上へ参りまぁす!
人間さんを保護してから一週間ぐらいが過ぎた。人間さんは果実を食べたり持ってきた肉を食ったりして英気を養ったおかげかすっかり元気になった。
最初に肉を持ってきて目の前で食ってたらどん引きしてました。まぁ虫がゴリゴリと音を立てて動物食ってたらそりゃそうか。
肉を持っていくと人間さんは何もないところから火を起こしてみせた。スワッ!!魔法か!!魔法があるのか!!ちょっとテンションが上がったのは内緒だ。
火の魔法でお肉を焼いて食べてくれた。若干引きつった顔をしながらだったけど。
狼を食う習慣が人間にはないのかな?もったいない。凄くおいしいのに。
とにもかくにも怪我も完治したっぽいしそろそろ街に帰してあげなければ。最近たまに遠くを見つめながらため息を吐いてるし人恋しいのかもしれん。
ということで思い立ったが吉日。人間さんの背中を優しく突っついて外に出す。どこか困惑しながらも歩く人間さん。洞窟前の広場で指、というか足を町の方向に差し、続いて人間さんを足差す。
何度か続けると意図が伝わったのかどこか困った顔で何やら喋ってる。何言ってるのかわからんので首を傾げてみる。すると目一杯腕を広げて続いて足で歩く動作。お日様を指差し手の平で指を何度も折りたたんでいく。そのまま顔を横に振る。どこか絶望した顔で。
・・・あぁ。歩いていくには遠すぎるということか。そんなに距離があるかなぁ?何度か見てるがそこまであるようには思えんのだが、すると人間さんは手を目の上にもっていき、きょろきょろと辺りを見回す動作をする。また首を横に振る。
あぁ道もわからんってか。
そうか、人間さんは飛べないもんな。そりゃどこにあるかも解らん街に向かって延々と歩くのは精神的にも肉体的にも無理があるか。しかし、そんなことか。別に歩いてもらおうとは最初から思ってないしな。
最近狼さんズや、やたらでかい角を持った鹿っぽい魔物とか、人間の二倍はあるでっかい鳥とかを見つけては仕留めて食ってるせいか、力には自信があるのです。
俺に任せろ!と言わんばかりに前足で胸を叩く。困惑顔をされた。何故だ。
証明して欲しいのかな?それならば尚更だな。
ってなわけで人間さんの背後に回りこみ優しく持ってれっつふらーい。
大絶叫されました。こらこら、じたばた暴れんな。ちょ、おいこら、ぬ、む。
むかっ。
こちら虫エレベーター虫エレベーター。只今より急上昇いたしまぁす。
そぉいっ!!
悲鳴をどこかに置き去りにしつつかなり上昇。人間さんが固まりました。おとなしくなったのでゆっくりと降りつつ街が見える位置でしばしホバリング。
すると驚いた声で人間さんがこっちを見てくる。ようやくこっちの意図に気づいたらしい。一旦おろして上げましょう。
地面に着地したらこっちを見つつ涙目で何か言っている。だから伝わんないっつうの。仕方ないので適当に木を運んでみせる。違う場所に置くという作業をする。
その後に人間さんもちょっと運んで腰掛けする石の上に運んでみせる。するとこっちを見ながら人間さんが更に涙ぐんでいる。
意図が伝わったかな?と思い洞窟に戻って荷物らしきものを人間さんの下に落とす。すると泣き出しました。俺に掴まって抱きしめながら。
・・・めんd、感情豊かな人ですねこの人。