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118.お披露目6 会場確保と危険予知

懲りずに新キャラ登場。ヽ(´▽`)/

 サーラはローゼとマーリを引き連れて会場予定地の湖岸へやって来た。

 そこは目の前で陸橋と並走して地上路もあり、こちらが常時利用可能な道路だ。

 その常設道路に館から車一台分の舗装路が延びて丁字路になっている。

 陸橋は湖周回観光が終わる開門時間には消されて地上路だけになる為、白亜の館の二階バルコニーからでも湖面は見えた。


「お待たせしました」

 サーラに続いてローゼとマーリの二人もお辞儀した。


「待ってたにゃ」

 ひとりで湖を眺めていたネコはサーラの声に振り返る。

「して欲しい事があれば何でも言うにゃ。零司様からも手伝う様に言われたのにゃ」

「ありがとうございますネコ様。それでは早速始めましょう」

「そうね、大きさはとりあえず多目的広場の規模に少し追加すると良いでしょう。向こうとは違って土地の制限は無い様なものだから将来も使うかもしれないし大きめに確保しましょうか」

「基本は道路よりもこちら側に、露店スペースを左右に用意すれば真ん中に居るお客様は花火も見易いと思います」

「後はそうねぇ、ちょっとした舞台は必要だけどそれは向こうから持ってきましょうか」

「あの、サーラさん。露店の移設はどうしましょうか」

 答えは判っているのだが一応訊ねておこうと考えた。

「それは広場担当の私が責任を持ちますので安心して下さい。マーリさんは露店の配置や催しに係る方面の意見をお願いします」

「はい!」

 それから程無く最初の段階、広場が出来た。


 出来上がったのは湖周回道路から白亜の館寄りに丁字路を挟んで造られた大きなコートに似た広場だ。

 大体の範囲を指定したサーラの指示で道が走っていただけの細かな凹凸があった草原は土中から確りと平らに均されながら固められたあとに草が刈り込まれ、浮いた草の葉が空中の一ヶ所に集まり何処からか現れた紐で縛られて束になるとネコの無限倉庫へと回収される。

 草原は元々芝生に似た草だったので刈り込まれた事で新設サッカー場の様に美しい緑の広場になった。


 出来上がったばかりの広場に足を踏み入れるネコに続いて初めて見る造りのソコへ感触を確かめながら進む三人は芝生独特の不思議な踏み心地に軽く感動して何度も足踏みしている。

「他には無いかにゃ?」

「はいっ!」

「にゃ?」

 足元の感触に集中していたローゼがネコの質問に仕事で来たのを思い出し、焦って返事をしたらネコにどうしたのかと逆に首を傾げられてしまう。


「変わった感触ですね」

「これは芝生って言う日本の公園ではありふれた物にゃ」

「ネコ様、『こうえん』とは何でしょうか?」

「公園は様々な形態があるにゃ。一番身近なのは日常的な癒しを与える自然を多く取り込んだ回廊や子供たちが遊ぶ為の小さな公園で遊具が幾つも置かれて自由に楽しめるのにゃ。次がスポーツ用の平らな広い土地で誰でも使える所も公園と呼ばれるにゃ。それから自然環境を保全する目的でとても広い土地を開発禁止区域にする場合も自然公園と呼ばれる場合があるにゃ。この三つの中で前の二つは人の手で造られて部分的に芝生が使われる事があるのにゃ」


 ネコの説明は日本を知っていれば『そんな感じ』と思えるだろう、しかしド田舎のこの世界で『自然を多く取り込んだ回廊』とか『自然を保護する』などと言われてもちょっと意味が分からなかった。

 何故ならこちらには自然が欠乏する人口密集地や自然破壊など存在しないからだ。

 だが日本の事情を良く知らなくてもこの足裏の感じは素直に気持ちが良い。

 真夏の草原に突然現れた刈り込まれた芝生の空間は、目新しさに加えて湖からやって来る緩やかな風に乗った濃い草の香りが三人の鼻腔を刺激する。

「公園とは素敵な所なのですね」

 ローゼはその風を胸一杯に吸い込んで、わからないなりに日本の公園の雰囲気を満喫すると気持ちを切り替えて零司から依頼された仕事へと戻るのだ。



 多目的広場では弓の順番待ちを兼ねて壇上の残り半分の場所に沢山の人が並んでいる。

 今までの祭りもそうであったが今回の祭りの来客の密度は更に高い。

 その理由はやはり白亜()の館で主催している事に尽きるだろう。

 事前に住人全員の紹介があると聞いているので関係者の顔と名前を知っておきたいと思うのは当然だ。

 それに神が齎す恩恵を知る人々は純粋にどんな催しになるのかが楽しみなのだ。


 くじの順番を待っている人々は舞台の上に表示される白亜の館の内部映像や地上から衛星高度へ至るまで大陸の様子や大気圏を脱出した衛星高度から見た宇宙空間に浮かぶ真っ青な地球や両極にある氷の大地とオーロラなどを見る。

 これを見た人々は宇宙空間に浮かぶ地球の映像が何を伝えたいのか良く分からない。

 何故なら大地と海は平面でどこまでも続くと信じているからだ。

 今まで天文学が存在していないこの世界ではそれで何も問題無かった。

 もし天文学と呼べるものがあるとしたら暦くらいのものだろう。

 だがそれも学校が始まった事で様々な認識の変化が訪れるのは確定している。

 それは来年春に卒業生の発表会で天文学に限らずこの世界の人々に衝撃を与えるからだ。


 今回の招待客は来年の卒業式と発表会でも招待されて学校教育の成果を知って貰う事になる。

 そして学校の役割を既に知っている人々は来年度の第三期生として他の街から新入生としてやって来ようとするだろう。

 ファーリナから広がる文化や商品、技術など、新しく効率の良い優れた生活環境を求めて世界中の人々がファーリナを目指す。


 ただ、王や各街の領主、土地を離れられない者たちからは自分の住む街が取り残されたり急激に高度化する未来に不安を感じる者も居るだろう。

 そこで各街に学校が立つまではそれぞれの街で代表選考してファーリナで学んで貰い、卒業後は自分の街で教師をして貰う。

 各個の事情に合わせた差異はあるが大筋ではそんな感じで話が進んでいる。


 そして今回の招待客は祭りの客というだけではない。

 冬季研修に関する情報交換も重要で、昨夜もホテルのバーを使って研修に関する説明会と意見を集い擦り合わせをしている。

 その時、ただ一人だけ少女が混じっていた。

 他の女性は殆どが領主の妻だが各領により事情は様々であり他にも次代の領主を連れて来ている者も居る。

 そして説明会に居るただ一人の女性、少女はこの世界の基準で見ても未成年者だと直ぐに分かるほどに若い。

 バーカウンターの前でディスプレイを表示して解説する零司に目を輝かせ、話の内容など頭に入らずに見入っている少女は初めて見る魔王零司に喜びを隠せない。

 隣の席に座る父親は娘が今までに無く興奮しているのを見ても驚いた様子も無いのは嫁の若い頃とそっくりだからである。

 父親はモールと海産物取引をしている海の街、ズィーダンの領主だ。

 そんな海の街で元気に育った娘が取引先の噂話を聞いてどうしても連れて行けとせがみそこに居た。


 この娘は普通と少し違い、周りが止めるのも聞かずひとりで海を泳いでいる。

 周囲は心配だが本人は全く問題を感じていないし実際に天候が良くない時は海に入らない。

 そして天気が良く海が穏やかな日は海に入って友達と遊んでいるのだ。

 友達とは海に生息する生き物たちである。

 穏やかな性格の大型魚や熱帯魚の様にカラフルで不思議な形をした魚が沢山泳いでいる水面下の世界は、少女の好奇心を掻き立てる。

 こうして遊んでいるうちに自然と覚えた泳ぎは零司たちが教える水泳ほどには洗練されてはいないものの、ダイバーが使う足ヒレを着けた泳ぎに似ていた。

 水の抵抗を嫌い服を脱ぎ捨て体全体をうねる様に動かし魚を手本とした泳ぎで自在に水中を泳ぐ様は人魚の様だ。

 光のカーテンが揺らぎ明るく暖かい珊瑚礁はそんな少女にとって格好の遊び場だったのだ。

 

 少女は街の噂話の中で話題の街ファーリナの学校で水泳の授業がある事を知る。

 水に入るなど自殺行為として認識されるこの世界で積極的に泳ぐ事を教えている学校に強い興味を持った。

 学校設立初年度には父親からファーリナへ行かないかと打診を受けていたのだがその時の少女にしてみれば四神とモールの話を聞いてはいても神など神待宮に籠り何をする者なのかも分からず、モールにしても美味しい物や何か素晴らしい物があると言う話だけで少女には特に興味を引く様な物では無かった。

 少女にとっては眩しい太陽と美しい海と魚たちとの毎日の方が遥かに重要だったのだ。

 別に人間の友達が居ないと言う訳では無いし仲が良い幼馴染みの同年代の子供たちだって居る。

 ただ領主の娘と言う立場だったせいなのか他の家の子供たちの様に労働で時間を取られる事無く開放的な土地だったせいもあるのだろう、少女は好奇心に駆られて女の子とは思えない程の冒険をしてきたのだ。

 そして何よりそんな少女を暖かく見守る人々のお陰なのだろう、突飛な行動もいつもの事で思い付いたらやらずに居られない。


 しかしそんな少女は一般人がしない事を数多くしてきた事で普通では無い沢山の経験を持っていた。

 それは数々の失敗でありいつも生傷が絶えなかった。

 それだけに失敗の要因を人一倍知っており危険に対して敏感である。

 若くして手に入れた実体験から来る知識は繊細で子供ゆえの鋭敏な精神で洗練されて危険予知の固有能力を手に入れていた。

 以前零司が全人口検索で固有能力持ちを調べた際には発見出来なかったのでこの能力を獲得したのは最近なのだろう。

 だがその能力があるにも関わらず生傷が絶えないのはそれくらいなら押し通してしまう行動力が原因だ。


 さっきの白亜の館見学でも零司たちのグループに含まれていたのだがそれは零司も気がついている。

 大人たちの中にただひとり元気な少女が居れば誰だって気が付くと思うかもしれないが零司が見ていたのは主にインフォメーションチップである。

 その中に居た特殊な人物を零司が見逃す筈が無いのだ。

 そしてそれはサーラも同じであり零司に倣って相手のインフォメーションチップを確認するのは常態化しているので自分以外で初めての固有能力者の存在に少しばかりの感動と歳が近い事もあり親近感を覚えた。


 だが少女の能力を零司が知った時、零司は二つの事を思う。

 ひとつはその能力が現在は彼女ひとりにしか適用出来ない事であり、もしも神格化したらその能力はピンポイントではあるが零司の歴史検索能力を越えるナチュラルな力になるだろうと言う事。

 もうひとつはその力を手に入れた場合、多くの命が一度に失われる災害や事故を予知した時に彼女の精神に悪影響を与えないかと言うこの二つだ。


 零司にしてみれば非常に欲しい人材であり、災害や事故を事前に感知出来るなら大きな損害を出さずに事を運べるのだからこれから多くの街に広がる新しい技術や文化の誤用や失敗による重大な損失を防ぐのにこれ程心強い存在も無いのだ。

 零司は尊大に様々な事を言うし行動するが、自分が神であっても百パーセント全てが上手く行くとは思ってはいない。

 ただ上手く行く様にと外からは判らないほど慎重に多岐に亘って調べ上げて充分な安全を確保してから実行しているに過ぎない。

 それでも世の中何が起こるのか分からないもので、予測しようも無い偶発的な事故など回避しようが無いのだ。

 そういった事態を排除出来るのならば零司の選択はより正しく実行されるだろう。

 そんな少女をサーラの様に有能な人材として引き入れたいと考えはするのだが先の精神に与える影響を考えると二の足を踏む。

 サーラの時とは違い現状で幸せな生活を送っているのが判っているのに彼女にとっては博打にも似た選択で失敗する可能性だってあるのだ。


 当然だがこれは零司とサーラの二人だけの秘め事では無く楓にも告げられた。

 今回の件で言えば館に招き入れるのならば楓の判断は重要だからだ。

 現在までの流れで言えば館の住人全てが婚約者である。

 行く先が無かったラナやこの世界に於いても貧困な生活を送っていた能力あるサーラの様な助けを必要とする背景がある訳では無いのだ。

 しかしそれを前提に置いても危険予知はとても有用で重要な能力なのである。


 中二病の零司は現代日本の知識を使って神様チートを行使するがこちらの世界を自分の都合が良い様に改編しようとは思ってはいない。

 そこが日本人の気質と言うべきかは判断しかねる所ではあるが、少なくとも楓のために生活環境を良くしたいと考えている。

 そのおまけとして様々な技術や情報が広がっているに過ぎないのだがサーラの様に救える者なら助けたいとは思う。

 だがこれはあくまでも零司が感知しうる範囲でしかないので時間の先に関する漫然とした調べ物は途轍も無い時間を要してしまい効率の良い物ではない。


 故に危険予知に特化した能力は安全確保には欠かせないのだ。

 楓が生きているこの世界で、楓の願いを叶え幸せな人生を送って欲しい零司には『楓の願い=人々との平和な日常生活』を揺るがす物は排除しなければならなかった。

 例え現状ではほとんど起こる可能性が無いが全く無いとは言い切れず、それが起きれば人の世界など全てが終わる『星の世界の小さな出来事』の様なことなど、起きてからではなく僅かでも早くそれを察知出来るなら回避することも出来るだろう。

 現状では隕石の類いなら既に監視網が張り巡らされているので問題は無いのだが超新星爆発などの突然やって来る出来事では長年積み重ねた星々のデータベースから変化を捕らえて予測していなければその光が届いた時には手遅れなんて事になりかねない。

 ここは零司たちの地球とは違い、星雲に包まれた空間なのだ。

 近隣十数光年程度の範囲に新しい星が沢山生まれている最中ではあるが当然古い星だってある。

 全天走査した訳ではないし優先順位で言えばまだ先であり、それ故に危険予知は予測し得ない、または対処が出来ていない部分に発生する優先順位の高い活動を決める為に必要不可欠となる。


 危険予知少女ボーセの未来は何処へ向かうのか。

今回もまた遅くなりました。新キャラを思い付いてしまい、つい…(;゜∇゜)

家に帰るまでに何人増えるのか。可能なら人数増やすよりも内容を濃くしたいのですがナゼか増える方向にw


2023/09/16

露店移設に関わる会話で解りにくい言い回しだったのを修正しました。

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