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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

闇に落ちた女の話

闇に堕ちた女の話~姉視点~

作者: 文月 譲葉

闇に堕ちた女の話の姉視点です。

思い直してR15外しました(2015.4.12)。

ユニークが200人超えてて驚きました!読んでくださった皆さんに多大なる感謝を!!(2015.6.21)

 私には肉親と呼べる人が妹しかいない。父様とうさま母様かあさまも私達が10歳の頃に事故で死んでしまった。もう、ずっとずっと昔のことよ。

母様は私達に一族のさがを教えてくれた。私達は「魔」に近しいモノなのだと教えてくれた。―――私達は片割れを喰らって完成するのだと教えてくれた。

 妹は忘れてしまっているようだけど・・・


----*----*----*----*----*----*----*----*----*----


 愛しい娘達こらよ。良く聴きなさい。ちゃんと覚えておきなさい。

 母様の一族はね、必ず双子が生まれてくるの。うぅん。双子しか生まれてこないの。生まれてきた子供達は二人で存在している限り未成熟なままでね、衰弱して、最後には飢えて命を落としてしまう。生き延びる為には己の片割れを喰らうしかないの。片割れを喰べた者は、身体の何処かに黒い紋様が浮かび上がってくるの。それ故に、かしら。他人ひとは私達を「魔の者」と呼ぶ・・・


 母様にはね、妹が居たの。双子の妹が。でも・・・12歳の時に母様が喰べてしまった。大切な家族だったのに、自分が生き延びる為に喰べてしまったの・・・

 母様の母様・・・貴女達のおばあ様は18の時に双子の姉を喰べてしまったと聴いたわ。母様のおじい様・・・貴女達の曾おじい様は8つの時に双子の兄を喰べてしまったのだそうよ。貴女達も覚悟を決めておかなければ駄目よ?喰らい合う覚悟がなければ二人とも死んでしまうのだから・・・


 ん?母様の紋様?母様はね、左腕に出てきたわ。左肩から始まって左手の指先まで伸びる茨の紋様が・・・

 貴女達のおばあ様は心臓の丁度真上あたりに逆さ十字の紋様が浮かんでいたわ。貴女達の曾おじい様は頸に鎖が巻きついている様な紋様だったそうよ。

 貴女達にも紋様が浮かび上がってくる日が来るのね・・・

 あら・・・喰べたりしない?それは多分無理だわ。発作が起きてしまうと片割れを喰らうことしか考えられなくなってしまうもの。母様も最初は大事な妹を喰べたりなんかしないって思っていた。でもね、発作が起きてしまったとき妹を喰らうことしか考えられなかった。他の事を思う余地なんて残ってはいなかった。きっと貴女達も抗えないわ。

 発作の起きる時期は人によって違う。貴女達はまだ幼いけれど、もう何時発作が起きてもおかしくないのよ?今を大切にするのよ・・・


----*----*----*----*----*----*----*----*----*----


 母様の話を聴いた夜、恐ろしくて眠れなかった。私達が魔の者だなんて信じたくなかった。何よりも、大事な妹と喰らい合う日が来るなんて信じたくなかった。そんな日はやってこないって信じたかった。

 父様と母様が居なくなって、二人で支え合って生きてきた。これからも二人で生きていくんだと思ってた。


 母様の話を聴いてからどれくらいの時が過ぎたかしら・・・母様の話が霞んでくる頃にソレは突然やってきたの。


 飢えが襲ってきた。

 何を食べても満足できなくて、飢えを満たせるモノを探した。

 痛くて、苦しくて、視界は紅く染まった。

 頭の中が真っ白になって、何も考えられなくなった。

 気がつけば、同じ顔をしたモノが目の前に居た。

 何も考えられない頭の中に声が響いた。


 喰ラエ 喰ラエ ソイツヲ喰ラエ

 喰ラエバ 楽ニナレル

 喰ラエ 喰ラエ ソレハ獲物ダ

 跡形モナク 喰ライツクセ

 

 声に抗う術もなく、私は目の前のソレに襲いかかろうとした。でも、襲いかかろうとした瞬間、一瞬だけ頭の中の霧が晴れたの。私が喰らおうとしたモノは妹だった。

 あの一瞬が命の明暗を分けたのでしょうね。私が妹を認めたと同時に妹は私に喰らいついたんだもの。きっと、妹もあの声に抗えなかったのね。妹に喰われゆく中で、私は、私と同じように片割れに喰われていった血族を想った。私と同じように、意識を取り戻してしまったから喰われてしまったのかしら、って。


 妹の口が私の紅で染まっていく。

 妹が恍惚とした表情で私を喰らう。

 自分の命が流れていくのが解った。

 痛みで何度も意識が飛びそうになった。

 それでも必死で耐えた。妹と過ごせる時間ももう幾らも残っていないと解っていたから。

 徐々に霞んでいく眼に妹の姿を焼き付けた。私の紅に染まった妹もとても素敵だと思ったわ。どんなことが起こっても、やっぱり妹が大好きだもの。大切だもの。


 薄れゆく意識の中で、私は妹の幸せを唯々祈った・・・


----*----*----*----*----*----*----*----*----*----


 遠い遠い昔の話よ?

 私と妹が二人で一緒に過ごしていた頃もあったってだけの話。

 今?勿論私達はいつも一緒よ!いつまでも、ね。姉としてのカタチは失ってしまったけれど、私は妹の中で生きているもの。妹の血肉となって生きているんだもの。

 え?そんなの生きているとは言わない、ですって?そんな些細なことどうでもいいわ。大切なのは私の大事な妹が幸せに生きていくことだけよ。

 妹の背中にはね、私を喰らった証があるのよ。私が生きていた証でもあるわね。

 掌より少し大きな薔薇の華の紋様が咲き誇っているのよ!!

 私、とても幸せよ・・・


          ―――幸せそうに微笑わらう声が聴こえた―――

読んでくださってありがとうございました!

解り難い、や誤字脱字の指摘でも良いので、感想等頂けると嬉しいです。

感想には返信させて頂きます!


以上、譲葉でした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 食べられる側の視点、というのが斬新でした。 自分が食べられる側だったら……と想像してみると、少し怖くもなります。 ただ、家族への愛ゆえに食べられて幸福を感じる……という魔の者ならではの感覚…
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