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178.成果発表会 12

 ギーツと爺はジュラルミンとステンレススチールの説明を受けたあと、この台の上に並ぶ鉱石の採掘方法や金属類の製造工程を簡略図で説明される。


 そこには露天掘りの採掘現場で使われる超大型のショベルカーやダンプ、ベルトコンベアーや鉱石の破砕と選鉱設備、高炉や脱炭装置、炉から出たばかりの鉄をローラーで板状に薄く伸ばす圧延ローラー設備、ペラペラに見える大きく長大な鉄板を保管し易くする為にトイレットペーパー状に巻き取る装置、製品造りでは鍋など深みがある場合は直後の行程で絞り加工し易いサイズにする裁断機、必要な形状に打ち抜く絞り・型抜きや模様などをつけるプレス機、切断面のバリ取りや表面の鏡面磨きなど、大量生産を前提とした工場で使われる設備が俯瞰図などで描かれていた。


「うへぇー、こんなに手間掛かんの」

「これだけ大きな工房なら高価なのも納得じゃわい」

 簡略図にある設備と並んで描かれた人のサイズから、見た事も無い程のかなり大きな装置や工房になるのを感じていた二人は食器ひとつ作るのにこれだけ大量の鉄を必使った設備が必要だなんて本当に十倍程度の値段で済むものだろうかと思う。

 しかし案内の言葉にまたしてもなる程と納得する。

「凄いですよねー、でもこれは神の国の話なのでこちらではもっと小さな工場で作れるそうですよ。それに同じ設備でも型と呼ばれる部品を使い分ける事で簡単に様々な品物を作れるんだそうです」

 こちらの世界での製造業は全て家内製手工業であり、日本の工場を図で示しても圧倒的な生産能力の差を知らないので大量生産と言ってもその規模を推し量れない。

 図で示された大きな工場でも職人がひとつひとつ槌を叩いて作るくらいに思っているのだが理由の多くはそれ程膨大な商品が流通する市場を想像出来ない所にある。

 それに多人数での作業を思い浮かべるには、農産物の収穫時に地域住民総出で刈り取り収穫祭で集まるくらいしか思い浮かばないのだから無理もない。

 新興領地も数百年前の話であり大規模な集団開拓も経験がある者などいないのだ。

 とは言えモール関係に従事している者なら集団で大量の品物を扱いそれなりに高い能率で流れ作業しているものの、同じ物を何百何千と一度に作る作業など考えつかないのだから。




 続いて隣の台に移ると、こちらには自然環境に関するものだった。

 大気で地表付近から真空になる高度までの気圧・気温・成分の変化と層の名称などを示した図がある。

 鳥などの生命活動がある範囲や雲の高さにオゾン層など人が守られている仕組みが紹介されている。

 そこに数キロ程度の小さな範囲での対流をさっきの実験中に瓶の中で煙が回っていた話を引用して上昇気流と下降気流を説明し、大きな鳥が長時間羽ばたく事無く上空で旋回し続けられるサーマルソアリングの原理を説明し、地球の自転で緯度の違いによる大気の流れと気候の変化も解説されている。

 それにもっとも身近な水の循環による雲の発生や雨が降るメカニズム、雪や雹になる理由も追加された。




 次の台には周期表とそれに対応する鉱物が小さなマスに収められている。

 当然だが気体や有害な物は用意されていない。

 零司はこの表を作る時、あちらとこちらの世界の実態調査をしたが違いは見られなかったし、公開はしていないが学校で学んだ周期表には存在しない元素と高次元の直接的な発見を成し遂げ、これによりより正確な時間軸や異世界への転移門新設を可能としている。

 そして元素の大きさ比較を人サイズまで順に並べた図を置いたり、比較的身近で簡単な幾つかの化学式が紹介されていて化学反応の代表例として燃焼が扱われた。

「なるほどなー、それで火が消えたんだな」

「よく解らんがそう言う事じゃったか、ふむー」

 おまけ的に単一元素だけの物質として黒鉛、ダイヤモンド、C60フラーレン、カーボンナノチューブが取り上げられている。

 同じ元素で正反対の性質を持つ真っ黒で脆い黒鉛と透明で強固なダイヤモンドを並べて比較している。

 C60フラーレンではその名が示す通り炭素が六十個で構成されたシンプルなサッカーボール状をしていたり、カーボンナノチューブも炭素が筒状に並んだ模型で紹介している。




 次は人間を構成する成分や、とてもマイルドに表現された人体内部の構造と各部の役割を解説している。

 一学年の生活授業内でも触れているが科学科ではここで示される図よりも現実的な立体ホログラムによる透視図での教育も行われた。

 初めて見る人体解剖レベルの映像だったが、こちらは各家庭の日常の中に食料として動物を解体する作業があるので子供とは言っても学校に通う程度に成長しているのもあってか気分が悪くなる者は少なかった。

 ここでは分かり易さを優先した内容となっている。




 最後に今まで以上に見慣れない幾つかの代物が並んだ台に来たが図などの説明が無い。

 一番大きく目立つのが水槽で、その隣には籠に入った色違いの三つのゴム風船が置いてある。

 次に三十センチくらいの『への字に曲がった木の板』、幅二十センチ程の飛行機の模型と紙飛行機に手のひらサイズの木製でT字形の小物があった。

 これらは零司が用意した物で授業でも扱われている。

「ここにある物は全部飛ぶんですよ。最初はこれですね」

 案内が掴んだのは紙飛行機だった。

「早速これを飛ばして見ましょう」

 その言葉と共に微笑み、チョイと紙飛行機を投げた。

 ギーツたちの感覚では石を投げる様に落ちると思われたが紙飛行機はゆるい波を打つ様に下降して遠くまで飛び続ける。

「おお~、こりゃたまげたわい」

「んんー? これも神の乗り物?」

「いくらなんでも小さ過ぎじゃろ、わははは」

「これは小さな子供でも作れるおもちゃですね」

「ホントに!?」

「はい。と~っても簡単なので一緒に作ってみましょうか、それではこちらをどうぞ」

 引き出しから紙を取り出して二人に渡すと教えながら新しい紙飛行機を完成させる。

「飛ばし方の手本を見せるので真似して下さいね」

 紙飛行機をスッスッと前に出しては戻し、その動きを見て貰う。

「それじゃ行きますよ~」

 さっきと同じく前に送り出す様にして手を離すと、投げた位置からほぼ一直線に緩やかな下降線を描いて遠くに着地した。

 それを見ていた二人も鼻息を荒くしてすっかりやる気になっている。

「そんじゃあたしからやっていい?」

「うむ、わしは最後に行くとしよう」

「んじゃお先っ!」

 ギーツが投げてみるが勢いが強過ぎて風圧と掴む力に負けて紙飛行機が折れてしまう。

 ギーツの紙飛行機は飛ぶ事無くクルクルと回転して目の前に落ちた。

「あー!」

「こりゃ失敗じゃの」

「力の入れ過ぎですね、ははは…」

「もう一回っ!」

 ギーツは自分の紙飛行機を拾ってくると折れた所を(ギーツとしては)丁寧に直してもう一度投げの姿勢に入る。

 鼻息荒い勢いから同じ結果になるのを予見した案内はギーツの肩に手を掛けて制止する。

「待って!」

「うぇっ!?」

「力を抜いて軽い気持ちでやってみて下さい。そっと押し出す感じで」

「お、おぅ? えーっと」

 言われて一旦息を整えると目を閉じ気持ちを落ち着けて、もう一度ひと息吐いてから案内がやっていた事を思い出す。

 さっきよりも大分マシになったギーツの手から紙飛行機が舞う。

 そう、木の葉が舞う様にヒラヒラと床に落ちた。

「またか~」

 ギーツも歪んで折れ曲がっているのを理解しているだけに結果に納得してしまう。

 溜め息を吐き無言で足元の紙飛行機を拾い上げるとまた台の上で修正作業に入った。

「ふむ、直す間にわしもやってみようかの」

「はい、上手く行くと良いですね」

 案内の声援を受けて投げポジションについた。

「こうじゃったか」

 爺の自問と共に放たれる紙飛行機は、凡そ最良と言える滑空で反対側の壁に衝突して墜落した。

「素晴らしいです!」

 思いも寄らない見事な飛行に称賛した案内だが、その声にギーツはまたしても爺に先を行かれて少しばかり悔しい。

「本当に飛ぶとは…」

「初めてであんなに飛ぶなんてやっぱり年の功なんでしょうか」

 そんな話を横に聞きながらギーツは自分の紙飛行機を綺麗に開いて皺を伸ばしてからもう一度最初から丁寧に折り直した。

 変形は最小限でこれ以上の修正は望めそうもないと腹を括り真剣に構えて息を整える。

 その真剣な立ち姿は展示会に参加する一般人の領域には無くプロを思わせた。

「よっ…と」

 今度こそ、とイメージした通りにはならなかったがギーツの紙飛行機は見事初飛行を果たした。

「やった!」

「うまく行ったの、はははは」

 爺の祝福によろめきながらガッツポーズして見せる。

「おめでとうございます。パチパチ」

 案内も小さく拍手してギーツの成功を祝う。

 待機していた他の案内が全ての紙飛行機を拾いギーツたちの元へ運んでくれた。

「ありがとう、これ貰ってもいいの?」

「はい、お土産にお持ち下さい」

「そんじゃ遠慮無く」

「ところでこの紙飛行機以外のも飛ぶんじゃろ? そっちも見たいんじゃが良いかの」

「もちろんです。ではこちらもご紹介しますね」


 今度はグライダーの模型を持ち上げる。

「こちらは滑空機と呼ばれる風の力だけで空を飛び続ける飛行機の模型になります」

「こりゃあまた細いのう、簡単に壊れてしまいそうじゃな」

「本物はこの前の膨らんだ部分に人がふたり乗れる大きさになります」

「って事は本物があるの?」

「はい、本物はとても大きくて、この百倍くらいの大きさですね」

「百倍って言うと…」

 ギーツは考えるがこんな大きさで対比を考えた事など無いのでそのスケールが頭に浮かばない。

「この教室二つ分より大きい程度になります」

「大きいのお。じゃがそんな大きい物をどうやって持ち上げるんじゃ?」

「私が乗せて貰ったのは縄で引っ張られて空に昇って、その後ロープが外れて自由に飛べるんですけどね。あ、もちろん動かしてるのは零司先生でしたよ。先生の話では私たちでも使い方を覚えたらひとりでも大丈夫って言ってましたけど、ひとりじゃ怖いので遠慮しました、あははは」

「へー、空を飛べるなんてスゲーな」

「じゃのう。神の力あっての事じゃろうが素晴らしいのう」

「いえ、人が作れるそうですよ?」

「ホントに?」

「はい。元々零司先生の世界では人が作って趣味で飛んでいるそうです」

「ははは、趣味で飛べるとは」


「それとこちらも是非試して欲しいんですけど…」

 台の横にある大きな箱の中から取り出した木で出来た手のひらサイズでT字形の道具を二人に渡した。

「これはまた不思議な代物じゃの。これも飛ぶんじゃろ?」

「はい。えっと…」

 案内は展示物を手に取り、細い棒の方を両手のひらに挟んでクイッとずらすと、勢い良く回転して空中に飛び上がった。

「「おおっ!」」

 上に向かって投げた訳でも無いのに跳ねる様に飛び上がったそれを目で追い掛ける。

 そしてあっという間に落ちたのを見て『これに乗ったら死ぬ』と、直感が囁いた。

「これも木とナイフがあれば簡単に作れる竹トンボって名前のおもちゃですね。作り方は見たまんまですけど、この羽が回転すると空気を押し下げて竹トンボを浮き上がらせるんですね。だから手で回した直後は回転が早いから飛び上がるんですけど、手から離れて回転する力が無くなると落ちてしまうんです」

「なるほどなー」

「ふむ」

 二人は真似をして回転させる。

 手で擦る様に軽く力を加えるだけで風が手に当たっているのを感じると新たな好奇心に駆られ、より力を込めて飛ばしてみる。

「おおっ、飛んだ!」

「ふむ、これなら子供たちのナイフの練習に丁度良さそうじゃな」

 現代日本と違い生活する上で小さな頃からナイフ使いが必須となるこちらでは道具作りや補修も自分でするのが普通なだけに子供が技術力を高める素材としては丁度良い材料だと考えられた。

 実際に日本でも子供たちが自分で竹トンボを作って遊ぶなんて時代があったのを零司は知っていたからこそ授業に採用していたのだ。


「次はこちらですねー」

 への字に曲がった薄い板切れを持ち上げ、ちょっとだけ鼻息を荒げて笑顔を見せる。

「こちらはブーメランと呼ばれるとっても変な形の狩猟道具です。こっちの長い方を持って、こう、水平に力一杯に投げると、ぐいーっと空に昇ったと思ったら自分の所に戻って来るんですよ?」

 案内はニコッと笑うが二人には全く伝わっていない。

「どゆこと?」

「分かり難いですよね。えーっとこう投げるとクルクル回りながらギューンって凄い勢いで空へ昇った後で、向きを変えて戻って来るんです」

 投げた物が戻ってくるなんて紙飛行機以上に不思議どころか奇っ怪な現象と、さっきとあまり変わらない説明にギーツたちは『んんー?』と首を傾げる。

 言葉だけではイメージし難いのは想定済みなので()()()()にあるから人が居ない安全な広い場所で試して欲しいと伝えるに留めた。


「さて次で最後になります」

 目の粗い籠に入った三つの風船のうち、青色の風船を取り出す。

「この丸いゴム風船には水が入っています。ちょっと持って貰えますか?」

「あいよ、って、何だこれっ! 水が固まるとこんな風になんの?」

「わしにも貸してくれんか。おおう、これは確かに。まるで乳のようじゃの、ほっほ」

 結婚前の若い女性二人を前にそんな事を言い出す爺だが、この時代では街中で赤子に乳を与えるのも普通にあるので取り立てて敵意を駆り立てるものではないが、胸が薄い案内のこめかみがピクリと反応した。

「これを空気中に置くと下に落ちますよね?」

「だね」

「うむ」

 爺は台に置いた水入りゴム風船を軽く捏ねている。

「では水の中に入れたらどうなると思いますか?」

「沈む…かな?」

「どうじゃろ。水は水じゃからな」

「それじゃもうひとつ、この中身が無い風船の元だけを水に入れてみますね」

 案内は膨らませる前の風船を水に入れて中の空気を揉み出すと手を離した。

 すると木の葉みたいな落ち方で底に着いた。

「おお…なる程。これなら沈むじゃろ」

「決まりましたね。それでは実際にやってみましょう」

 水入り風船をゆっくりと水槽に入れ、手を離した。

 さっきの木の葉の様な沈み方とは異なり、羽毛が舞った後の様にゆっくりと沈んで行く。

「ふむ、これは風船その物の重みじゃな」

「はい、そうなりますね。中に入ってる水は同じですが風船の重みで沈んでます」

 案内はニヤリと笑い籠の中から別の風船を取り出す。


「ではこちら、空気が入った風船だとどうなるでしょうか」

「どーなんの?」

「わしは知っとるが黙っておこうかの」

「それじゃこれを水に入れて貰えますか?」

「あ、うん。どーなるかな?っと」

 風船を受け取ったギーツは案内がやった様にそっと水面に近付けてそのまま沈むのを期待していた。

「あれっ? 沈まないね、何で?」

「ははっ! 木が沈まないのと同じじゃな」

「そうですね、ほぼ正解です。風船の大きさと同じだけの水と比べて風船の方が軽かったから浮いたんですね。中に水が入ってた方は風船の方が重いから沈みましたけど、少しでも空気が混じっていたら沈まなかったでしょうね。それと同じで石や鉄などは塊だとあっという間に沈みますよね? でもこの風船みたいに中に空気があれば鉄でも沈まないんですよ?」

「へぇ~」

「なる程のう」

 船は漁業の街ズィーダンくらいでしか使われていないので一般的な認知度は低く話題にはあがらない。

 そこへ満を持してもうひとつの風船を籠から取り出す案内。

 こちらは紐が付いてて何か特別な物なのかと思わせる。


「さてこちらはもうお気付きかと思いますが、かなり変わった物になります。最初の風船は水に沈んで、次の風船は沈まないけど空気中では下に落ちました。さて、それではこちらはどうなるでしょうか?」

 ギーツは考える。

 案内の話は余りにも順序立てたもので、想像だけで答えが出るのが当然と言わんばかりだった。

 空気中で下に落ち水にも沈む水風船、空気中で下に落ち水には沈まない風船、であれば次はきっと水に沈まず空気にも沈まないのではないだろうか?

 それはつまり『空気中で浮く?』

 空気中で浮くと言えば空に昇る炎や煙だけだったが、この風船の中身が炎や煙なのだろうかと考える。

 だが炎だったら燃えてしまうだろうし煙は空に昇らない事もある。

 そう思うが一連の流れから言えば答えは『空気に浮く』なのだろう。

「えーっと、空気に浮く?」

 その答えに納得したと爺も首肯している。

「それでは答えを見てみましょう」

 抱えていた風船を解放すると、すぅーっと昇って天井にぶつかり軽く跳ねた。

「お二人とも正解でーす! パチパチ この様に周囲と比べて軽い場合は浮いてしまうんです。まあ細かい事を言ったらこの発表会の時間では足りないんですけどね」

「なぁ、これってさ、空気も水みたいな物って事だよな」

「はい、そうなりますね」

「へー、じゃあ水の中も飛べるって事?」

 この質問に案内は答えられなかった。

 何故なら考えた事も聞いた事も無かったからだ。


 突然の事態に案内は零司の方をチラリと見る。

「ん? まあ仕方無いか」

 三人を見ていた零司は組んでいた腕を解いて三人に歩み寄る。

「ギーツの質問はとても良いな」

 零司の言葉でギーツに視線が集まりちょっとした羞恥心でたじろく。

 ギーツの考え方は色々な条件を柔軟に組み合わせるものであり『在る物を在るがまま』だけでなく同じ系列の物をごちゃ混ぜの中から条件に合う枝先を繋げては完成形のイメージを夢想する。

 しかし通常はその夢想が実現可能な組み合わせであっても先達からは若輩者に有りがちな絵空事としてか見えていない。

 先達たちだって諸先輩たちの仕事を見ながら自分ならもっと凄い仕事が出来ると勇んでみたが、夢想を実現するどころか先輩が培った未だ見ぬ技術や精神力の前にひれ伏して来たのだ。

 ギーツだけが特別ではなく新人にありがちな事だと思っていたら零司から褒められているのだから学校の専門科目を学んだ卒業生も目を向けざるを得ない。

「まあ答えを言ってしまうなら『飛べる』だ。考えてみろ、水の中で動いてる生き物がいるだろ」

「そっか、魚は水の中を飛んでるんだ。そっかー、なる程なー」


 普通は魚は泳ぐものであって鳥の様に飛ぶものとは思わない。

 水中と空中を明確に隔てる境界線があり人は水中では生きられない。

 だが生死問わずその境界線をずらして認識してみれば魚は水中を飛んでいるとも言える。

 魚には体内に浮き袋がありこれで水深を調節しているので比較するなら飛行船が適切なのだろうがギーツのこの柔軟な思考や純粋な好奇心に零司や楓は評価を高くしている。




 こうして科学科の見学は終わり、案内が紙の手提げ袋を二人に手渡した。

「最後にこちらをどうぞ、中身は実験で使った道具が入ってるので思い出しながら楽しんで貰えたらって思います」

「ありがとう。凄く面白かった」

「うむ、帰ったら孫たちを驚かせてやるとしよう。世話になったの」

「いえ、こちらも勉強になりました。ありがとうございます」

 案内に見送られながら科学科を後にするがいつの間にか入り口には順番待ちの列が出来ていた。



「んじゃ次は服飾科へ行くかな」

「いやこっちを先に行った方が良さそうじゃ」

「どれ~?」

 爺が広げた案内チラシで指差す場所は体育館だった。

今回はかなり出鱈目な事を言ってますけど最後まで読んでくれてありがとうございます。

中々更新出来ないですがきちんと家に帰してあげたいのでこれからも見守って頂ければと思います。

次回は夏までには上げたいですけどどうなるやら。


それと新システム導入で求めるリンクがバラけてしまった事で混乱しましたが何とか対応してますw


グライダーが飛ぶのは平地のサーマルソアリングよりも山肌に沿って吹き上がる場所が多いみたいですね。山脈に沿って数百キロなんて長距離を移動して行けるそうですが、近年は小型ジェットエンジンをコクピット後ろに格納しているのもあったりして凄いことになってます。それと以前フライトシミュレーターでグライダーを使った時には速度が低くても浮力があるので着陸できない事態に陥ってました。(ノ´∀`*)

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