心の片隅で
悲鳴っぽい音と共におはようございます。みんなのアイドル虫ですよ。
はい。甲高い悲鳴っぽい音で起きました。なんだと思ったら助けた人間さんです。めっちゃこっち見てます。起き上がると更に悲鳴。近付くとイヤイヤと首を振りながら後ずさる。
まぁそりゃそうなりますよね。こんなでかい虫を見たらそうなりますよね。しかも逃げられそうにないし。でもね、流石にね、凹みます。。。
気を取り直してとりあえず近付いていきます。泣きそうになるが知ったこっちゃ無いです。
怪我してるんだからまともに歩けないだろうしここに居つかれても困るのでとっとと治してもらって帰ってもらいましょう。そんなわけで食べると力が湧いてくる不思議果実を角に刺して目の前にもっていきます。
近付いていった段階で目を瞑っていた人間さんは何も起きないことに疑問に思ったのか恐る恐ると目を開ける。すると目の前には不思議果実。
目をこれでもかと開いて果実を凝視してます。
この体勢辛いんだからはよとって食べろや。ずいっと差し出すと困惑しながらなにやら喋り出しました。
ふむ。何言ってるのか全然解らん。何語だ。発音すらわからん。キィーンとした音がなんとなく鳴ってるだけのものにしか聴き取れん。
あぁ当たり前か。音を正確に捉える器官が俺の身体に存在していないから。もしやとは思ってたけどやっぱ言語は理解できませんか。いよいよをもって人間辞めてますか。・・・。
どっか希望的観測ではあるものの、心のどこかでは期待してたのかな。「俺」はまだ人間だと。
柄にもなく少しばかりセンチメンタルな気分になる。いかんいかん、切り替えよう切り替えよう。落ち込んでいたって何も状況が解決するわけじゃないんだから。
目の前で起きてる今を一個一個解決していかなくては。とりあえずはこの心の痛みをせめてごまかせるように目の前の人間さんを救いましょう。偽善であろうがなんであろうが、そうじゃなきゃやってられんだろう。うむ。よし。
すると通じたのかそろりそろりと手を伸ばして果実を手に取る人間さん。また何やら言ってるが、解らんのでじっと見つめる。言葉が通じないのが解ったのか口元まで持っていき確認するようにこちらを見るので頷いてみる。
すると驚いたのか目を見開いてる。そのまま首を傾げながら果実を咀嚼する人間さん。また更に目を見開いて何やら叫んでいる。
とりあえず知らん振りして果実をもう一個角に突き刺し目の前まで持っていき落としていく。人間さんはどうしていいのかわからず困惑した顔のままこちらを見る。
まぁ言わんとすることは理解できるがね。とりあえず食べなさいや。じゃなきゃコレ治せないでしょう。と思いつつ怪我の部分を優しくぺちぺちする。
すると伝わったのかこちらに頭を下げる。そのまま果実を僅かに震えながら頬張っていく。よしよし、ちゃんと食べてくれてるな。
振り返って洞窟の入り口近くまで歩き腰を下ろして目を閉じる。洞窟のベッド付近からはすすり泣く音が響いていた。
まるで誰かの心を代弁しているかのように。