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102.甘い新事業

今回も開いてくれてありがとうございます。(人´∀`*)

大変お待たせしましたが何とかアップできました。

そして言い分けはしないと言う言い訳をしてみます。人( ̄ω ̄;)

 零司は計画している新事業についてギャロ宅で相談を始める。

 ギャロとミティの二人にとっては畑仕事が出来ない冬場から春先に割りの良い仕事が出来ると快く受け入れてくれた。

 善は急げと言わんばかりに直ぐに土地確保に向かうと告げるがまだ零歳の娘メープルを一人には出来ないとミティは家に残った。

 外に出た三人は家の裏手になる敷地の北側へ向かう。


「ここから奥に行くと岩場になるので大体奥行き五十、幅は二百くらいでしょうか」

 ギャロに案内された場所は家があった土地よりも若干勾配がきつい傾斜地だったがギャロ宅と同じく南向きで日当たりも良く条件的には悪くなさそうだ。

 それに家の直ぐ裏なので寒い冬でも利便性は良いだろう。


 零司は半径五百メートルを走査(スキャン)して地形情報を取り込みディスプレイを呼び出し表示する。

 そこに映し出されたメッシュで表示される地形画像を見たギャロはそれがこの周辺の土地だと分かりじっと見つめた。

 見つめるのはギャロだけでなく零司とマルキウも同じではあるが自宅を含むこの周辺の俯瞰表示映像は明るい事もあり、より()き付けられている。


 ディスプレイに映る映像はゆっくりと回り、地形だけでなく木や転がっている比較的大きな石も表示されていた。

「ここなら大丈夫だな。実験を兼ねてシールドを張るぞ」

 ギャロには言葉の意味は解らなかったが零司が言っているので大丈夫と素直に承諾する。

 シールドはギャロが指定した範囲と縦に五十メートルの規模で展開した。

 これは今回が初めてになる四角形のシールドだ。

 今までは丸く半球状のいわゆるドーム型だったが今回は土地の制約から四角になっている。


「さて本題だ。とりあえず整地するぞ」

 用地に生えている木は畑を造った時の様にきれいに抜かれ、次の瞬間には枝が落ち根っこ付近も切り落とされた状態で丸太が積み上がっていた。

 次に土が四角く持ち上がると(ふるい)に掛けたように大きな石や草などが宙に取り残されて元の地面にはふんわりと盛り上がった状態の良い土の山が出来上がる。

 浮いたままの余分な物は抜かれた木と共に一旦無限倉庫に取り込んで自動分類しておく。

 柔らかくなり過ぎた土を小さな振動を与えつつ上から圧迫してこのあと植える木に丁度良い固さに調整した。

 それから十メートル置きに苗木を植える穴を掘ったその数は百である。


 更にこの横長の土地は初めて来た日の翌日朝にダリルが馬の手入れの為にやって来た小川が流れていたのでそれをきちんと元通りにすると同時に新事業用地の少し下に小さな子供用プールサイズの水溜まりを作った。

 この水溜まりは常に新しい水が流れているので採れた野菜を冷やしておいたり捕まえた魚の生け簀としても使えるし畑に水を撒く時にも汲み易い便利なものだ。

 ただし生まれたばかりの子供が居るので将来を見越して木造の塀で囲んでおいた。


「よし、下準備は出来たな。そしてさっき話した木は……これだ」

 零司は無限倉庫から苗木と呼ぶには大きな木を取り出して浮かせている。

 その木は移植する前提で枝打ちされており、土が付いた根っこと幹しかない状態で五メートルくらいある。

 枝打ちされた切り口は墨が塗られて雑菌の侵入と腐食を防いでいる。


「大きいですね」

 そこにあったのはメープルシロップを生産するのに最も適していると言われている日本名ではサトウカエデと呼ばれる木である。

 カナダの国旗に描かれたあの葉っぱの木だ。


 目の前の穴に最初の一本を植えて状態を確認すると次々と他の穴にも植えて百本の木は一分掛からずに植え終わる。

 しかし作業はまだ終わってはいない。

 木はまだ根を張っていないので強風などで倒れない様に支柱を取り付け十分な水を与えた。


「仕上げだ。少し後ろを向いててくれ」

 二人は言われた通り後ろを向いたが零司の頭の上に居るマルキウは興味本意で目線だけ後ろに向けて木がどうなるのかこっそりと見ている。

 零司は四角いシールドの中だけ時間を十年ほど一気に進めてその間の日照や気象を再現したのだがその光量は凄まじかった。


「きゃぁー!!」

 両手で目を押さえ転がり落ちたマルキウに零司はこのタイミングで叫ぶマルキウが何をしていたのか直ぐに見当を付けながら優しく掴まえて即座に回復を掛けた。

 しかし突然の強烈な光による失明と脳への過大な負荷にショック状態のマルキウは零司の手の中で既に無くなった筈の痛み(幻痛)を感じて身悶えしている。


「マルキウ大丈夫だ。もう治ってるぞ」

「ホ、ホントに?」

 マルキウには似合わない泣き声で聞き返した。

「ああ、安心しろ、大丈夫だ」

 静かになったマルキウは大量に涙を流していたその目を開けて零司を見上げる。

 痛みは無く元通りに見える様になったマルキウはまた涙を流して零司の顔に抱き着いて泣き出した。


「レージのばかぁ!」

 泣きながら何度も叫ぶマルキウに零司はただ謝った。



「でも直ぐ治って良かったですよね」

「そーだけど!」

「ちゃんと後ろを向いてろって言っただろ?」

「言ったけど!」

 マルキウは零司の言う事を聞かなかった事に対して反省はしているものの、まさかあんなに酷い目に遭うとは思いもしなかったと泣いてしまったのはバツが悪くて恥ずかしい。

 顔を真っ赤にしながらもある事を思い付くと顔から離れて零司の目の前に飛ぶ。


「レージがちゃんと危ないって言わなかったのが悪いんだからね! 謝罪として今日は私と寝なさいよね!」

「何言ってんだ、まったく」

 零司の言葉に更に反発するマルキウだが段々と自分でも何を言ってるのか分からなくなってきた。

「だって前に抱いてやるって言ったじゃない! あれだってまだして貰って無いんだからね! 今日は、わ・た・し、とじゃないと許さないんだから!」

「それは抱っこの抱くだろ?」

「それだけじゃヤなのっ!」

 また涙目になってプルプルと震えていたマルキウは何処かに飛んで行ってしまった。

 

 ギャロも零司が白亜の館の住人たちと婚約したと言う話は学校の同級生や遊びに来た楓がミティと話をしていたので結構詳しく知っていた事もあり然程驚いてはいないが、マルキウの強い押しに端から見ている身であっても零司はこれから大変だなと感じていた。

「心中お察しします」

「心配掛けて済まないな。それじゃ続きだ」

 零司たちは詳しい事業内容を話し合い、来年春先には実際の作業と試験販売を始める予定を確認した後にシールドを解除してその場で解散した。


「お帰りなさい」

 居間で手仕事をしていたミティは玄関扉の開く音に立ち上がりギャロを迎えに来た。

「ただいまミティ」

 この世界では珍しい和風の玄関で腰を下ろして靴を脱いでいる時に後ろから声を掛けられ笑顔で応えるギャロは靴を脱ぎ終ると少し興奮しながら居間へと移動する。


「それでどうだったの?」

 リビングのソファーに座ったギャロにお茶を出してその隣に座るミティは嬉しそうなギャロを見て零司との話しが上手く行ったのは判っているので詳細に期待していた。

「うん、凄く良い話だったよ」

 早く話したいのを抑えつつ笑顔で勿体振るギャロにミティは詰め寄る。


「大体雪解けが始まる頃に仕事を始めるって言ってたよ。収入はかなりの額になるだろうから将来的にはお店だって建てられるだろうって」

 ミティは『お店が建つ』という言葉にモールを想像してしまいそんな大事業を自分達で出来るのかと少し意識が飛びそうになる。

「お店って言っても普通の小さな店舗だからね?」

 言われてみれば自分達でモールの様な大商会規模の店など出来る訳も無いと大き過ぎた夢に少し照れるとミティは逆に実感が湧いて来た。


「明日一緒に見に行こうね、きっと驚くよ」

「そんなに?」

「うん、それにね、その木の名前なんだけど零司さんの世界ではメープルって呼ばれてるんだって」

 メープル、それは楓に付けて貰った娘の名前でもある。

 二人は零司と楓のプレゼントと出会いに感謝して身を寄せ合い、その夜はかなり激しかったらしい。

 後日、ミティはその夜のギャロは凄かったと遊びに来た楓に語っている。




 零司は飛んで行ったマルキウを捜索すると直ぐに見つけた。

 場所は街からかなり離れた山奥を真っ直ぐ進んでいる。

 マルキウが進む先に何かあるのか気になった零司はずっと以前にこの地球をスキャンしたデータを元に作成した地図を表示して進行方向に延長線を伸ばすとある場所に到達するのが判った。

 しかし単に通過するだけの可能性を考えて更に先に伸ばすが『何か』に該当するものは見当たらない。



 『やだ……もうあんなのは嫌だ!』

 小さな体の小さな目から溢れる涙は止まらない。

 『あそこに帰ろう……そうすればきっと忘れられる。そうしたらまた笑顔で……会えるかな……』


 マルキウはこんな感情を持つのは初めてだった。

 押し留める事の出来ないこの感情が一体何なのかは分からないが今のままでは零司の前に戻れなかった。

 戻るだけなら出来たとしても、そこからどうして良いのかが分からないし以前ならこんな事でこれほど苦しい思いをするなど考えもつかなかったのだから。

 胸が締め付けられる様に痛みを感じ苦しくて堪らない。

 大声を張り上げたい程に込み上げて来るこの辛い感情は一体なんなのだろうか。


 零司はマルキウを心配しているが落ち着くまでそっとしておこうと思い白亜の館へと帰還した。



「あら? お帰りなさい」

 バルコニーで歓談していた楓と王妃たちが零司に気付いて声を掛けたりお辞儀をしている。

 その中で一人、ネコだけが立ち上がって零司に抱き着くと幸せ満面の笑みで零司に甘えている。

「ただいま。こっちは何もなかったか?」

 ネコを撫でながら何気に不安を掻き立てる言葉を言い放つ。

「さっきの光の事かしら? ネコから零司の居場所を聞いたからあんまり気にしてなかったけど何をしてたの?」

「さっきのはギャロの所で新しい事業を始めたその影響だな。あの光は今回だけだから気にしなくて良い」

「何を始めたのか聞かせて貰っても良いかしら?」

「そうだな……ギャロにはメープルシロップを製造して貰う事になった」


 楓はメープルシロップとあの光がどう繋がるのか不思議に思いながらサトウキビの次と考えればメープルシロップも『あり』だと思う。

「メープルシロップね……どれくらい採れそうなの?」

「木を百本植えて来たから予想通りなら年間百リットル辺りだろ」

「そんなに!?」

「とりあえず来年春にきちんと出来るか試してからでないと判らないな」

 二人の会話に周りの者は取り残されていた。


「あ、ごめんなさい。メープルシロップっていうのは樹液だけを材料に作る香りの良いハチミツみたいな物ですね」

「出来るのは来年だが上手く行ったら試供品としてそちらにも贈りましょう」

 王妃トリーノはお礼を述べ『来年がとても楽しみだわ』と上品に微笑んでいるが零司たちを見る第二王女ルーミナルの目は輝き、来年が待ち遠しいのが会話せずともそれが一目で判る。


「それと漁場になる湖を造ろうと思うんだが何か意見はあるか?」

 実験場とは異なる現地の人々が生活に利用出来る湖だ。


「規模はどれくらいなの?」

「最初はこの館の敷地くらいで魚が増えたら少しずつ拡げて最終的に果樹園の二倍以上を予定してる」

「なるほど……」

 楓は腕を組んで夜空を見上げ完成後のイメージを思い浮かべる。

 それは観光地であり避暑地であった。


「湖畔に別荘って言うのも良いわね…(二人だけの)…ふふっ」

 最後の小さな言葉ににやける楓の声を聞き逃さなかったリリは猛然と反発する。

「それは絶対にダメ! 不許可!」

 睨み合う二人に零司が介入する。

「当面漁師の小屋しか建てないぞ」

 リリの肩を持つ様な零司の言葉にリリは勢い付き、楓は裏切られたと零司を見て呆然とした。

「私なら小屋でも大丈夫。魔王様さえ居てくれたら何処でも良い」

 ふんむっ! とリリは楓を見返す。

 二人が争っているだけで特に意見も無いので零司は話を終わらせた。

 つもりだった。


「魔王零司様、もし宜しければ湖をつくる時に見学させて頂けませんか?」

 第二王女ルーミナルから要望が出た。


「それは構わないが。ふむ、どうせなら今から行くか。準備する」

 零司はバルコニーの目の前にある花壇中央の通路を抜けた先に繋がる異世界転移門格納庫の扉をその場で開くと真っ白な光が溢れた。

 その中に駐機してあったシュガードーナツ号を呼び寄せてバルコニーの手摺の高さに合わせてピタリと停める。

 入り口から更にバルコニーの床面まで階段を伸ばして乗機可能になった。


 シュガードーナツ号に驚いて声が出ない王妃に楓が横に移動すると、どうぞご一緒にと手を差し出す。

 ルールミルは妹のルーミナルの手を取り先にシュガードーナツ号へと乗り込んでいた。

 シュガードーナツ号は床の中心部は透明なのでルールミルがそこを進んだ時にルーミナルがしがみ着いて止めようとしたりと僅かなトラブルもあったがバルコニーに居た全員が無事にシュガードーナツ号へ乗り込むと入り口が閉じてスラゴーの天幕が靡く夜空へと舞い上がった。

ここのところ毎回夜が激しい気がするw

それにマルキウはどうなるんだろうか。


こんなに思い付くまま次々と予定を追加してる作者は大丈夫だろうか?

自分の事ながら零司たちが家に帰るまで描ききれるのかとかちょっと不安になってます。

 (;゜∇゜)


修正2021/05/03 シュガードーナツ号の名前がホワイトドーナツ号になってました。この後も160話付近まで気付いてなかったのでこれから修正です。ぐはぁっ

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