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46.新しきもの6 歓迎会

済みません投稿遅れました。

寝落ちしながらだったのとスマホの不調で接続詞が無かったり別の場所にあったりしたので気付いた範囲で修正しました。

 午後五時の曲が鳴り響くファーリナの街。

「そろそろね」

「はい、サーラさんが呼びに来ると言っていましたが」

 中庭の椅子にゆったりとして座っていた二人は、手を繋いだままゆっくりと立ち上がって室内へと向かう。



「大変お待たせしました。これよりリリ様の館へ移動して頂きますが準備は宜しいでしょうか?」

 ルールミルは着替えの入った旅行カバンも既に運ばせてあったので身一つで問題無かった。

「ええ、行きましょう」

「では私の後に続いて下さい」



 白亜の館へ続く門が格納された四角四面の白い建物。

 白い壁の表面にはどの門よりも精緻な模様が施されているので、一目見ればそれが特別な物だと誰もが気付くだろう。

 そして扉が在るだろうその場所はモールの入り口と同じく一段凹んでいる。

 扉の前に立つサーラとその後ろにルールミルたちが乗る馬車が続く。


「それではこれよりリリ様の館へ進みます」

 サーラはわざと勿体ぶってから門へと向き合う。

 徐に首元から二つのボタンを外すとサーラの白い肌と華奢な鎖骨が見え、肌身離さず首から下げた鍵を取り出す。

 鍵は『零司の力』が込められた神光石で出来た物で、神が近くに居なくとも内包する力だけでも輝き続ける。

 白亜の館などで零司たち四人の神々と近くに居る時は、真っ暗な場所なら照明代わりになる程に明るくなった。

 零司が如何にこの鍵に力を込めているのかが判るだろう。

 つまりこの鍵はサーラが零司の力を使える様にした物だが、今はサーラの意思によりコントロールされてその輝きも抑えられている。


 その鍵を両手で包み込み目を閉じると零司を想いながら小さな声で唱える。

「我は魔王零司の巫女サーラなり、白亜の扉よ、開け」

 サーラは一瞬だけ淡く輝き、自身でも何かが起きたと肌で感じた。

 扉の隙間から緩やかな暖かい風が吹き付け、音も無くゆっくり奥へと押し開かれ完全に開ききる。 

 建物の中にはモール並みの門が見えるが、その装飾は門を格納した建物と同じで繊細な美しいレリーフが施されていた。

 そして、その門の先には白亜の館ではなくもうひとつ扉があり、直接白亜の館を見る事は出来ない造りになっていた。

 以前は白亜の館はモールと隣接していたのだがやはり離しておこうとなり、あの巨大な陥没を起こした大穴付近へと館ごと引っ越ししていたのだった。

 因みにサーラの詠唱はその時の気分で彼女が好きな様にやっているだけである。


「こちらへ」

 サーラは横に避けて御者に奥へ進むように誘導する。

 御者は馬車を前に進ませ転移門を抜けて次の扉の前まで進むと、さっき通った扉が閉じるが天窓と照明があるお陰で建物内は明るい。

 馬車と並んで進んだサーラは目の前の扉に手を翳した。

 今度はそれだけで扉が手前に開くが、これはただの映像だけであり実際には存在していない。

 つまり、扉はあってもそのまま通り抜け可能であった。

 理由は、格好は付けたいけど日常的な二度手間は面倒と考えたからだ。

 当然その扉が動く時に空気は動かず、肌で感じる距離に居るサーラには当然違和感で直ぐに判るだろうが、御者辺りの距離があるとさっき通った扉も音も無かったので違いはほぼ感じないだろう。

 そして扉が開いた先には白亜の館が見え、裏の(・・)正面玄関へ続く道が見えた。


 『裏の正面玄関』

 ただの裏口でしかなかった場所が正面玄関と遜色無い程に仕上げられ、裏口で繋がっていた風呂や果樹園は玄関から見ると横に配置換えされている。

 これも門の向こう側にある新しく作られた小屋と馬止めと同じで、零司が改装したものだ。


 僅かな距離を歩いた馬は直ぐに止められる。

 そこは既に玄関前で馬車は横着けになっていた。

 護衛が先に降りてステップを設置すると最初にイーノが降りて来る。

 次いでイーノが手を差し伸べてルールミルが降りた。

 サーラは二人をエントランスへ誘導すると、そこには零司とネコが待っていた。

「零司様、ルールミル様とイーノ様をお連れしました」

「ああ、ありがとうサーラ」

 頬を染めて嬉しそうなサーラ。


「零司様、この様な素晴らしい館にお招き頂き心から感謝します」

 ルールミルは相手が神であり憧れの対象だった事、そして求婚された事に心を揺さ振られながらも普通っぽい話し方にしようと頑張る。

「ああ、良く来てくれた。これからは二人ともここを我が家だと思って寛いでくれ」

 ルールミルとイーノは受け入れられた事を喜ぶ。


「サーラ、荷物を降ろし終えたら護衛と御者を門の向こうの部屋に送って欲しい。彼らにはそこで寝泊まりして貰うが必要な物は用意してやれ。それとあの建物では貧相過ぎるから後で手直しすると伝えて欲しい。何か問題があれば連絡しろ」

「解りました」


「ネコは荷物を降ろし終わったらさっきの部屋に運んでおけ」

「わかったにゃ」

 ルールミルたちは校長と同じ見た目で体の小さなネコに荷物運びをさせる事に戸惑うが、零司が出した命令なので大丈夫だろうと思い直す。

「それじゃ二人は後を着いて来てくれ。学校と同じ様に案内する」


 そして最初は館のあちこちにあるトイレについて話した後、ローマンジャングル銭湯風露天風呂に案内して日常的に利用する場所を優先的に紹介して行く。

 そのあと陽が夕闇に沈む頃、ルールミルたちの部屋へと案内する。

一階から階段を上り、リリたちの部屋とは反対のフロアへと誘導して普通に扉を開けた部屋、他の部屋の扉と同じく植物の美しいレリーフが施されている。


 零司に続いて中に入る二人はその広さに驚いた。

 しかも零司は更に進んで扉を開けると隣の部屋に入る。

「この二つの部屋を自由に使ってくれ。一応二人で使う様にしてあるが個別が良いならもうひとつ用意する。どうせ部屋は余ってるからな」


 二つの部屋をゆっくりと見て回る二人は信じられないと言った雰囲気で、手を伸ばしながらも触れない様に手を引っ込めてみたりしながら部屋をゆっくりと歩き回る。

「素晴らしいです……本当にここをお借りしても良いのですか?」

「ああ。それと他人行儀は要らないぞ。ここに住んでるのは家族だと思って良い。それと荷物はこっちの寝室に運んであるからそれだけは自分達でやってくれ。後はそうだな、片付けが終わったらリビングに来てくれ」

 零司はルールミルの部屋を離れた。


「姫様、夢みたいです」

「本当にそうね、零司様は家族だと思えと言ってましたし」

「こちらのお住まいにはえっと、零司様、楓様、ネコ様、リリ様、マルキウ様、ラチェット様、それと先程のサーラさんが同居していると領主のお母様が仰っていました」

「どうしましょう。あれは本当に求婚だったのでしょうか? 今更ですが怖くなってきました」

「きっと大丈夫です! こちらの神は王都にいらっしゃるリジカーネス様とは違ってとても心優しい方ばかりだと聞いてますし、きっと姫様も悪い様になんてしません」


 自信あり気に笑顔でルールミルを励ますイーノにも不安はあったが、それを言っても彼女を不安にさせるだけだと思っていた。 

 それに領主のシエルが言っていたサーラの立場は、もしかしたら自分たちよりも上の可能性もあった。

 彼女も零司たちの家族としてこの館に呼ばれて英才教育を受けているのだ。

 自分達も王宮で教育を受けてはいたが、サーラが受けていると言うそれは王宮とは全く異なる異世界の教育であり、昼間のモールでの労働と学校教育だけでなく零司が出す宿題で一晩中勉強していると言われる。

 あの小さな少女に零司が何故そこまでするのかは判らないが、少なくともサーラに対して期待している度合いが普通ではないのは確かだ。

 零司はサーラを将来のモールの責任者にしようとしているとシエルは言っていたが、本当にそれだけなのだろうかと。

 恐らくその考えは小さな頃から一緒に育ったルールミルも思い至ったのだろう。

 だからこそイーノはそんなルールミルを安心させていつもの笑顔で居て貰いたいと願う。

 

 一方で不安を漏らしたルールミルだが、心から信頼しているイーノだからこそ出た言葉であり立場は違えど一緒に育ち、いつも自分の側に居てくれたイーノだからこそなのだ。

 自分を想って言ってくれる言葉にいつも甘えてしまうが、反面、自分の事を好き過ぎるイーノに苦労する事もある。

 でもそんなイーノが大好きで、もし(・・)本当に零司の下に行くとしても、出来る事ならこれからも一緒に居て欲しいとルールミルは思うのだ。

 そうしていつも彼女に心から感謝しているのだった。



「用意は良い? イーノ」

「はい、姫様!」

 お呼ばれの服に着替え、やって来たリビングルーム。

 確かこの部屋はかなり砕けた感じがする部屋だったが、食堂はそれなりに格調のある物だった。

 リビングに来いと言われたものの、食事に呼ばれているので食堂に合わせた装いをしてみたのだがどうなる事か。


 扉を軽く叩いて様子を伺う。

「あ! 気にしないで入って良いわよー」

「失礼します」

 イーノが両開きの扉を開けてルールミルがリビングに入ったその瞬間。

 (パカーン、パカパカパカーン)

「「「「「「ようこそ我が家へ!」」」」」にゃ」

「だな」


 折角のクラッカーの演出も、ルールミルは目を閉じ頭を抱えて座り込み、イーノはシークレットサービスを彷彿とさせる動きでルールミルを庇う。

「あー、そっか、お姫様だったな。大丈夫だ、これは俺たちの国の歓迎の仕方だよ。怖がらなくて良いぞ」

 その言葉にキツい目をしていたイーノは腰が抜けて座り込んだ。

「イーノ」

 目を開けたルールミルは背を見せて目の前に座り込んだイーノを抱き寄せる。

「ふえぇぇぇ」

 安心したのか泣き出すイーノ。

 それに驚いてしまった楓たち。

「あぁごめんなさい! (おどろ)かそうとは思ったけどこんなに驚くとは思わなくて」

 楓は慌てて二人に駆け寄り宥める。

「あーあ、泣かしちゃった」

「大丈夫ですよー、怖い人は居ませんから安心して下さい」

「一番怖いのは魔王であるべき。痛っ!」

「大丈夫です。ここは優しい方しか居ませんから」


 イーノが落ち着いてから楓とサーラが手伝い立たせた後で浄化する。

 ルールミルとイーノは王都の聖堂で行われる成人の儀式で司祭様から浄化の言葉を掛けられた事はあるが、本物の神術による浄化を受けたのはこれが初めてである。

 そして王都の何処かに居ると言う神術を使える人間の話も聞いた事はあるが見た事も無いし誰とも知らない。

 しかし今、王都ですら珍しい神術使いが目の前に居る。

 門を開けるのは単にそう言うものだと思っていたが、司祭さえ使えない神聖な術を使う少女が目の前に居るのだ。


 サーラにしてみれば自分が居るのに他の神々にそんな事をさせる訳には行かないし、何時かまたこの鍵に零司の力を込めて欲しいと出来るだけ使う機会を増やしているのだが、光が衰える兆候は全く見られなくて残念にすら思っている。


「ありがとうございます楓様、サーラさん」

「良いのよ、ね?」

「はい」

 サーラに対してやっぱりちょっとだけ妬ましいと感じてしまうルールミル。

 サーラの話を思い出してみれば、自分とイーノもたぶん鍵を持たされる事になるのだろう。

 その時は自分も開門だけでなく浄化も出来るかもしれないと淡い期待を(いだ)いている。


「それじゃぁ歓迎会を始めましょうか」

 テーブルは少し高く広めの物に替えられて、とても素朴に見える料理の数々が並ぶ。

 ピザに鳥モモ肉、手巻き寿司にハンバーガー類にチップス。

 それはら一種のジャンクフードであり、部屋も飾り付けされて若者が友達だけで初めてのクリスマスパーティーをする様な、そんな空間だった。

 ルールミルとイーノは楓に背中を押されながら主賓用のソファー(・・・・・・・・)に座らされ、サーラにジュースか酒かと問われるが最初から失敗する訳には行かないとジュースを頼んだ。

 そして素朴な円筒形のガラスのコップに注がれた薄ピンクの液体。

 全員に飲み物が行き渡る。


「それじゃ皆、コップを持ってね。良し、ルールミルさんとイーノさんの同居を祝って、乾杯!」

「「「「「カンパーイ!」」」」にゃ」

「「かんぱーい」」

 零司たちがコップを掲げるのを真似てルールミルたちも慌てて掲げた。


「美味しい。これは?」

 ルールミルは一口飲んでサーラに訊ねる。

「さっきレストランで食べた中にもありました」

 それにイーノが気付いた事を言う。

「これは果樹園で手に持っていたモモのジュースです。異世界ではネクターと呼ばれる神の飲み物だそうです」

 『ネクター』は商標名、語源のネクトールが神の飲み物であり、それは蜂蜜である。

 零司の知ったかを真に受けたサーラであったが、その被害者が増える様だ、さすが魔王。


「本当に濃厚で優しく滑らかな味ですね」

「気に入って貰えたかしら? 極親しい友達で楽しむ時のスタイルだから、料理も好きなだけ楽しんでね」

 女たちの和やかな会話が続き、零司は口を出さない。

 それは零司がルールミルに対して知らずに求婚の言葉を使ってしまったのを知っている女たちが、誤魔化すのではなく寧ろ仲良くなる為のチャンスとしている。

 零司は楓を信じて成り行きを見守るだけだったが、その雰囲気は当然ルールミルたちにも伝わっている。

 本当に求婚したのなら零司がエスコートすべきなのに、それが玄関から部屋へ案内があっただけで、今も何も無いのだからこれはやっぱりこの世界の常識を知らなかったのだろうかと、顔には出さないが気落ちするのだった。

今回の裏?設定:

 雪解けの日付などから北海道くらいの北緯らしいファーリナの街。しかし日没の時間が、全く合ってなくて何気にグダってしまった orz

 最初に門を開けたサーラ。肌で感じたのは発動の瞬間だけ人の目では感知できない速度で魔法少女に変身していたから。

 リリの館は居住している部屋全てにトイレとシャワー室が付いている。

 ルールミルが気にしていた服装ですが、楓たちはいつものラフな服装でした。まあ主賓と言う事でオッケーかなと。

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