲く美しい花を学校の花瓶に差すのが毎日の楽しみのひとつになっていた。
そんな日々の幸せの場所を嬉しそうに紹介している楓は零司たちが来たのに気が付いて振り向く。
「あ、零司。巫女さんたちの部屋ありがとね」
「あれくらいなら何時でも良いぞ。それとジーナとクーリス以外にも掛けておくか」
零司は残り八人のインフォメーションチップを並べて見るが、その全てで皮膚に異常があるのを確認していた。
クーリスの時に体を透かして見れば、体の大部分に入れ墨の様な醜い模様が浮いているのを確認した。
そして人為的な物だとインフォメーションチップが告げているので呪術的な何かかと思ったが、説明を読むと巫女選定で漏れた際の決まりとだけあったので回復を使う事で本来の綺麗な素肌に回復した。
零司が手を翳し、八人をロックオンした状態で回復を掛けると、クーリスがそうであった様に彼女たちの体はまるで零司に裸で抱かれているかの様な温かみを感じて小さな声を漏らす。
そして今回回復を受けた八人も零司のものになったのだと自然に受け入れていた。
今までパートナーと体を重ねる事はあっても、それ以外の者となどした事はない。
これから先もそうだと思って生きてきた彼女たちは零司に愛されている様に温かく優しい術で包まれた。
ただお付きとして生きていくだけの為に存在して来たその心に僅かだが幸せが入り込む余地を作る。
「何をしたの?」
当然楓が問い質す。
「彼女たちは皆何らかの状態異常があったからな。それを直しただけだ」
「ふーん。まあ良いわ、巫女さん……えっとジーナさんだったかしら?」
「左様に御座います」
「あはは……普通にして良いのよ? ここに住む人は皆家族みたいなものなんだから」
「家族……」
「そうよ、家族。だから仲良くしましょ」
笑顔で巫女たちに告げるが、彼女たちにはまだ良く分からない様だ。
「ほんとーに、アンタたちって変わってるわよね」
マルキウは零司の頭に飛んで行き、ドスンと着地する。
「うむ、だがそこが良い」
新人に自らの度量を示そうとするリリ。
それに回復の内容を何となく察した一同は状態異常が何なのかを聞く事は無かった。
「それともうひとつ、これをラチェットに渡しておく」
零司は契約書のコピーを取り出して手渡す。
「何でしょう……これはさっきの契約書ですね」
「天界にも報告するなら持って行った方が良いだろ?」
「ありがとうございますぅ」
配慮に感謝して少し照れているラチェットは零司が魔王なのではと言う疑念が大分薄れている。
しかし実際は魔王としてのランクを上げた零司に油断してしまうと言う痛恨のミスを冒しているのだ。
またいつかやって来るだろうその災厄に出会う時、ラチェットが無事で居られる保証は無いのである。
その後、巫女たちは荷物の片付けとこちらに引っ越しをする為の準備などしなければならない雑多な作業があるので一旦は与えた部屋へと向かわせる。
夕食は一緒に食べる事を楓が宣言したが巫女たちは楓たちが気を悪くするからと別に摂る姿勢を固持し、理由を訪ねた楓に対して手と首以外にある筈の模様をチラ見して貰おうとクーリスは面を少しずらして見せる。
だがそれを見る楓たちは特に変化を見せず不思議そうに成り行きを見守っているだけである。
まだ模様が見えていないのだろうかと不審に思いながらももう少しずらして見せる。
それでも反応は変わらないので、それならばと少しずつずらしていくが素顔を丸々見せてもその反応は変わらなかった。
それをおかしいと思わない筈がないクーリスはジーナに顔を向けた。
ジーナは最初、楓と話し合いをしているのに目を背けるのは無礼にあたるとクーリスを見ていなかった。
しかし今、あり得ない反応の無さとクーリスに助けを求められ彼女を見た。
そしてジーナは模様の跡が全く無い綺麗な肌のクーリスを見た。
「!?顔が……」
驚きを見せたのは楓たちでは無く、ジーナの方だった。
意味が解らずお付きたちに振り返って見せると同じ様に驚かれ、一人が答えを返す。
「忌紋がありません!」
そんな馬鹿なと思いながらもさっき掛けられた契約の術を思い出し、あの時の温もりを感じた場所が忌紋が施された場所と重なっているのに気付く。
袖を少し捲って見ても忌紋の跡は全く見えなかった。
「状態異常はそれだったみたいだな」
零司の言葉に全員が視線を向けた。
「他のも仮面を外して見たらどうだ?」
零司はとっくに確認してあったので気負う事無く彼女たちの期待を後押ししてやった。
ペアで向かい合いながら恐る恐る面をずらしてゆくその姿は、以前の自分に戻れる期待と、もし自分だけ忌紋が残っていたらという不安がない交ぜになり、とてもゆっくりとしていた。
殆どの者は怖くて目を閉じていたが、一人がパートナーの顔を見て嬉しそうに涙を流し嗚咽する。
そして目の前に居る親友の手を取り『ミーリちゃん、お帰りなさい』と抱き付き囁くのだった。
こうして全員の忌紋が綺麗に消えているのを確認し終え、気持ちも落ち着いて来た巫女とお付きたちは楓からの食事の誘いを改めて受け入れたのだった。
ジーナたちはこれで救われるかな?
前回までの連続三話分で急激にアクセスとブクマががが




