またいつか会う日まで
話の都合上大分短いです・・・。
人間さんを担いで羽ばたくこと数十分、森が切れはじめ街の防壁らしきものが見えてきた。
一番近いところには門もある。恐らく街道沿いに設置してあるだろう門にはたくさんの人がならんでいる。
このまんまあそこまで運ぶつもりは流石に無いので森が切れてたここいらで降ろしてあげることにした。
街が近くに見えたからなのか人間さんは双眸に一杯の涙を貯めて今にも決壊しそうだ。泣き出されても困るのでさっさと離れるとしよう。
飛び立とうとしたその時、人間さんが俺を見て何か言っている。必死に自分を指して言っている。
しかし残念なことにキンキンと鳴るだけの謎言語の為まったく以って伝わらない。ただ、それでも人間さんは伝えようと必死に口を開いて言っている。
口の動きからして多分「イーアー」みたいな事を言ってるのは解るんだがそれ以上のことはまったくわからないし、こっちも喋れるわけじゃないしね。このままやってても埒が明かないので俺は静かに飛び立った。
人間さんは落ち込んだ表情でこちらに悲しそうな顔で手を振っている。
じゃあね、人間さん。この一週間は貴方のおかげでとっても楽しかったよ。正直な話、人恋しかったのはこっちのほうかもしれない。今ならそう思うよ。
充実した、どこかちぐはぐな生活。恐らく相容れないはずの人間と魔物。その上こっちは哺乳類ですらない。そんな虫の俺に普通に接してくれた貴方のおかげで本当に楽しかったよ。
・・・おぉそうだ。最後に一緒に持ってきた不思議果実を人間さんに投げ渡す。人間さんが果実を受け取るとすんごくびっくりしてる。ふふふ、プチサプライズ成功だな。俺を楽しませてくれたささやかなお礼です。
さぁ、ねぐらに戻るとしましょう。湿っぽいのは性に合わん。明るく楽しく生きなきゃね。人間さんや、またどこかで合えると良いね。そう思いながら羽をばたつかせる。
飛び立つ瞬間に人間さんに向けて自身の体にある音を発する器官から僅かに甲高く虫っぽい、でもどこか喋ってるような音を二音乗せて。