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107.精霊マルキウ4 名前と

今回も開いてくれてありがとうございます。.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.

 うーん。マルキウは私だけの名前の筈だけどこれは人間が付けたのよね。それに名前の意味が解らなかった頃にあの花もマルキウって名前を付けちゃったしまさか同族が生まれるなんて思いもしなかったから人間たちだって精霊はマルキウって思ってる筈だわ。人間にしてみたらあの子達も私と同じ精霊のマルキウになっちゃうのよねぇ……。


 (はぁ……)

 マルキウ姉(仮)は零司の部屋の方を見つめ、疲れた様に息を吐き楓を想う。

 『楓もこんな気持ちだったのかなぁ』

 楓がマルキウやリリたちを受け入れたのは凄い事なのだと今更ながらに思い知らされる。

 自分の気持ちだけで楓や零司を困らせて心配させてしまった事にも反省が必要だ。

 そしてその気持ちとは別に零司と楓から本当に家族として心配されていたんだなと何か心の奥が温かく感じられた。

 そう思うとこんな事くらいで零司を煩わせるのは人々から敬愛される身としては余りに拙い。

 混乱が生じる前に手が打てるのにそれを自分の我が儘だけで放置や放棄するのは恥になるだろう。

 折角零司が良い案を出してくれたのだから今回はそれに乗ろうと思う。


「決めた。レージが言う通りマルキウは種族名にするわ。これなら一番問題が無いと思う」

 後ろで騒ぐリトルシスターズを他所に零司の目の前まで飛び上がると落ち着き確りとした口調で答えた。


「そうか」

 それだけ言うと零司も気を引き締めて姿勢を正す。

「と言う訳で、お前らは今日からマルキウ種族になった。だからマルキウと言えばお前らとあの花の事だ。そしてお前たち五人は一人ずつ別の新たな名前を持たなくてはならない。良いか? 今までマルキウが人々から信頼された偉大な精霊として誰からも信頼され続けた存在なんだから立派な行動と名前を付けろ」

 零司はまるで父親にでもなったかの様に高説を垂れる。

「偉大なんだ、アタシ……」

「そうだな、皆がお前を信頼してるだろ? だから……そうだな、初代マルキウは大精霊と呼ぶ事にしよう」

「お姉ちゃんは大精霊様ね!」

「大精霊お姉ちゃん!」

「うーん、私たちは精霊マルキウ種族?」

「精霊マルキウ種族の大精霊お姉ちゃん様よね!」

 マルキウ姉(仮)は嬉しいのか恥ずかしいのか顔が赤くなる。


「大精霊……」

 両手を頬っぺたに充てて東の明るい空を見上げるマルキウ姉(仮)。

「だな。後はお前の固有名を決めればその名と共にそう呼ばれる様になるだろうな。いや、そう呼ばれる様に俺が周知するぞ」

「あはは…… レージ、ありがとう」

 マルキウはそう言って零司の横で光輝く。

「大好きよ」

 人間大になったマルキウは椅子に座る零司の横から抱き着いて唇を重ねる。

 零司はマルキウの気持ちも楓が受け入れて欲しいと言っていたのでマルキウが望むままに優しく抱いてやった。



「ふふ、マルキウめ、やっとキス出来たのか」

 暗い部屋の窓に頬を貼り着かせてバルコニーの様子を見ていたリリは悔しそうに苦し紛れに言い放つ。

 リリも零司とキスをした。

 だがあれはキスと言うよりは対象を救う為の人工呼吸に近い。

 善意はあっても好意は全く含まれていなかったのだ。

「くふぅっ……」

 頬をガラスに貼り着けて涙を流し悔しがっていても心底では何故かマルキウを祝福して羨ましいリリだった。



 暫く零司に抱き着いたまま唇を重ね続けていたマルキウはゆっくりと余韻を味わう様に離れると瞑っていた目を開けて笑顔を見せる。

「ありがとう、レージ」

 マルキウの優しいその眼差しに零司も眼尻を下げて答える。

「ああ、これからもよろしくな、大精霊様」

 マルキウは楽しそうにクスクスと笑う。


 それを一部始終目撃していたリトルシスターズは固まった様に黙って見ていたが二人の行為が終わったのを認識すると途端に喋り出す。

「お姉ちゃんとだけ?」

「私もしたい!」

「私も!」

「一人で五人分はダメ! 私たちにもちょうだい!」

 独立した意思を持っているのを意識する様になった彼女たちは自分の記憶にその行為が含まれていない事に不満を漏らす。


「あー、さっきの言わない方が良かったか?」

 後悔しているのかしていないのか、零司がポロッと溢す。

「いーえ、あれは正しいわ。そして今回のこれはこの子たちにとっての最初の人生の勉強ね!」

 いつものマルキウの口調に戻っていた。

「あなたたち、これは私の特権なの! だから勝手に真似しちゃダメよ! いーわね?」

「「「「お姉ちゃんだけズルーい!」」」」

「ズルくないわよ!」



零司(ご主人)様、おはようございます」

 西の空にもスラゴーの天幕が見えなくなってすっかり明るくなった頃、サーラが勉強を終えて零司の前に現れ綺麗なお辞儀をして見せる。

 零司はバルコニーのテーブル席に座って昨日やっておく筈だった湖の環境整備シミュレーションをバックグランドで実行しつつ、ディスプレイを表示して色々と売れ筋が変化しているモールの商品などと併せて冬季講習の予定を調整していた。

 それを横に押しやりサーラに顔を向けて優しく応える。

「おはようサーラ」

「おはよう、いつも早いわね」

「「「「おはよー」」」」


零司(ご主人)様、マルキウ様が……」

「ああ、解ってる。サーラには先に紹介しておこう」

 その言葉にマルキウたち全員が事前に練習でもしたかの様に一斉にサーラに向かって仁王立ちしているが勿論そんな面倒な練習をマルキウたちがする筈も無い。

「練習って訳でも無いが初めての自己紹介をして貰おうか。右から順番でやってみろ。それにこの話は国中に正式に発表するからサーラにはその準備をして欲しい」

 マルキウ全員が自己紹介する前から『ふふん』と得意気だ。


「最初はもちろんアタシからよね。アタシは最初の精霊、精霊マルキウ種族の長、大精霊マルキウスよ! 今まで通り宜しく頼むわね!」

「マルキウ種族の大精霊ですか」

「昨日まで精霊はアタシだけだったんだから当然でしょ?」

「分かりました。それでは以後大精霊マルキウス様、またはマルキウス様とお呼びすればよろしいでしょうか?」

「そーね、それで良いわ!」



「ありがとうございます。皆様のお名前を確かに拝聴致しました。零司(ご主人)様、発表はどの様に為さるのでしょうか?」

「まずは王族と領主のシエルに伝えてからだな。その後に各街に写真付きで通知と、ついでに冬季講習会の内容に追加があるのも伝えるか」

「サーラ、この子たちは貴方よりも格下なんだから気を使う必要は無いわ。それにサーラなら信頼出来るしこの子たちを好きに使って良いわよ。その方が良い勉強にもなるしね」

「だがまあ最初はお前が教えないとな」

「ぐふっ」

「精霊じゃないと分からない事もあるだろ」

「た、確かにそーよね」

「その後でならサーラに付けても良いな、大体一年くらいか。まあサーラとお前たちがそれで良いなら、だが」

「サーラ知ってるわ。良い子よね」

「「「「ねー」」」」

「アンタたち、サーラの方が上なんだからね。言う事はきちんと聞きなさいよ」

「「「「はーい」」」」


「それじゃマルキウは、いやマルキウスは妹たちを連れて館内の案内でもしててくれ。朝食で会おう。サーラは俺と一緒に来い」

「ちょっ、レージ!」

「何だ?」

「一人にしないでよ!」

「それなら一緒に来るか?」

「当たり前じゃない! 行くわよアンタたち」

「「「「はーい!」」」」

「わかった。それじゃその前に少し楓に会ってくるから待っててくれ。お前を連れ帰ったのを報告しないとな」



「ん…… おかえり零司。んっ、ん」

 今は二人の部屋になった中庭の小屋で眠っていた楓を口づけで目覚めさせる。

 零司の首に腕を回してキスをねだる楓の背中に手を回して引き寄せる零司も柔らかな唇と楓の滑らかな素肌に手を滑らせいつものように楽しんでお互いの気持ちを確かめ合う。

 楓はいつものように受け入れる準備が出来ているが今日は零司が服を着たままでそのつもりが無いのを悟るとゆっくりと唇を離し、ギュッと抱き寄せ薄い胸に零司を抱く。


「それで、マルキウさんはどうしたの?」

「それなんだがモゴ、少し力を緩めないか?」

「嫌よ。零司は私のものなんだから、あの子達と関係を持つ前に確りと私の全てを愛して貰わないとね」

「それなら安心しろ。俺はお前のものだしお前は俺のものだ。それはずっと変わらないぞ」

「ありがと、嬉しいわ私の零司」

 楓は確認が取れたので少し力を緩める。


「それでマルキウの事なんだが、増えたぞ」

 予想外の答えに固まる楓。

「おい、聞いてるか?」

「え、ええ、聞いてるわ」

 楓は零司を解放して毛布を体に巻いてから目を合わせて話を続ける。

「どういう事?」



 バルコニーに戻った零司は直ぐに移動を告げる。

 マルキウスは零司の頭の上ではなく胸元に潜り込み、リトルシスターズは上着のポケットへと潜り込んだ。

『楓の匂いがする……』

 マルキウスはこの短時間で零司と楓が抱き合ったのを知る。

 それを見ているサーラはマルキウスを羨ましく思うが自分だって優しく抱き締められた事を思い出して心を穏やかに保っていた。


「転移するぞ」

 次の瞬間、零司たちは学校の校庭よりもずっと広く平らに均された土地に居た。

 目の前には白亜の館よりも大きな真新しい木造の建物が見える。

 そしてこの世界ではまだ普及率が極めて低い大きなガラス窓が目立っていた。

 

「ここはどこなの?」

 襟首から乗り出して周りを見るマルキウスと零司に目線を向けるサーラ。

「ここは冬季講習会の宿泊施設だ。まあ用事があるのはここじゃなくて後ろなんだがな」

 零司の言葉に後ろを向くサーラ。

 続いてゆっくりと振り返った零司たちの目の前にはゴルフ場で使われる電動カートの様な乗り物とギャロも使っていた人が引くサイズの荷車が一台ずつ置いてあった。

 リトルシスターズは変わった物を見つけるとポケットを飛び出してカートに近付き突ついたりシートに座ってみたりと色々と見て回っている。


「これは椅子とハンドルがあるのでリムジンでしょうか?」

「惜しいな。これはカートと言って小さな自動車だな」

「小さな自動車……自動車とは何でしょうか?」

「自動車とは漢字でこう書く」

 零司は空中を指でなぞり、光で『自動車』の文字を作り出す。

「自分で動く車、でしょうか」

「ほぼ正解だ。元々英語のオートモービルが由来だから自分で動く車で良いとは思うが直訳だと微妙な違和感があるのは確かだな。動作は馬車と同じで人が操作しなければならないが場合によっては馬車の方が優秀だったりする。馬車と自動車の主な違いは動力が馬か自前の動力かの違いしかない。それと『俺のリムジン』は厳密には自動車では無く動力を持たないただの荷車だ。ただし人が乗る『乗用車』には属しているがな」

「長いわよ!!」


 サーラにとってはハンドルが付いているのは三台のリムジンだけだったので、ハンドルが付いている乗り物とはイコールでリムジンだった。

 しかしここで零司から複雑で知らない分類の説明を受けてかなり混乱している。

 それでも零司から教えて貰った知識をきちんと消化吸収出来る様にと今の話を自分の中で繰り返していた。


「まあそのうち覚えるから一度に覚える必要は無い。とりあえずこれはカートと言ってちょっとした荷運びで使うのを目的としてる乗り物だ。少し乗ってみよう」

 目に前にあるカートはゴルフ場にあるそれと同じく小さな荷台と屋根が付いている小さな車だ。

 零司はカートだけでは荷物を載せきれない時の為にと用意した荷車をカートに接続してから運転席に乗り込みサーラを呼んだ。

 サーラは静かに助手席に座り零司を見る。

 零司は微笑むと出発の合図をした。

「行くぞ」

「はい」


 ゆっくりとアクセルペダルを踏み込むとカートは静かに前進し始める。

 タイヤが地面を転がる僅かな音を立てるだけのところは零司のリムジンと変わらない。

 違いがあるとすればそれはリムジンが快適な居室を提供するのに対し、カートは人と荷物を乗せて移動出来ればそれで良いだけの割り切った造りであり、置く場所を取らない様にコンパクトなサイズなのだ。

 故に座席回りは狭く、普通の馬車と同じく一体式のベンチシートだがその幅は二人が並んで座れるギリギリの幅である。

 サーラはその狭さに夜の勉強と同じく二人だけで密着した様な感覚に零司と一緒に乗るカートを好ましく思う。


 そのあと零司はサーラに操作を教えて簡単な教習を行いながら人サイズになったマルキウスにも運転させたりした。

 妹たちは生まれたばかりのせいなのか大きくなれないらしく姉のマルキウスの肩や頭に乗って一緒に楽しんでいる。

「暇な時にでも乗って操作に馴れておいてくれ。冬季講習で使うし教官役もやって貰いたいからな」

「承知しました」

「良いわよ」


「ねえレージ、まさかこれだけの為に来たんじゃないわよね?」

 マルキウスは朝食までまだかなり時間が余っているのを根拠に良い放つ。

「ああ、今回来たのはカートみたいな近場の足じゃなくて街を行き来する様な自動車を造るのが目的だ」

「それじゃ馬車とかリムジンみたいな物かしら」

「そうなるな」

「だったら最初からリムジンを使えば良いじゃない」

「あれは神じゃないと使えないから駄目だ。あと乗れる人数も少ないからな」

「もしかしてカートみたいに人間に使わせるの?」

「そうだ。ただ今から造るのは非常用の意味合いが強いがな」

「非常用ですか?」

「今は転移門で繋げてあるから良いが、もしも門が機能しなくなったら館から街やモールへ移動するのが徒歩になってしまうからな」

「つまり白亜の館に居る人間の為に造るのね?」

「あと湖管理など用途に合わせて幾つか用意する」

「ふーん」

「早速やってみるか」

クルマは楽しい。車中泊しながら三千キロを走った事もありますが一般道だけでは五日くらいかかった。五日かかった原因は初めてのナビの設定で有料道路を含めず信号少な目の二つを選択したらとんでもない山道や裏道に誘導されたこと。観光的にも面白味がないので皆さんは真似しないでくださいねw


更新は遅れ気味ですが気長にお付き合いいただけたらと思います。

それではまた次回まで。

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