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111.水泳教室

薄いかもしれない水着回! .+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+. 

 ゴールデンラビットの唐揚げですっかり満足した女たちだが既に日課となっている夜の運動は欠かさない。

 増して今日は零司が宣言した水泳教室である。

 零司に水着姿を見せ付ける絶好の機会なので欠席などあり得ないのだ。


 午後八時過ぎ、室内運動施設の一角にあるプールに集まる住人たち。

 そこは当然の様に快適な環境であり衛生的にも優れた空間である。

 故にプールに入る前の消毒層への浸水よりも浄化で済ませた方が維持面に於て衛生的であった。


「よし、全員揃ったな。始める前に回復と浄化を掛けておくぞ」

 零司はコーチ然としてプールをバックに水着を着用した女たちの前に立っていた。

 零司が競泳用のロングスパッツタイプのパンツにパーカーを被っているのと同じ様に女たちも零司と同じパーカーを着ている。

 零司の簡単な説明が終わり準備運動が始まるとラジオ体操をしている零司の真似をして嬉しそうに体を動かすラナとその周りを飛んでいるマルキウリトルシスターズの小さな笑い声が聞こえて来るので皆初めての事でも何となく気持ちが軽かった。


「それじゃ各自パーカーを脱いでプールの(へり)で体に水を掛けろ。きちんと馴染ませてから中に入ってくれ。飛び込むな(バシャーン、パチャパチャ)よ」

 そう言ってる傍からネコとマルキウリトルシスターズが飛び込んだ。

「あー、アンタたち。話は最後まで聞きなさいってあれだけ言ったのに」

「てへへ、お姉ちゃんごめーん」

「「「ごめんなさーい」」」

「にゃぁ……」

 元気に飛び込んだネコがしょんぼりしている姿を見て零司は注意する。

「次からは気を付ける様に。飛び込む事じゃなくて人の話を最後まで聞くって所な」

「にゃぁー」

「「「「はーい」」」」

「よし。それじゃ皆も少しずつ水に浸かれ。心臓が驚かない程度にな」

 全員零司の指示通りにパーカーを脱ぎ始めた。


「魔王様、見て」

 リリは零司の直ぐ横に位置取り振り向くのを待ってパーカーを脱ぐ。

「どう?」

 スルリとパーカーを足元に落としてからその場で回って見せる。

 リリは零司に水着姿を見て貰いたかったのだ。


「……」

「魔王様?」

 目を閉じて鼻頭を指で摘まむ様にして溜め息を吐く零司。

 リリの行動に慌てて楓も駆け付けて自分の水着姿を見せようとパーカーを脱ごうとした時、リリの額に軽いチョップが飛んだ。

「いだっ!」

「へ!?」

 楓はパーカーに掛けた手が止まる。


「不許可だ。レジャーなら兎も角今回は訓練だからきちんとした水着に着替えて来い」

 リリの水着、それは異世界ハイキングの海で着用したマイクロビキニである。

 マリーも似た様な水着だが日頃から着用している動き易さ優先のローライズビキニとは比べ物になら無いレベルの肌色占有率だ。

「喜ぶと思ったのに」

「そういうのは時と場所を選ぶ様に。楓、着替えさせてくれ」

「しょうがないわね。リリさん行くわよ」

 楓はリリの手を取って更衣室へと向かった。


 その間に他の者たちはプールの縁に腰掛けて足を水に入れ、体に水を掛けてゆっくりとプールに入った。

 ラナはお付きのエルたちに手を引かれてプールに入ると大体ラナの肩までの深さだが半分から向こうは色合いから見てももっと深そうだ。

「楓たちが戻るまで自由にして良いぞ」

 その言葉にそれぞれのグループで集まって話などをしている。



◻更衣室


「楓はズルい」

「抜け駆けするからでしょ?」

「楓も同じなのに」

「ま、まあ、それはね? それよりもさっさと着替えて皆の所に戻りましょ」

「むぅ……」

 二人とも楓が用意したユニバーサルタイプの普通のビキニを身に着ける。

 これも紐を結ぶだけなので首裏、胸、腰の四ヶ所を調節しながら結んでトップのトライアングルアンダーをきちんと位置合わせしておく。

 ユニバーサルタイプなのでここは左右に調節が利くのだ。

 そしてお尻のラインに指を差し込んで食い込みを直すと全身鏡の前でポーズを取って見る。


「「……」」

 二人とも鏡に写る薄い胸を見比べると競う様に胸を張るが直ぐに深い溜め息を吐いて零司たちの元へ力無く向かった。




「ここからは泳げる者は参加しなくても良いぞ。泳げないのはきちんと参加する様に」

 楓は学校の授業では中の上程度の成績で型に倣う程度には泳げるのだが暫くきちんと泳いでないのでもう一度お復習(さらい)する事にした。

「全員参加だな。それじゃ先ずは水の中で目を開ける練習だ。何人かで組んでお互いの顔を水中で見られる様にしてみろ」


 巫女たちは早速二人一組で始める。

 零司に対する絶対的な信頼はその練習もスムーズに捗っていた。

 ラナたちは五人全員で固まっているが数回やってみただけではエル以外は水に対する恐怖心から誰も成功していない。

 エルは小さな頃から男に混じって川に飛び込んだりして遊んでいたのでこれくらいは当たり前の事だった。

 マルキウたちは元から水に馴染んでいるので何の苦も無く水中で遊んでいたのだが直ぐに飽きてしまい一人がたまたま飛び込んだ時に変な顔に見えたのを皮切りに変顔で他の人を笑わせて回り始め、ちょっとした混乱が起きている。


 リリはマリーと組んで練習するが二人とも特に問題は無く、水の中で二人してじっと見つめ合っているとマルキウたちが乱入して吹き出してしまい溺れ気味になった。

 サーラはローゼと似た境遇と言う事もあり二人で練習しているが中々上手く目を開けられないので目の前でスタンバイしていたマルキウたちは飽きて他に行ってしまった。

 ルールミルとイーノも同様でマルキウたちには面白い相手では無かったらしい。

 零司とネコが普通に目を開けていると目の前をマルキウたちが列を成して変顔で泳いで行くが特に反応は無かった。


 楓とラチェットが一緒に練習しているが出来ないのはラチェットだけであり楓が根気強く教えながら水中でゴボゴボと声を出して応援しているとそこにマルキウ変顔隊が泳いで来た。

 楓も驚くだろうと思っていた変顔隊は楓の前を塞ぐ様に横並びになって一斉に変顔を見せる。

 楓は軽く笑うとお返しの変顔をして見せた。

 マルキウたちは吹き出して水中で笑い転げるがあっという間に苦しみ悶え水面へと向かう。

 その声を間近で聞いたラチェットは何事かと驚きで目を開き、水中での顔合わせも出来る様になった。


「きゃははは、楓の変な顔! あはははは!」

「げほっ、けほっ」

「へーんなかおー! きゃははは」

 そこへマリーの眷族である狼親子が犬掻きでやって来るとマルキウリトルシスターズを背中に乗せてプールサイドへ向かった。

「ナニやってるのかしらあの子たちは……」

 マルキウスは水上二メートルくらいから妹たちを見下ろし頭を抱える。



「全員は無理だったか。まあ初日だし仕方ないが今後も暇な時や風呂に入った時にでも洗面器に水を入れて練習してくれ。……と言う訳で、今回はこれを用意した」

 それはスイミングゴーグル(水泳用水中眼鏡)だった。

 零司は皆に向かって広げて見せるとそれを着用する。

「「「「変なかおー! きゃはは」」」」

「これを使えば目が水に触れる事は無いから安心して目を開けられるぞ。順番に受け取りに来てくれ。それとマルキウたちには用意して無いから必要なら言ってくれ」

 意趣返しの様な言葉に唖然とするリトルシスターズ。

「まっ、アタシたちなら使わなくても問題無いけどね」

 マルキウスが当然といった感じで言い放つがリトルシスターズは自分達だけ貰えない事に不満を表す。

「私にもちょーだい!」

「わたしも!」

「ならきちんと並ぶ様に」

「「「「はーい」」」」

「アンタたちは……」


 ゴーグルは無事全員に行き渡り、早速装着すると変な顔にお互い笑い合いつつもさっきの様に水中に潜り恐る恐る目を開けた。

 目の前に広がる青味掛かった視界に驚いて周りを見渡せば、ゆらゆらと揺れる水面が上にあって不思議な感覚を覚える。

 お互いに相手を確認すると息が続かないのを自覚して立ち上がる。

「ぷはー、はあ、はあ」

 次々と水面上に顔を出す面々は新鮮な驚きに会話が弾む。

 そんな姿を見る零司は一人で納得してその光景を楽しんだ。


「皆気付いたと思うがこれは視野が狭いから気を付ける様にな。馴れたら次に行くぞ」

 次は楓を誘って零司と二人でクロールと平泳ぎ、バタフライに背泳ぎをして見せる。

「これが代表的な四つの泳ぎ方だ。これから練習して最低でもどれかひとつはマスターして貰うからそのつもりで。水泳は生活に必須では無いが緊急時に命を守る為に必要になるかもしれない。皆で練習出来る時に覚えておいて損は無いしきちんと教えるから安心して練習に励んでくれ。それともうひとつ、水泳が出来るからと言って溺れた人を不用意に助けようとするな。大抵は溺れる人間に抱き着かれて巻き込まれて死ぬ事になる。助け方は後で教えるがそれまでは絶対に泳いで助けようとしない事だ」

「長いわよ!」


 マルキウたち以外は死の話に無言で頷き了承した事を伝える。

 零司たちの世界以外では極浅い場所以外で水に入るのは常に死の可能性を伴う危険な行為とされている。

 それは水泳の概念が無く、あるとしても動物たちに準じた犬掻きくらいなものだった。

 流れが殆ど無い湖の様な場所であっても急激に深くなる場所に嵌まればそれだけで危険なのだ。

 特に体脂肪率が低い者、つまり痩せていたり筋肉質の者は比重の関係で水に浮き難いので水泳が出来ないと溺れるしかない。

 この体脂肪率が極端に低く泳げない者は水に沈むので金槌などと呼ばれたりもする。

 海に暮らす人々でも船以外で海に出る事は無いくらいに海の上は人の世界では無く、畏れの対象となっていた。


「それでは基本からだ。最初はクロールを覚えて貰う。先ずはバタ足からだな」

 零司は学校で習った通りにプールの縁を両手で掴み、体を水平に伸ばした。

 本来は水面に対して水平にしなければならないのだが体脂肪率が十パーセントを切っている零司は簡単に脚が沈んでしまう。

 しかしバタ足を始めると浮き始め、水面が波立ち脚が見える程度になった。

 零司はバタ足を続けながら女たちに顔を向けて背筋を真っ直ぐに伸ばし、膝を曲げない事、腿を擦る程度に寄せて内股で足を動かすと教え、水中に潜って体の動きを観察する様に指導する。


 零司と楓にとっては水着姿は普通の認識だがこの世界の女性にとって体にピッタリのスパッツ一枚だけの、いわゆる半裸の男性の体を凝視する行為はとても心が揺さ振られる。

 それは神待宮でリジカーネスの相手をしていたジーナ(巫女)であっても例外では無い。

 心を寄せた相手の裸を、体の躍動を観賞するこの時間はある意味で心酔してしまうひとときだった。


「確認は出来たな。俺と楓でチェックしてやるから全員やってみろ」

 女たちは声にこそ出さないが色めき立つ。

 零司に対するさっきの目線が今度は自分達に向けられるのだ。

 だがこれはあくまでも水泳を習得するする為の練習であり、そう言う物では無いと理解しているだけに板挟みの感覚に襲われる。

 しかし零司が真剣に取り組んでいる事を自分の色事で汚すなど許されないと一生懸命にさっきの説明を反復して思い出しながらバタ足を続けるのだった。


 そんな中で一人だけ、零司が次にやって来ると判断してビキニのボトムの紐を外してバタ足を続ける者が居た。

 そして横にやって来た者が横で潜り確認すると顔を上げてリリに囁く。


「リリさん、ちょーっと良いかしら?」

「楓!?」

 低い声で告げる楓と予想が外れて声が裏返るリリ。


「こっ、これは違うの!」

「良いから。分かってるから。さあ行きましょうか。ふふふふ」

「あー、やめっ!」

 リリは楓に肩で担がれて零司とは反対の端の方まで連れて行かれてしまった。


 それからは恙無(つつがな)く実際に泳ぐ所まで進み、上半身の動きと息継ぎの仕方、掌の動きと基本は覚えられたので後は洗練し自分のモノにするだけだった。

 つまり練習あるのみである。

 今のところ競技などは考えておらず『無理無く泳ぎ続けられる』のを目標にしているので基礎体力の向上も併せて進める事になる。

 更に食事の内容もそれに見合う物へと変えられ、体を引き締める方向で調整された。

 とは言っても元々ヘルシー志向だった事もあり、動物性脂肪の僅かな摂取制限と良質なタンパク質の摂取量増大で対処された。

 つまり、鹿に似たクリーテルが主体の肉料理からゴールデンラビット主体に移行すると言う誰からも文句の出ようもないメニューへ変更になって白亜の館の住人は以前にも増して健康的で魅力ある女性だらけになって行くのだった。


 因みに零司たちが居ない平日の昼間は神待宮従事者の回復事業が既に完了している事もあり、元巫女たちが呼ばれてジーナ(巫女)たちの指導で各種運動施設を使い、レクリエーションの様に楽しんでいる。

 それはこの世界の為に人生を捧げた女性たちに対する恩返しとして零司も同意推奨して必要な事をジーナ(巫女)クーリス(お付き長)に許可してあった。

リリはやっぱりリリだったw

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