空から眺める風景
ふと背中をつつかれる感触がした。虫さんだった。背中をつんつんと突いてくる。歩く事を促されてる気がするので立ち上がって歩いてみる・・・。すると後ろからちょこちょことついてくる。
ほんと、いったいこの生き物はなんなんでしょう・・・。外を促されたので洞窟の前の広場っぽい所にでる。すると虫さんはその足で私を指?差す。・・・ん・・?
そしてどこかの方向を見ながらまた指?差す。
・・・んん?
また同じように私、違う方向、私、違う方向と何度も差している。
もしかして帰れっていってるのかな・・・。あぁ、そうっぽいなぁ。そうだとしたら無理だ・・・。
帰りたい、けど距離も、場所もわからない状態でここから出て行くのは無理だ・・・。
「帰れって事なのかな?・・・甘えちゃうようで申し訳ないんだけど、場所も街までの距離もわからない状態で私は帰れないよ・・・。せめて方角でも解ればいいんだけど・・・」
虫さんは首をかしげている。うぅ・・流石に言葉まではわからないか・・・。
なんとか身振り手振りを交えてみると虫さんは得心が行ったとばかりにちょこっと立ち上がって胸の付近を前足で叩く。
おれにませろ!
そう言ってる様に聞こえてしまった。なんて人間くさいんだろう。そしてなんて
頼もしいんだろう。
ふと気がつくと虫さんが背中にくっ付いた。
・・・・・・・・正直嫌な予感しかしない・・・。
「あ、あの~・・・む、虫さん・・?」
問いかけた瞬間に虫さんは羽を広げて羽ばたきました。そりゃあもう一瞬で上空までつれさられました。
「うきゃぁぁぁぁ!!ちょ、まって!!やめて虫さんっっ!!!いやぁぁぁぁ」
じたばたともがくと虫さんは少し降ろしてくれました。ホッとしたつかの間、物凄い速度で上空へと羽ばたかれました
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・」
私の悲鳴が木霊して、辺りを静寂に包みました。少しするとブゥゥゥゥゥンという虫さんの羽音と肌寒い空気が辺りに広がっていました。私は怖くて目を瞑っていたのですがおそるそる目を開けるととんでもない高さまで上がってるのに気づきました。
怖すぎてちょっとちびっちゃいそうです。
「あわわわわわ・・・・・・・・わ?」
震える事しか出来なかったのですが、少しずつ降りていく虫さんがふと一定の方角で止まりました。解ってしまいました。虫さんが何を見せたかったのか。
ミディエール。私が住む街だ。それが、見えた。絶望するほど、遠く、ない。
「あ、ああ、・・・」
私は街を見て何も言えなくなってしまいました。驚いた私は虫さんを思わず見てしまった。
すると虫さんはゆっくりと降りてくれました。すとんっと着地した私は思わず虫さんを見てたずねてしまいました。
「街が・・・街、が見え、ました。・・・ヒック・・ウック・・・つ、連れてって・・・くれるの?」
私は涙声になってたと思います。それほど今まで抑えてたものが溢れてきた気分でした。
「帰してくれるの?・・・わた、わたし、かえれる・・・の?」
虫さんは近くにあった木の枝を持って近くの木まで運び下ろす。
今度は私をそっと優しく掴み、近くの石に運んでみせました。
私はそれが何を意味するのか理解してしまいました。この虫さんは・・・なんて・・・。
堪え切れそうにないぐらい涙が瞼に貯まっていくのが解ります。あぁ・・・・あぁ!!
ドサッという音が私の足元で鳴りました。
それは私の荷物でした。落としたと思った、無くしたと思った荷物でした。
「かえか、かえしてくれ、るの?わたしを?あ、あ、・・・うわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁああん!!!!!」
人目もはばからないほど大泣きをしながら私は虫さんに抱きついてしまってました。