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113.お披露目1

お待たせしました。

そしてブックマークありがとうございます。( 〃▽〃)

これからもよろしくお願いします。ヽ(´▽`)/

 白亜の館で日課になっているローゼたちの深夜の学習は、いつの間にか館全体の住人を巻き込む学校教育へと変化を遂げた。

 学校教育とは言ってもファーリナの学校とは違い自由度の高い内容であり先日の水泳の集中教育の様に数日間続く事も良くある。

 そしてこの世界では存在していなかった物、例の自動車の運転も組み込まれていたりする。

 当然その分だけサーラの通常勉強が遅れる事になるが先人であるサーラの経験に基づく適切な解説と、サーラの権能となった『強制共感』の有効活用によりローゼの学習速度は驚異的な早さで進んでいた。


 その夜は日を跨ぐ前に白亜の館南側の多目的ルームを改装した教室でサーラが教鞭を取り、ラナ元王女以下四名にこの世界の生の会話と読み書きに関して強制共感を交えて教育が行われた。

 しかし頭にサーラの知識があったとしても、知識や経験は日々補強しなければ自分の物に成らない為、神待宮従事者の回復事業も一応の完了を見た事もあり平日昼間の一部は復習に充てられて実際の文字の書き取り練習では巫女のお付きたちがひとりずつ付いてマンツーマンで教えている。

 こういった部分は元巫女候補たちには割り合いと親和性が高く、神待宮で必要とされる高度な教育を受けていた事もあり手本と呼ぶに相応しい。


 ラナにしてみれば新しい家族(優しい姉たち)に囲まれて幸せな時間ではあるようだ。

 そしてラナの従者の中で唯一の護衛だったエルは、今は充分以上に安全な白亜の館に住んでいる事もあり護衛は必要ないとラナの身の回りは他の従者に任せてマリーと行動を共にする事が増えた。

 元々腕白だったエルには宮仕えの様な作法やしきたり等よりも体を動かしたいと言う気持ちが大きく、この場所で役に立つ仕事として選んだだけだったがそれは思いのほか的を射ていた様でマリーを師としてより高度な狩りを学び、山菜などの採取と併せて日々の成果は上々である。


 そして日を跨いで休憩を取った後の午前一時頃、白亜()の館が主催する夏祭りに住人全員のお披露目とちょっとした余興をする事にしたのでその最終的な仕上げに入る。


「えーっと今日は取引窓口はお休みよね?」

「はい、取引先にも事前に周知してありますので問題はありません」

「ローゼさん、レストランの方はどうかしら?」

「今までの傾向からすると祭りなどの催し当日の客入りは低下するので充分足りると予想しています。それとモール全体が同じ傾向になるので特に問題は無い筈です」

「分かったわ。何か突発的な事態には皆で対処するとして、会場の方も準備は終わってるのよね?」

 楓はチラリとサーラを見る。

「はい。零司(ご主人)様が確認したと仰られていました」

「その零司は今日も鍛治屋さんの所?」

「はい。そろそろ完成品が出来上がるので小まめに顔を出しているとの事です」

「何か零司ばかり大変な事になってるわね」

「以前に似た質問をしましたが『充実している』と仰られていました。寧ろ満足しているそうです」

「そう。こっちに来てからは好きな事してるから休むのも惜しいのかしら。まあ零司が満足してるなら私はそれで構わないわ。それじゃ皆、各グループ毎に最後の練習と打ち合わせしておきましょうか」

 こうして白亜の館は一晩中回復を掛けながらの練習が続いたが最近のネコの癒しは危険なので未成年のラナに対する影響を考えて一切行われていない。



◻朝 多目的広場


「おはようございます、楓先生、ネコ先生!」

「おはよう、マーリさん」

「おはようにゃ」

「ルーミルとイーノもおはよう」

「おはようマーリ」

「おはようございます」


 今回の会場になっているモールの西隣にある多目的広場の食堂、その野外にはみ出たテーブルで朝食を摂っていた楓たちの前に一年のマーリがやって来た。

 祭りはお昼からだが運営関係者の中には朝から準備がある者もいるのだ。

 マーリも当然運営関係者である。


「それにしてもルーミルが王女様だったなんてねー」

「黙っててごめんなさい」

「良いのよ、それに皆そうじゃないかなーって思ってたしね」

「えーっ、そうなんですか!? なんで姫様ってバレたのかな。うーん」

 ひとり悩むイーノを見てマーリが小さく笑い、ルールミルは苦笑いする。


「まあルーミルがお姫様でもクラスメイトなのは変わらないし、これからもよろしくね」

「ありがとうマーリ。こちらこそよろしくね」

「わわ、仲間外れにしないで下さいよ~」

「仲間外れになんてしないわよ。これからもよろしく、イーノ」

「はい! こちらこそよろしくです!」

 シュピっと笑顔で敬礼して見せるイーノに笑い合う二人。


「それでマーリさんは何処を担当するのかしら?」

「あ、はい。私はステージの進行管理を任されていますのでよろしくお願いします」

「そうなの? それじゃこれが進行表よ。このあと一度リハーサルするから調子を掴んでおいてね」

「はい!」

「それじゃもう少し集まるまで休んでてちょうだい。私は零司たちを見てくるわ」

「はい、こちらは私たちに任せて下さい」

 楓は事務室へと消えた。


 夏祭りに付き物の屋台関係者は出番まで時間があるからとまだ来ていないが、マーリと同じ関係者はポツポツと食堂へと集まって来る。

 食堂に集まった運営主要メンバーはマーリたちと軽く挨拶すると席に着いてサーラやルーミルたちが配るお茶を口にして一息ついていた。

 今回のイベントは一年生が担当する事になっているので一年でリーダーとして選出されたマーリが仕切るのだ。

 もしルールミルが入学式で第一王女だと言っていたのなら選ばれていただろう事は誰にでも想像は付くが本人が隠していたのだから周りが口出しする事では無いのはこちらも誰にだって分かっているし、今回のお披露目ではルールミルたちも壇上に立つのでどちらにしてもルールミルとイーノの二人は主要メンバーでは無い方が都合が良かったとも言える。

 それに白亜の館で主催するのもあって運営のメンバーは雇われ形式である為、仕事の内容は比較的簡単なものばかりであった。

 だからこそ慣れていない一年生が担当になったとも言えるのだが、普通の他の世界なら、いや、零司たち以外の神であったなら間違いなど許されないとその世界で最高の人材でスタッフを固めただろう。

 しかしその辺りは学校を運営する楓の生徒たちを使っているし、事実上神から教育を受けている者たち以外でその対応に相応しい者が居る筈も無い。


 詰まる所、零司たちが住む白亜()の館主催なのだから零司たちが好きにやって何の問題があるだろうかと。

 今までこの世界を訪れた神々の中で人々に対して最も多くの恩恵を与え、惜しみ無い愛情にも似た親愛なる関係を築く神々に対して人々が寄せる気持ちは穏やかで暖かい家族を想うのと同じものだった事も未熟な生徒たちが仕切るのを受け入れている要因である。

 要は皆家族の様な関係であり、良い意味でド田舎なのだ。

 今回のイベントもある意味でお遊戯会みたいなものであった。

 皆が集まって楽しく喋って食べて飲んでぶっ倒れる男たちと、しょうがないわねと荷車で家に連れ帰る女たち。

 子供たちも一同に集まり一緒に遊んで食べて寝る、そんな街、世界なのだ。


 時間の流れは緩やかで、零司たちがやって来た事で慌ただしくはなったが、それでも皆が幸せに暮らしを送っていける様にと与えるだけでなくそれを自分達で出来る様に教育を施している。

 零司はこの世界なら他者よりも多くの知識を得たからと言って商取引で乗っ取りを続ける者は出てこないだろうと考えている。

 そしてそれは自分もそうなってしまわない様にと利益を還元しつつ(いず)れは全ての事業をこの世界の人々に手渡すのが目標なのだ。

 そうしなければ楓と約束した気ままに銭湯巡りが出来ないので当然である。

 本来の家に帰る目処がついた今、次はこの世界と向こうの間で何かしら繋ぐのかどうかの検討に入っているのであった。



◻お昼 多目的広場


 広場を覆うシールドの気温調節機能を解除して九時頃には暑くなってきた事もあり夏の間だけ壇上に用意されるプールには学校で水泳を習った生徒やその兄弟たちが楽しそうに水遊びをしていた。

 この一般向けプールを作る為に多目的広場が造られたと言っても良く、零司はこれを造るのにちょうど良いタイミングとしてお菓子作り教室を利用したのだ。

 しかしそのプールもこの後の祭りの為に今日は閉鎖されて通常の地面に変更される。

 そんな頃合いにはモールの門からお昼の鐘の音が鳴り響き街中の人が集まって来ていた。

 当然モールの宿泊客もだが今日は各街の代表者と王族が泊まっているので、いつもの外来一般客は居なかった。

 この点に関しては街で受け入れられる許容量の関係から各所に協力して貰い外来の流入を何とかしてあるものの神の館と呼ばれる白亜の館の住人全員を知る事が出来るこんなイベントにファーリナへ行けない人々は残念に思っている。


「そろそろ時間になります。皆さんプールから上がって下さーい」

 運営メンバーがプールを回って声を掛けて行くと楽しんでいた人々は次々とプールから出てバンガローへ向かった。

 バンガローで着替えを済ませるとその内の数名がバンガロー前に設置された屋台で働く人と入れ替わっていく。

 その間にプールの底がせり上がって十分ほど掛けてプールサイドと面一になった。

 水は壇上の周囲にある排水溝を伝い急速に排出されて濡れた地面となったプールの底も夏の日差しに半時ほどできれいに乾いている。

 そしてプールで遊んでいた子供たちは屋台巡りを始めていた。


 壇上の周りをぐるりと回る通路の外周でコの字形に並ぶ屋台は今までファーリナの祭りで出店された日本で見られる形式の店が多く、こちらの人々が再現出来ない店は存在していない。

 零司が作ってしまえば出来はするが、今後の屋台運営に関して零司たちがタッチしなくても続けられる物を選んでいた。

 スタッフは一年生であり屋台の扱いも馴れてはいないがそう言うのも含めて皆で楽しんでいるのだ。

 

 そしてお菓子作り教室の時と同じ様に中央の壇上北側では、簡易宿泊施設を背にして舞台が置かれ、食堂はテーブル類が隅に重ねて置かれて一時的に塀で囲まれるとスタッフルームとして使用されていた。

 簡易宿泊施設二階の各部屋で待機していた白亜()の館の住人たちはサーラの連絡を受けて食堂に集まる。

 運営メンバーの裏方たちは集まった女性たちの美しさに目を奪われて準備や確認作業が止まり横から注意を受けたりしていた。


「さあ、今日のお披露目会で街の皆に顔を覚えて貰いましょう」

 楓が零司の左横に立ち、白亜の館の面々を前にして発破を掛ける。

「練習通り行くわよ!」

 目の前の全員が無言の笑顔で小さく首肯した。


「それじゃサーラさん、お願いね」

「はい、行ってきます」

 サーラはいつも通りの冷静さで舞台袖から中央に向けて歩き出す。


《夏祭り会場にお集まりの皆様、お待たせしました。これより白亜の館お披露目会を開始します》

 賑やかだった会場は一瞬にして静まって声がした方へと振り返る。

 そこにはお菓子作り教室と同じ様に大きなスクリーンがありサーラが大きく映し出されていた。

 サーラは一旦軽くお辞儀をすると舞台袖へと姿を消した後に真っ白だった舞台の背景に映像を投射する。

 桜が舞い散る美しい風景を見た人々はその光景に呑まれる。


 通常この世界では樹木から舞い散るのは枯れ葉である。

 それは秋であり周囲も赤茶色に色付く冬を前にした寒くなり始める季節を思い起こすものだが、そこにあったのは草木が若葉色に染まる大地と美しい小川、そして小春日よりの空は見る者に春を想起させ、更に外来客たちには見た事も無い鮮やかなピンクの花びらが舞い散るこの世とは思えない美しい光景だった。


《最初は神待宮の巫女たちによる神に捧げる舞をご覧下さい》

 サーラのアナウンスに続いて今回の舞い専用の衣装を身に着けたジーナ(巫女)たちが静かに舞台へと並び準備を整える。

 今回専用の衣装は神待宮の作法担当(金髪縦ロール)三二五期担当(金色短髪)が楓と一緒に考えて作り上げた物であり、本来の肌が透けて見える様な物とは事なり、これでもかと和風で絢爛豪華な衣装となっていた。

 それはジーナだけではなく他のお付きたちも同様ではあるが主役はジーナであり脇役は飾りが抑えられている。

 しかし全体で見ればそれは調和の取れた美しい存在であり遠くから見ても素晴らしいのが良く分かる。

 しかもそれに加えて大きなスクリーンに映し出される彼女たちは間近で見ている様に生々しく、人々を惹き付ける。


 ジーナ(巫女)が神に向かってするのとは異なる軽い会釈をするとクーリス(お付き長)が二弧の様な弦楽器で最初のメロディを奏でる。

 お付きたちもそれに続いて演奏が始まり中東~東洋風の非常にゆったりとした曲が流れた。

 舞台中央で舞うジーナ(巫女)の後ろに二人、三角形の位置でバックダンサーと言うよりも背景の一部として巫女を引き立てるミーリとカーシャは鏡合わせで立ち回る。

 そんな巫女たちの姿を招待客の特等席、壇上の広場に並んだ椅子に座るアーレや三二五期担当(金色短髪)作法担当(金髪縦ロール)やそれ以外にも神待宮の希望者を募って招待されていた者たちが嬉しそうに見ていた。

 回復を受けた元巫女たちにとってもその光景は晴れやかであり、純粋に喜んでいる民衆と共にこれからの人生に明るい未来を感じていた。

巫女の舞は本来神をもてなすためのものですが神待宮は事実上零司の支配下になってしまったので問題無いのです。/(^o^)\ナンテコッタ

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