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第4話〜またまた大事件!謎の機械とエセ軍人〜後編

 現場は謎の発光事件が起きた平原だった。何かが落ちたような跡があり、その周辺の地面の色だけ、周りと少し違っていた。

「こんなにひどいことになっていたなんて…」

 本当にどうやったらこんなことになるのだろう。

 謎が多い事件にさらなる謎が積み重なっていく。

 いや、今はそれを考えているときじゃない。

「あ、セシル君!」

 向こうで手を振っているのはリプルちゃんとマリノちゃんだ。二人も現場に呼ばれていたのか。

「俺達が呼んだんだよ」

「寮長さん!」

「今は生徒会生活指導員だぜ。不本意だけど、俺達以上に戦闘に慣れているのは君や彼女達しかいないからな。向こうの集団は俺達生徒会メンバーで引き受ける。お前達は向こうで戦っている人の援護をしてやってくれ!」

「向こうで…って?」

 僕が周囲を見回すと、銀色短髪の男が機械達と交戦している。

「あいつらか…」

「腕がなるね」

 合流したマリノちゃんがパキパキと指の骨を鳴らす。

「フレッドさんはセシル達についてあげてください」

「おう!」

 フレッドさんはそう言って腰の槍に手をかけた。

「よし、行くよ皆!」

『おう!』

 僕はまず雷の魔法を機械達の中心に落とし、標的をこちらに切り替えるように仕向ける。いきなり戦場のど真ん中に雷を打たれたせいか、機械達の中心で戦っている男が一瞬こちらに顔を向けた。

「早く僕達のほうへ!」

「援軍か。ありがたい!」

 銀髪の男は僕達の雷魔法で後ろを向いている敵に銃を乱射し、包囲網を破った。

「セシル、俺達も一気に攻めるぞ!」

 フレッドさんが槍を振り回しながら機械達の核を貫いていく。僕も負けてはいられないな。新たに覚えた武器への魔法付加術を使い、雷を剣にまとわせる。これでいくら装甲の厚い機械といえど大きなダメージを与えられる。

「てやあー!」

 剣の切っ先が機械に当たり、そこから大量の電流が流れる。電気に弱い機械は一瞬にして機能停止する。

「ぬぅ、やりおるな。我輩も負けてはおれんぞ!」

 銀髪の男も銃を使い、的確に敵の核を打ち抜く。今回は前衛要因が十分だからマリノちゃん達には補助にまわってもらったほうがいいだろう。僕は彼女達に僕達の回復に専念するように指示を出した。

「彼のものの得物に新たなる息吹を与えよ!ストロン!」

「生命の恵みよ、彼らに力を!ライフオーラ!」

 次々と補助や回復の魔法を唱えるノエルちゃんとリプルちゃん。そして、魔法の詠唱を邪魔されないようにマリノちゃんが箒でしっかりと護衛をしている。あの三人のチームワークもだいぶ決まってくるようになったな。

「セシル、後ろ!!」

 フレッドさんが横から叫ぶ。僕が後ろを振り返ったときには既に機械のアームが僕の体に伸びているところだった。

(やられる!?)

 剣で防御することも間に合わず、あとほんの一瞬で僕の体に穴が開くところだった。

「……?」

 しかし、いくら経っても僕の体に痛みはこなかった。

「油断大敵ですよ、セシルさん」

 その声と共に僕に攻撃を仕掛けようとしていた機械がバラバラになって足元に崩れ落ちた。

「君は、ラウナちゃん!?」

「ラウナちゃん!」

 向こうでノエルちゃんも驚いた様子で彼女を見ていた。

「ひどいですよ。私だけ一人ぼっちで待たせるなんて。私だってファトシュレーン魔法学校の生徒の一人なんですよ」

 彼女は弧を描いた剣を綺麗に鞘に収めた。確か、刀とかいう東の島国特有の武器だったっけ。

「私も戦列に参加します。生徒会役員の一人として!」

 ラウナちゃんは改めて刀を鞘から抜くと、景気づけと言わんばかりに近くにいた機械を先ほどのようにバラバラに切り裂いた。

「さぁ、どんどんかかってきなさい!」

 ラウナちゃんは声高らかにそう言うと、残っている機械達の中心へと走っていった。まったくなんて怖いもの知らずな子だ。でも、また一人心強い仲間が増えたことに変わりはないな。

「このまま一気に機械共を蹴散らすぞ!総員、あの少女に続け!」

 銀髪の男も意気揚々にラウナちゃんの後に続く。

「セシル、俺達も続くぞ!」

「はい!マリノちゃん達、後ろは任せたよ!」

「オッケー!」

 マリノちゃんはぐっと親指を立てると、僕達の後ろを走って援護に回った。

戦いは夜が少し深まるまで続いたが、七色に変化した丘での戦いは僕達の圧勝で飾られた。ラウナちゃんは戦い終わってすぐ、寮長さんに連れられて生徒会の仕事に戻っていった。

「大丈夫だった?」

 リプルちゃんが銀髪男の傷を癒しながら尋ねると、彼はふんっと鼻で笑った。

「このくらい何でもないわ。戦士養成学校で鍛えていたからな」

「戦士養成学校?」

 聞きなれない言葉に全員が首を傾げる。そして、僕の中にはある疑問がよぎった。

「貴方は新しい戦闘実習の先生じゃないんですか?」

 戦士養成学校なんていうからにはてっきりそうだと思ったのだが、今度は逆に銀髪男が首を傾げた。

「何のことだ?我輩は養成学校の命に従い、ファトシュレーンで魔法を学べと言われたのだが…?」

「え?」

「まさか…」

「ていうか明らかに…」

 みんなの言いたいことは大体わかっている。だって、この人の外見はどうみたって熱血体育教師みたいに筋肉隆々だし、服装も戦士養成学校という名だけあって軍人っぽいというか……とにかく全員がファトシュレーンに新たに赴任した先生だと勘違いしていた。

「ハッハッハ。というわけでこれからよろしく頼むぞ。同じ学び舎にいれば顔くらい合わすこともあろう!その時は気軽にギルバートと呼ぶがいい!我輩は貴様らのことを気に入った!」

 ギルバートは戦い終わった丘で僕達には騒音としか思えないくらいの大声を出して笑い続けたのだった。

 これは新しい仲間が増えたって言えるのかなぁ…。

 とにかく、明日からは一段と学校が賑やかになりそうなそんな予感がした。

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