鳴らない鈴
NL厨同士がキャラを出し合った結果です。
「菖蒲」
深いバリトンが花のにおいをかいでいる少女に話しかける。
声の持ち主は狼に似ているが人の骨格を持った獣で、名を緒永という。
彼は山神なのだがひょんなことから少女と知り合い、以来なにくれとなく気をかけていた。
「なんですか?おながさま」
ゆうらと顔を上げた少女は長い髪の一部をふたつに振り分けて結んでいる。
菖蒲と言う名の少女が獣の顔を持つ緒永を怖れる様子がないのは、彼女の目が盲ているから。
声の位置から緒永が大柄であることはわかっているが、彼は慎重に距離を取るので容姿がわからないのだ。
目隠し鬼のように声の方に近付く。
「手を出しなさい、菖蒲」
「手…?」
言われたとおりに菖蒲がぱっと開いた両手のひらを差し出す。
「…指を閉じて。受け皿の形にしてごらん」
穏やかな緒永の言葉に素直にそのとおりにした菖蒲にそっと笑いをこぼしながら、緒永はそっとそこに鈴のついた飾り紐を乗せる。「なんですか?これ」
くるくると飾り紐を弄りながら菖蒲が訊ねる。
鈴はちりりとも鳴らず、そのために目の見えない彼女にとってわかるのはなにか丸っこいものがついている、ということだけだ。
「それは鈴だ。ただそれは鳴らない。お前が危険になりそうなときに鳴る」
「きけん」
「お前に初めに会ったとき、崖から落ちるところだったろう。そういう方に行きそうになったりしたら鳴るようにしてあるのだよ」
「すごいですねぇ」
手首にそっと紐を結わえて唇を綻ばせた菖蒲に緒永も相好を崩した。
緒永さんは私が、菖蒲ちゃんは友人がキャラデザ。シリーズかもしれない