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そんなムシの良い話  作者: フロムディ
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心に刻む優しさを


多分私はすごく驚いたのだろう。物凄く、はしたないぐらいに口を開いてたと思う。


すると虫は更にもう一個ネクタルを持ってきて私の近くに落としました。

・・・な、なんで私に果実を持ってくるんだろう・・・。

虫は固まってた私を見て何を思ったのか、私の足を角で叩いてきました。

ぺしぺしと。優しげに。怪我の近くを。


その意味を理解するのに何秒かかったのでしょうか。私はまた驚いて虫を見ました。


するとまたその虫は頷く動作をしました。


治せ。食べて、治せ。そういう風にいってる気がした。



その後の事はあまり覚えていません。確か話しかけるように何かつぶやいてたと思います。誰に、何を言ってたのかは解りません。でも、泣きながら私はネクタルをほおばっていました。何も言わずというか、なにもせず、ただ黙って背中を見せた虫さんの優しさに打たれながら。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



あれからいくばくかの日が経ちました。虫さんは動けない私に食べ物を何度も持ってきました。


・・・どう考えても意思があり、私を気遣っています。いったいなんなのでしょうこの生き物は。時折見せる動作はなんとなく人っぽいですし。落ち着いて見てみると段々愛嬌があるようにも見えてきました。・・・なんだか毒されてるような気が・・・。


ま、まぁ悪いことではないです・・・よね?あ、それでもこの虫さんが魔物だと改めて認識する事があります。それは果物だけではなく肉も持ってきたのです。野鳥とか鹿とかなら解るのですが、ダイア・ウルフにビッグホーンディア、それにボルトニングバードまでも持ってきました・・・。ボルトニングバードは正直見たくありませんでした・・・。

どれもこれもC~Bクラスの魔物じゃないですか・・・。そして私は思いました。最近の森の魔物が少ないのはこの子がいるからなのでは・・・と。


この虫さんはなんとそのまま、しとめた魔物をゴリゴリと音を立てながら食べてるのです。


正直気絶しそうでした。えぇ~・・・なんで虫が動物を食べてるの・・・・。ホ、骨まで食べてるし・・・。心なしかおいしそうにしてるし・・・。い、いやあのですね、生のまま持ってこられても食べれませんよ・・。果物じゃなくてお肉を持ってきてたって事は私を気遣ってくれてる気はするのですが・・・な、生は無理です・・・。


しかたなく初級魔法ではありますが火の魔法を使って焼いてから食べます。


「精霊よ、我が意に沿いて火種を灯せ。『ピュレ・ファイア』」


何とか焼けたダイア・ウルフを食べる。あ、意外においしい・・・。


ん?・・・虫さんがこっちを、というか炎を見てる・・・。魔法が珍しいのかな?


おもむろに虫さんは立ち上がって他の魔物を持ってくる。うぅ、こ、これ以上は食べれませんよ。




虫さんにお世話になって更に数日。足はかなり良くなった。走るのは無理そうだけど、歩くのは問題ないぐらいには回復した。結構深手だったんだけどなぁ・・・。まちがいなくネクタルやダイア・ウルフの肉とかだろうなぁ・・・。


ネクタル、それは瑞々しい果肉に溢れんばかりの果汁がある超高級果実の一つ。高濃度の魔力環境でしか育たず、養殖が出来ない高級な果物だ。効能として滋養強壮は勿論の事食すと魔力が上がるという優れもの。街で買おうとすると金貨20枚は下らない。それをポンポン持ってきてくれた。恐れ多くてあんまり食べれなかったのは内緒だ・・・。


街・・・か。今頃皆どうしてるかなぁ。



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