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結果報告

「拍子抜けしたな」

録音したデータをはやとんと大樹君に聞かせた感想だ。帰宅した直後に玄関で大樹君に問い詰められて僕の部屋で落ち着かせた。

「拍子抜けしたのはこっちの方だ。胸部に鉄板仕込んで、訴訟する可能性も考えて録音までしたのに」

床に座る2人を椅子から見下ろす。大樹君はなにか考え込んでいた。銀髪が大樹君のことを知っていたからだろう。

「…そのリーダー格っぽい銀髪、大樹君知ってる?」

床に腰を下ろしてフッと首を傾げる。大樹君はふるふると首を横に振った。

「音も遠いし、声ではちょっとわからん。知り合いに銀髪なんかぎょうさんおるし、直接見たわけじゃないけん」

そうだな、とはやとんも同意した。名前でも聞いておけばよかったか、失敗したな。

「…まあ、こういう取引をしたんだし、しばらく絡んでこなければもうコイツらは放置していいんじゃないか」

はやとんはそう言いながら大樹君と立ち上がった。もう話は終わりということだろう。

「そういえば、心葉さんが心配していたよ。朝っぱらから楼さんの部屋のドアを爆笑しながら押さえていたから気が触れたんじゃないかって」

ああ、と気のない返事をした。もうなんだか疲れて必要以上に言葉を発する気が起きない。2人が出ていった部屋は痛いほど静かだ。

「…暗殺者・紫陽花、ねぇ」

呟いて自嘲気味に笑った。まずったなぁ、自分が大樹君の2つ名ほど有名でダサいのを持ってしまうとは。

「まあ、それのおかげで今回の件はスムーズに進んだんだよねぇ?」

スマホに問いかけた。電源ボタンを押すと、ギガキャスさんとの通話画面が表示される。それを耳にあてた。

「…そうだね、紫苑君の二つ名はこちらでもよく聞くよ。だからこそ今回の作戦は確信しか持っていなかったね」

朝にギガキャスさんから来たメールを思い出す。誘き出す種を撒いた事と行くべき場所と時間、会話さえ間違わなければすぐに終わるという事が端的に書いてあったと記憶している。

「紫苑君が選択肢を間違うはずがないからね。前から聡明な子だったし」

やめてくれ、とだけ言った。どれだけ計画が確実なものだとしても、やはり神経を使うことに違いはない。

「まあ今日は紫苑君も疲れてるだろうし、ゆっくり休みなよ」

すっとスマホを耳から離した。ため息を必死に押しとどめる。

「君に言われなくても勿論そうするよ。じゃあまた」

返事を待たずに通話を切った。重い腰を持ち上げて部屋の大きな窓からベランダに出る。近くには二階建ての一軒家が多い住宅地、ウチも二階建てなので道路の向かいの家しか見えない。星とか夜景とかが綺麗に見えたらさぞかし心も落ち着いたろうに。

「…ん、そうだった」

ポッケに手を突っ込んで思い出した。今日はまだ外面用のカッコのままだ。フワフワなスカートもヒラヒラしたトップスも、どうも慣れない。ベッドの上に投げておいたはずの部屋着を取りに室内へ戻る、が、布団をどかしてみてもベッドの横を覗いてみても全く見つからない。お母さんに洗濯されたのだろうか。

「めんどくさい事になりそうだねぇ」

ボーッと呟いた。とりあえずもう3時だし、顔洗って着替えて寝よう。

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