アイーダ 4
また、アイーダ姫視点。
私が泣いてると突然部屋の扉が開き見知らぬ男が入ってくる。
青い髪に細い体、イケメンと十分言えるその顔にはやはり見覚えがない。
そんな人物がどうして私の部屋に入ってこられたのか。
……鍵は閉めた筈だ。
「どうやって入ってきたの?」
「……」
男は無言で、しかし何処か気味の悪い笑みを顔に貼り付け近寄ってくる。
だんだん、これはかなり危険な状況じゃないのか。と言う思考に頭が支配されていく。
「そ、それ以上……ち、近づかないで。近づいてきたら不敬罪と不法侵入でお父様に言いつけるわよ。……ヤ、ヤダ。本当にそれ以上近づかないで!!」
私の口から上ずった声が漏れる。最後の方はほとんど泣き声だった。
私の言葉を無視して男は顔をさらにニヤニヤと歪ませながら近づいてくる。
男が私の言葉を聞く気が無いことを悟った私は、近くにあった枕を手に取り男に殴りかかる。いや、殴り掛かろうとした。……だけど私の体は言うことを聞かない。
……この感覚には覚えがある。そう、作者だ。作者が文を書くと私達は強制的にその文の通りに動かされる。その時に他の行動をしたくても体が固まり動かなくなる。……そう、今の私のように。
とりあえず、何とか体を動かそうとするが動かない。
そうこうしてる間に男は私のすぐ目の前まで来ていた。
座っていた私の体が勝手に立つ。そして、男に近づき……え?
ちょ、ちょっとやめてよ!! イヤ! ダメ!! ホントにやめてよぉ。
私の体は現在、男に抱きついて愛を囁いてる。
そして、視界がだんだん狭くなっている。
目をつぶる。……ということは、キス!?
それだけは、それだけはホントにダメ!! ダメだってば!!
私の必死の抵抗も空しく男と私の顔が近づいてるのがわかる。男の息が私の顔に掛かって気持ち悪い。嫌だ!!嫌だ!!嫌だ!!嫌だ!!勇者以外の人とキスするなんて嫌だ!!
助けて!! ゼクス!!
ドッカーン!!
いきなり、男が吹っ飛ぶ。
そして、作者の力の効果が切れて力が抜けて倒れそうになった私を突然誰かが抱き留める。見ると、髪はまるで黒い液体を頭にぶっかけただけのようなムラのある黒で、こうして抱きしめられると凄く落ち着いて、安心できる。……私の知り合いに黒髪はいないはずなのにだ。
「遅れて、ごめん」
そのアルトの澄んだ声を聞いた瞬間思いつく、もしかして……!!
「ホント遅いわよ。ゼクス」
間一髪で気味の悪い男の魔の手から助けてくれたのは、私がこの世で一番愛してる男だった。