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114.お披露目2

最近遅れているのが常態化しているのが悲しい作者ですが今回もページを開いてくれてありがとうございます!

 .+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.

 演舞を終えたあとジーナ(巫女)たちは登場した時と同じくゆっくりと優雅に会釈すると会場からの温かい拍手を受けながらスタッフルーム(食堂)へと戻る。

 舞台の階段を降りて会場から陰になるスタッフルームに集まったジーナ(巫女)たちはさっきまでの落ち着いた静かな雰囲気から一転、熱の籠った息を吐いてパートナー同士で抱き合っていた。


「皆さんとても素敵でした!」

「感動しました!」

 手の空いている一年生の女性スタッフが感激している。

「有り難う御座います。これも皆さんのお陰です。ありがとう」

 ジーナ(巫女)は三二五期を代表して笑顔で感謝を述べた。

 神待宮の巫女を初めて目にしただけでなく神にのみ捧げられた演舞を見る事が出来た客たちは、神待宮で受け継がれ磨かれた美しい舞いに女性スタッフと同じく感動してその話で賑やかさを取り戻している。

 会場の反応を舞台袖から覗き見て大いに満足する作法担当(金髪縦ロール)は隣の三二五期担当(金色短髪)と目線を合わせで『予定通り』とお互いに笑みで頷く。


 最前列中央に座る王のホウシラン、左隣に王妃トリーノと第二王女ルーミナルが座る。

 ルーミナルは巫女たちの美しい演舞に目を輝かせ自分も演じてみたいと母のトリーノに相談している。

 トリーノにしてみれば巫女たちの舞いを美しいとは思っていてもそれは親元から離され神待宮でしか生きていける場所が無かった少女たちが小さな頃から神に仕える為だけに厳しい環境と教育の中で育てられ培われた物だと知っているので安易に娘のルーミナルに対して彼女たちの領域を侵す様な同意は出来ないと笑顔を返すだけだった。

 そして王の右には神待宮最高責任者アーレと顔色の悪いファーリナ領主のシエルが座り、その隣に妻のナティが並んで最前列両端と二列目は王城関係者で埋まっていた。


《続きまして魔王零司様、救済の女神楓様のご挨拶です。お二人は共にこちらの世界で人としての対等な立場を望んでおり、ここファーリナに於いても地元の皆様と(ちかし)い関係を持ち共に生活しておりますので気持ちを楽にしてお聴き下さい。それでは零司様、楓様、どうぞ》

 呼ばれた零司と楓は四神感謝祭のパレードの時よりも落ち着いた控えめの衣装を纏い、まるで夫婦の様に腕を組んで登場した。


「今日は私たちの白亜の館お披露目会に参加して頂き有り難う御座います」

 壇上の椅子に座る招待客はサーラから気を楽にと言われていたが言葉だけとは言え『神が人に(へりくだ)る』言葉に一瞬だけ驚き会場はどよめく。

 そしていつもの口調と異なる零司の言葉に街の人たちも今日はそれくらい特別な日なのだろうと真剣に耳を傾けた。


「私たち二人がこの世界に降り立ったのは偶然でしたが、皆さんとの出会いにより~」

 零司の言葉はこの世界の人々にとっては普通では有り得ない程に貴重な機会であり、一言一句聞き逃すまいとしているが、零司たちからしてみれば自分達はただの未成年でありそのギャップにむず痒さを感じている。


《続きまして楓様》

 零司の何処からそんなにネタが湧いたと言いたくなる様な十分以上に亘る事業の解説話を終えて楓の番になる。

 楓は零司の手をギュッと握り零司を見てから軽く微笑んだ。

 しかし内心では多くの生徒を持つ学校の校長をしていてもこの世界の重要人物を集めた正式な形で公表される晴れ舞台で緊張しない訳が無い。

 零司が緊張の欠片も無い事に羨ましさと嫉妬が同居しつつも、その零司と目を合わせ何と言ったら良いのか分からないが勇気を貰い落ち着きを得た楓はこの世界にやって来た日のあの心細かった気持ちを思い出し、もう零司と離れる生活は考えられないだろうと感じていた。


「こんにちは皆さん。初めての方も多くいらっしゃいますがこれから長いお付き合いになると思いますので零司共々どうぞよろしくお願いします」

 そう前置きして館に住む事になった女性たちの経緯を話し始める。

 説明の中で住人の名前を出す度に当人たちが現れ、入居した順に登場するので会場の人々にもその流れが解り易く、人々の住人に対する思い入れも隣人の様に感じられる。

 もちろんサーラとマリーの神格の件は隠しているが、異世界からやって来たラナ元王女と従者の話を始めると同情や憐憫(れんびん)の念で会場が涙で溢れた。


 マリーに関しては実際には定住者ではないのだが家族同然なので一緒に公表する事にした。

 当然マリーは以前住んでいた街の領主も来ているので緊張していたのだが噂話でしか聞いた事が無い少女の事など分かる筈も無く、戦の女神リリと親しい関係にある異世界の神狼を連れた女性と言う紹介に好意的に受け止められていた。


 マルキウたちはミテールヌ山脈に隣接する街は挨拶回りが済んでいるし元々話だけでしか知らなかった人々にとっては初めて見ると言うこともあり騒ぎの様な反応は見られなかった。

 サーラに関しては零司が自ら選び館に招いた才女として世間に広く知られており将来モールの経営を任されると言われているので人間の中では最も零司に近い位置に居る者としても有名である。

 ルールミルはここで王族であるとハッキリと公表した。

 その反響は凄まじく、白亜()の館に住んでいると言う事は零司と婚約していると言う事であり、将来は零司と子を成すのだと世界に布告されてしまった。

 当の本人は真っ赤になりながらも正面を向いて居るが付き人のイーノはいつもの調子で乗りが軽く、招待されている父親のテュリエ・キデル(ガーデナ領主)に笑顔で手を振っている。

 最後に紹介されたローゼは現在のモールを実質的に運営している若く美しい女性チーフとして知られていた。

 そして楓の推薦で電撃的に零司と婚約して白亜()の館の住人として迎え入れられた事が公表される。

 因みにジーナ(巫女)たちと共にファーリナへやって来たリジカーネスの事は存在しなかったかの様にスッパリと切り捨てられた。

 

 会場の指定席に居る元聖職者の語学教師ケイン教諭はこの話を聞きながら生徒に教えている時のきれいな文字とは掛け離れた速記レベルの書きなぐった文字で一部始終を書き記していた。

 この記録は後に『ファーリナ滞在記』の一節としてキレイに装丁されて本になり、シリーズ化して各街に各刊一冊以上が渡り歴史上貴重な記録として王城の図書室に収められ、保存用が国宝に指定されている。


 楓の住人紹介の後、零司は全員並んで揃った所でそれと気付かれない様に記録撮影している中で幾つものスナップ写真を撮っている。

 そして多くの記録映像の内のひとつ、正面から撮影された映像は事前に各街の領主に了承を得て、舞台上のと同じスクリーンを各街で表示してリアルタイムで放映されていた。

 女性全員が誇らしく零司に寄り添い並び立ち笑顔を見せるその光景は、男性よりも女性、特に若い世代から憧れの場所として見つめられている。

 それにこの後に零司たちが向かう先にもカメラを追従させて世界中にその内容を伝える事になっていた。



《続きまして招待客の皆様には栞にある通りモール裏への移動をお願い致します。移動先は学校となっていますので現地では案内を付けてお進み頂きます様お願い申し上げます》

 サーラの案内が終わり一区切りがついたとざわつく会場の人々はそれぞれに手荷物などを持ち会場を離れて行くが招待客と言う訳では無いファーリナの住人達は会場になっていた中央の壇上にある椅子を片付けていたスタッフの手伝いをしながらさっきまでの出来事を楽しそうに話し合っている。


 そんな次々と片付いて行く広場に沢山の小さな子供たちが集まり声を上げて楽しそうに遊んでいた。

 貧しいとまでは言わないが普通よりも生活環境が低かった最果ての街ファーリナに舞い降りた幸運(善神)招待客(他領主)達の目に数々の信じられない現実を映し出す。

 貴重な労働力の若い世代が生産活動では無く学校で高度な教育を受けられる上に一年を通じて食料や生活資財の比較的安定的な供給が受けられる事やこれから世界を変えるだろう新たな産業の育成など、正しく新しい世界の幕開けとなる最先端の豊かな街になって行く。

 それを象徴するかの様な子供達の明るい笑顔は素晴らしい未来を思い起こすのに相応しく、来客者たちはそんな子供達を横目に見ながら『次は自分達なのだ』と指示された場所へと運ぶ足取りは軽かった。



◻学校への転移門前


 転移門前に集まった招待客達は目の前に居る地元住人(有志学生)を案内役として二三人ひと組で転移門を潜り進んで行く。

 今まで学生と関係者以外は立ち入る事の無かった校舎内部まで案内される客達は見た事の無い様式の建物や教室に、一年生では充分な基礎教育が行われる事、二年生からの職業訓練的な専門科目と素養教育としての選択科目などの実演を見学して回るとその内容の高度さに客達は驚きを見せている。

 今までなら仕事をする上での教育とは現地で親や先輩からその場その場の状況に合わせて指導されていたのをこの学校では集団で一斉に基礎を学び、自分以外の者たちも一緒に行うので様々な成功や失敗のパターンを自然と知る事ができ、より多くの経験や知識を得られるととても感心している。

 しかもその説明をしているのはこの学校で教育を受けている生徒なのだ。

 招待客からの様々な質問や見学先の要望に対して素早く的確に答えるその姿は部下または家族として迎え入れたいとすら思えた。


 そしてその光景は零司の力で各スクリーンへと投影されていたのだ。

 今まで噂話でしかなかった学校の実態が映像と音声により世界中に知れ渡り、学校は一躍若い人々の憧れの場所として認識されている。

 様々な場所を巡り映し出される映像は、現代日本の一般人から見た未来を描くSF映画の世界であり、人々の目を釘付けにしてその場を離れられなくしていた。

 その中で特にスクリーンを見る人々の目を引いたのは神術魔術の実演と天文科目、そして季節柄授業として組まれている水泳の光景だった。


 神術魔術に驚くのはは当然としても、天文は星を見る事に何の意味があるのかと思われたが始まってからまだ4ヶ月程度の活動でも零司と楓の知識を下地として実際に生徒たちを連れて衛星高度まで昇り、その時の映像を再生する事で自分達が居るこの大地も星のひとつなのだと知らしめる。

 その反響は凄まじく、各街では驚愕して絶句する者と大騒ぎする者たちも現れたが次の映像に人々はまた言葉を失いその映像から目が離せない。

 それは地球の両極から現れたオーロラの光であり、続いて北極点オーロラ観測所から見上げた映像は生き物の様に揺らめく光のカーテンだった。

 それなりに零司が観測所の地球儀を使った見て解る解説でオーロラも含め、一年の太陽の動きから何故季節が生じるのかを説明している。

 それでも直ぐに解ったのは若年層が大半だがそれでも人数は少なかった。


 最後の水泳だが、これは単に深い水の中に入る習慣が無いのに人が魚の様に泳ぐ姿が信じられなかったからだ。

 自ら深い水に入るのは自殺する様な物であり泳ぐなど考え付かなかったのだ。

 これも零司は水を必要以上に怖がるのではなく、もしもの時の為に練習しておけば事故が大幅に減らせるだろうと説明を付け加える。


 そしてもうひとつ、最も目を引いたのは食堂であった。

 無料で食事を提供してくれるなど普通は考えられない。

 食料生産に必要な若者の労働力無しにこんな事を成し遂げるファーリナの街がとても素晴らしい土地だと人々の胸には理想郷として映っている。

 他の街の人々は零司たちが利益還元事業で自分たちの街にもその一端を分け与える事業を進めているのを知っている。

 映像を見る人々の零司たちに対する期待は計り知れないのだ。

 しかし零司はここで王のホウシランと結んだ約束で利益還元事業が可能になったと伝えるが、これは王の権威を維持する目的がある。

 それは乗っ取りの様な結果を望んでいないからだが、もし零司が王に代わる存在になったとすると忙しさや義務に縛られてしまう事を避ける為でもあるのだ。

 そして自分の街と比較して未来に失望しファーリナへと難民の如く押し寄せるのを防ぐ事も理由のひとつだった。



◻転移門格納庫前


 サーラの詠唱に応じてキラキラと輝き七色の虹の様な光を放つ転移門格納庫扉はゆっくりと静かに開かれる。

 その光景を見て涙を流さんばかりに感動している者が世界中にどれだけいるのか不明ではあるが門を前にして卒倒しそうな女性が数名居た。


 白亜の転移門を通り抜け実体の無い扉が開く。

 人々の目の前には白亜()の館が見え、この日の為に敷地内の案内役として教育を受けた元巫女たちが短い通路の両脇にズラリと並んでいた。

 その短い通路の先には白亜()の館の北棟が見えている。

 北棟はジーナ(巫女)達が住んでいるが空中に浮かぶ反射材により太陽光は充分に届いているので明るさで見れば南棟と大した違いは無い。

 しかし北向に門を抜けたにも関わらず、その感覚で見えた太陽の位置は百八十度ズレているのでちょっとした騒ぎになったがそれもサーラの説明で直ぐに収まり白亜の館へと進んで行く。


 招待客には各街の領主毎に元巫女が案内役として付くが、王のホウシランには神待宮の最高責任者アーレが付いている事に苦い顔をしている。

「ここは巫女が付くべきではないかのう?」

「何を言うのやら。責任重大な大役は私をおいて他に居るかい?」

「その通りです。アーレ様、よろしくお願いしますね」

「妃の方が良くお分かりの様だ。では行くとしようかね」

 若く美しい女性に囲まれながらも老婆に連行されるホウシランの絶望は深い。


 神待宮従事者の回復事業は既に終了しているがアーレは回復を受けていないので見た目は変わらない。

 ただし健康面の回復と不幸ステータスは確りと取り除いてある。

 しかし何故巫女たちと同じ回復を受けなかったのかについてはアーレの寂しい笑顔だけで答えが返る事は無かった。

今回のお披露目でサーラとマリーの神格以外すべて公開してしまった感じです。

ラナに関しては既に婚約者になってました。

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