1
基本会話ばかりです。
地の文をうまく書くのって難しいですよね。
青年が二人、向かい合っていた。
片方は黒髪を刈り込んだ短髪。やや浅黒い肌で体つきは筋肉質。その姿は精悍な戦士を思わせた。
片方は金の長髪。色白でやや華奢ではあるが、周りを畏怖させるような雰囲気を纏っていた。
「なあ、勇者。」
パチン。
「何だ、魔王。」
パチン。
「もう少し、手加減してくれても良いと思うのだが。」
「嫌だね。」
二人の間には木の、升目が書かれた板。
いわゆる将棋盤が置いてある。
「私は初心者だぞ?」
パチン、と駒を打つ音が響く。
よく晴れた日の、庭に面した縁側だった。
「角落ちなら俺に勝てるって奴は初心者とは言わねえよ。
これでも地元じゃ敵無しだったからな。」
「むぅ。」
と、唸りながら金髪の青年が駒を指す。
「これでどうだ?」
少し得意げに言う。
「ほほう。」
短髪の青年は感心したような顔。
「ふふふ、自分でもなかなかいい手だと思うぞ。」
「そうだな。予想の範囲内だがその中でも最善手だな。」
感心はしたが、慌てた様子はなく、短髪の青年は淡々と指す。
「ほいっと。」
パチン。
「ぬぁ!?」
パチン
「ほら」
パチン
「・・・ぐぅ。」
「これで詰み、っと。」
金髪の、魔王と呼ばれた青年はその声を聴いた瞬間に後ろへ倒れこむ。
「むむ、また負けたか。」
それに対し、短髪の勇者と呼ばれる青年は、
「ぶっちゃけ、10手くらい前から俺の勝ちだったけどな。」
と追い討ちをかける。
「・・・・・・勇者よ、よく性格悪いって言われなかったか?」
「・・・・・・性格悪くなきゃ、戦えなかったな。」
「ああ、そうか。すまんな。」
「別に謝ることじゃないさ。」
そうか、と呟き、魔王は身を起こす。
勇者は横においてある湯飲みからお茶を啜る。
「なあ、魔王。」
「何だ、勇者。」
「平和、だな。」
「ああ、そうだな。」
空を見上げると、雲ひとつない青空が広がっていた。