新しい私デビュー!
かゆい・・・・なんだか無性に背中がかゆい・・・
深い、でもどこか落ち着くまどろみの中で俺が思ったのは背中がかゆいってことだ
駄目だ我慢できん。背中がかゆい!・・ウガァー!!
バリバリって音と水っぽい音が同時になると共にまぶしい景色が視界に飛び込んできた。
何が起きた。徐々に視界が戻ってくる・・・ぅぅむ。
視界が高い。妙に高い。後広いぞ。いったいどうなったんだ。俺の身体は。
ピアッシングヴァイパービートル
ランク=D
種別=鞘翅目鋭角亜目甲殻虫類
ピアッシングビートルの変異種。鋭い角に加えて大きなはさみが特徴的な甲殻虫。サイズはグレイウルフ並みにあり、スピード、パワー共に原種の3倍以上はある。群れることがなく非常に珍しい種類ではあるが見かけることが無いわけではない。
虫とはいえとても獰猛な上、雑食の為、魔物に分類されることもしばしば。
ふぁ?
なんか選んだのと違うのになってる・・・えぇ~・・・。
・・・うん、考えたところで解決するわけでもなし。どうせ知識の無い俺には解ったところで意味も無いしな。さくっと切り替えて次にいこう。そうしよう。
どうやら俺は大きくなったみたいです。体格的に言うと元の何倍だこれ?10倍?とりあえずその辺を歩いてるワンちゃんと同じ位には大きくなったようです。自慢の角とはさみも体格に合わせてかなり変わったというかより鋭くなったというか・・・う~む。これもう虫って言うか、魔物じゃね?
おぉっと、いかんいかん。無駄に考えてしまうのは俺の悪い癖だな。切り替え切り替え!
・・・落ち着いてきたら腹が減ったな。蜜でも吸うか。チラッ、え~と、近くに大き目の木はあったっけ?いや、まてよ?あったとしても足りるのか?バクッ、大体こんなにムシャ、大きな身体でムシャ、ゴリッ、ボキッ、樹液だけでジュルジュル、過ごせるのか?ゴックン。
うまいっ!!
まって、ちがう!!
俺は何を食っている!!!!
目を背けたくなる現実ってあるじゃん?例えば自分がこんなにも野生的な性格をしていたのか!とかさ、甘いものが大好きなはずなのに実はゲテモノ好きだった自分・・・とか・・さ。
はい、ミーのことです。
どういうわけかそこにお陀仏していたカメレオンさんをですね・・・はい・・・食してしまいました。
これが結構な美味でしてね?濃厚な肉汁と共に深い味わいが出てくる骨。プリッとした食感とコシのある歯応えがマッチしているんですよ。えぇ。どうなっちゃったんでしょう、私の舌。気がついたら食べてました。よほどお腹が空いていたのでしょうか・・・
まぁ今さら味付けがどうとか選り好みするつもりはないんですけど無意識で食べるとは思わなんだ・・・。
・・・よし、心の整理終了。お腹も若干膨れたことだし行動しよう。この身体だと冒険者とかに見つかったらあっという間に討伐されそうだし。どこか身を隠せるねぐらを考えなくては。
ん~、自分で作るか、あるもので代用するか・・・後者だな。このお手手で本格的な家が作れる訳が無いしな。木とかを簡単に組み立てるぐらいは出来るだろうが。
と、なるとちょっこらお散歩しますかね。新しい身体の試運転も兼ねてお空を散策してみよう。ついでにこの森の全容も知れよう。
ということで、ぶぃ~んとな。
お、お、おぉ・・・とと。結構飛ぶのってむつかしい・・・身体が右に左にぶれる・・・いや、・・お、お。
なれ、てきたか・・な?
よしよし。安定してきたぞ。流石に自分の体だ。案外簡単に慣れるもんだな。よし、それではちょっとお空の上のほうまで行ってみましょう。
・・・・・お・・おぉ・・・・・・・絶景・・だ・・・