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1話 飴をくれた貴女

けいは大人しく、手のかからない子だ。文句や我儘なんて言った試しが無い。だがその性格故にいじめの標的になりやすかった。暴言や暴力は日常茶飯事だった。現に、今も。

「早く死んでくれ、まぬけい

「なんか反応しろよクソが」

放課後、4階の教室の窓際で同級生の1部達に雑巾を食わされている。むせ返る様なカビ臭い風味が、佳の呼吸を邪魔した。

宿題や係の仕事を押し付けても不満を何一つ言わない佳を見て、調子に乗ったのだろう。同級生の男子達は気味が悪い笑みを浮かべ、佳を囲んでいる。

(雑巾ってやっぱり不味いんだな。今度は虫でも食べさせられるのかな)

憎しみや怒りなどもう湧かない。日々痛め続けられている佳は思考が鈍っていた。佳の家は母子家庭で、男遊びが激しい母は当てにしていない。教師も見て見ぬ降りをしている。クラスの女子がいじめの内容を考えているのも知っている。

誰も信用出来ないし、したくない。

男子達は暴力を振るった後に満足して帰っていった。




もう16時半過ぎだろうか。時計を見る気力など無い。11月なので、日が短い。窓ガラスから夕日が差し込む。

「もう、死んでしまおっか。」

虚ろな目をした佳は窓ガラスを開けた。

黒い、ボサボサな髪が風でなびく。

窓際に上がった。草も生えていない、コンクリートの地面が見える。見渡す限り、人は居ない。

ここから落ちたら、一発で逝けるだろう…。




マフラーを首に巻き、小学校へ向かう少女がいた。宿題のプリントを机の中に忘れたので、取りに来たのだ。ショートカットなので、赤くなっている耳がよく見える。

目的地に着いた。職員玄関についているインターフォンを押し、自分の年組、名前を名乗ると、ドアのロックが解除された。少女は自分の教室へ素早く歩いて向かう。

そのとき、自分の教室の手前の教室に、何かの気配を感じた。少女はちらりとその教室を覗く。

誰かが窓の外に足を投げ出して座っている。ここは4階だ。落ちてしまえば死ぬだろう。少女は慌てて止めに入る。

「お、おい、何してるんだ。危ないよ。」

その少女の声に、窓際の人物はびくりと肩を揺らした。そして、こちらを向く。

どうやら女子の様だ。

「誰ですか。私は今落ちようと思ってたんだけど」

ゆっくりと区切りながらそう答えた。少し声が震えている。

「私は薫。6年1組の紺野こんの かおるだ。何で飛び降りようとしてんだ?いじめでも受けてんの?」

薫というその少女は、右手をヒラヒラさせながらそう答える。

「…っと、私は、2組の滝川たきかわ けいです。」

一瞬声が詰まったのを薫は見逃さなかった。

「佳ね、よろしく。で?いじめは図星か?」

「うん。でももう死ぬからどうでも良い。」

佳はこちらに向き直してそう言った。

「何で。」

「だって、生きてても楽しくな…」

「違う。何で自分の為に生きてないの。そりゃ楽しくも無いだろ。」

一瞬の沈黙が訪れる。

「だ、だって、誰にも相談出来ないから毎日楽しくなくて」

「相談相手は私がなるよ。それで良いだろ。」

「えっ…」

佳の瞳に涙がうっすら浮かぶ。

「偽善とかじゃなくてさ。私も誰にも相談出来ない様な事があったりしたから。

力になりたい。」

信じて、良いのだろうか。

佳の心が揺れる。

きちんと名前を呼んでくれた薫に、特別な感情が湧いた気がした。

「これからよろしくな、佳。」

その一言で、佳の瞳からはこれまでせき止められていた大粒の涙がボロボロとこぼれた。

「ぅ、うんっ…よろしくね、薫ちゃん!」

涙でぐしゃぐしゃな笑顔をした佳は、窓際から降り、薫に抱きついた。

「もう…泣き止めー。べっこう飴やるから。」

薫は上着のポケットから小さな飴を2つ取り出し、1つを佳にやった。甘党な彼女の服のポケットには、何かしらの菓子が入っている。

「ありがとう。」

べっこう飴に夕日の光が当たり、黄金色こがねいろに輝く。とても綺麗で魅力的な色をしている。

2人は飴を包み紙から取り出し、カラン、コロンと舐め、よく味わった。

佳が泣き止んだ後、2人で学校を出て、帰宅した。


「ただいまー…あっ、プリント忘れた」




読んで頂きありがとうございます。

この話は、薫と佳の出会いの話です。


一応描写してありますが、二人はまだ小学生です。

自分の中で情景を上手く考えられていませんので、矛盾してる点もあると思います。誤字脱字も多いでしょう。精進致します(ーー;)


次ぐらいにもう1人登場人物が増える…はずです。


ありがとうございました!m(__)m

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