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そんなムシの良い話  作者: フロムディ
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調査隊


まだ朝靄(あさもや)が周囲を覆っているようなそんな早朝の時間に準備を終えた私は西門で待っていた。程なくしてすぐに同じような格好の人達が歩いてくる。恐らく彼らが今回のメンバーたちだろう。


「ありゃ、結構早めに出たんだがな。待たせちまったか?」


先頭に立つスキンヘッドで大柄ないかにも(・・・・)な男が私にそう声を掛ける。


「そんなことないわ。数秒前に私も着いたばっかだし。おはようございます。私はリリアーノ。そちらは?」


自己紹介をしつつ名前を伺う。いつもながらこの瞬間はちょっとだけ変な緊張感があるわね。


「おぉ、すまんな。俺はモルブ。んで、こっちの連れが」


「ヘンリーだ。よろしくな」


「私はネネ。宜しくね、リリアーノさん」


スキンヘッドの男の人がモルブさん、続いて金色の短い髪の人がヘンリーさん、最後の肩口まで揃えた茶色い綺麗な髪をした女性がネネさんか。女性が居るのは嬉しい事だ。


「はい。それでは早速行きますか?」


「まぁまてまて。すぐ行きたいのは山々なんだがまずは意識合わせとメンバーの適所確認しなきゃ駄目だろう?」


そうだった・・・いけない、いけない。初めて組むパーティーなんだから当たり前の事を忘れていた。逸る気持ちを抑えて私は謝りつつも話しを聴く体制になった。このパーティーのリーダーは私じゃない。モルブさんだ。


「お、大丈夫そうだな。そんじゃまずは意識合わせだな。今回の依頼はセクトア大森林の中部付近までの周辺調査だな。ギルドの話では魔物がほとんど居ないって言うが勿論鵜呑みにしちゃ駄目だ。だから森の入り口付近まで着いたらまずは周囲哨戒から。そのまま並行して隊列を組みつつ森を蛇行しながら中部付近まで行こう。森の入り口から中部付近まで戦闘も含めて大体3日前後を予定している。そのまま帰ってくるのに1日。今日を含めて目的地までの往復を二日と妥当するとそんなもんだろう。探索を3日とするがかなり多めに取ってるからそれより早く終わるかも知れねぇ。それならそれで構わないと俺は思ってる。ここまではいいか?・・・よし。次に・・・」


流石にBランクの冒険者だけあって指示が適切だし、そしてすごく慎重だ。これなら問題なく大丈夫そうだ。




話し合いを終えた私たちは森の調査に入った。最初は凄く慎重かつ大胆に調査をしてたけど、しばらくしてすぐにわかった。本当に魔物が少ない。いつもならこれだけ歩けば10回以上は魔物と遭遇するはずなのに出会ったのは2回。それも1~2匹。これは少ないなんてもんじゃない。なにかある。


その事に気づいてるのはモルブさんと私だけのようだ。


「これはちとおかしいな・・・異常にすくないぞ?」


「そうか?・・・確かに少ないな~とは思うけどそこまで?」


モルブさんの発言にヘンリーさんが疑問を呈するけどそれこそが異常だと思う原因なの。


「はい。異常です。普通ここまで歩いてたら10回じゃ済まない回数の魔物と戦闘があるはずなんですが・・・良く来てる私がそう思うんです。更に言うとそこまでここに来られない方が魔物の地域(・・・・・)少ないかな~(・・・・・・)と思う事自体がそれを証明してます。」


「あ・・・そうか・・・そうだよね・・・あたしたちはどっちかっていうと草原のほうに狩りに出かける事が多いから森林のことはあまり知らないけどここまで出会わないのは確かにおかしいわね」


そう。本来魔物の地域である森林の浅い場所とはいえもっと見かけてもいいはずの魔物をまったくといっていいほど見かけない。これは本当におかしい。


こうなってくると考えられる事態は三つ。一つは高位冒険者が魔物を殲滅していった。


二つ目は森の魔物より上位の魔物が発生し、魔物を統制してるから。


三つ目は上位過ぎる魔物の出現により魔物が逃げたか。確率として高いのは・・・


「時期的なものを考えると魔物の統制だな。そして氾濫の中心地に近い場所。だからこそ浅層に魔物が異常に少ない・・って考えると妥当だな。」


「そうですね・・・」


それがしっくり来ると思う・・・。でも、なんだろう?そういった雰囲気を森から感じられない。理論的に考えると絶対それが正しいとは思うし、状況がそう判断させる。


でも、なんだろう・・・?この良くわからない感覚は。見えない、けどそこにあるような気がする気持ち。なんだか穏やかな、でも嫌な気分がする。こんな状況だからなのか・・・これはもっと慎重にならないといけないと思ってしまう。


「どうした?なんかあるのか?お前さんはここを良く訪れるんだろう?意見をちゃんと聞きたい。それなりの腕があって考える力を持ってる。そんなやつの意見は貴重なんだぜ?ランクなんか関係ないから何かあるなら聞かせて欲しい。」


この人は本当に凄い人だな。あぁ、こういった人がどんどん上に昇って行くのかな。私も見習わないと・・・。とと、ここまで言ってくれたんだからちゃんと言わないとね。


「え・・と、すいません、あまり上手く言葉に出来ないんですが、なんて言えばいいんだろう・・・・・・・。うん・・・感覚的なことを言っちゃうと今森から感じられる雰囲気は氾濫のときの雰囲気じゃないんです。もっと綺麗というか・・・なぜか(・・・)澱んでいないというか・・・作られた雰囲気?・・・ううん、違う。そうじゃなくて・・・」


うぅ、言葉に出来ない自分が恨めしくなってくる・・・あぁそんな赤ちゃんを見るような穏やかな目で見つめないで下さい・・・余計恥ずかしいじゃないですかぁ・・・あぁ穴があったら引きこもりた、・・・あ。


「あぁ、そうだ、危ないから引っ込んでよう。とか、茶々入れると危ないから離れてよう。そんな感じだぁ。例えるなら怯えるほどじゃないけど巻き込まれたらたまらーんって思ってる酒場の冒険者の人達だ。」



・・・・・・・・わたしは何を言っているのだろう。余計恥ずかしくなってしまった


「ふ・・む?・・・いや、・・・・まてよ・・・」


私の恥ずかしい発言を聞いたモルブさんが急に真剣に考えはじめました。


「リリアーノさんよ。多分それが正解かもしれん。だとするとこんなとこを調べたってなんも意味ないな・・・。となると、すまんおまえら。調査する場所をもう少し深くしてみたい。具体的には中部付近じゃなくて中部を調査したい。ほんの少し掴みだけ見たいからそこまで潜るつもりはないんだが、どうする?」


モルブさんが突然そんな事を言い始めた。いったいどうしたのだろう?


「俺はリーダーに従うよ」


「私もモルブに従うわ」


お二人はリーダーの意見を尊重するようだ。なら私が断れるはずもない。それに私もこの原因を知りたいしね。


「私も従います」


「おう、悪いな。おそらく中部の奥のほうは魔物で引き締めあってる可能性がある。本当に注意ながら進むとしよう」


そうして私たちは奥へと足を運びました。本来ならCクラスの私が入っていくのは無謀な場所へと。




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