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勝手にトライアングルレッスンthe First〜初めての〇〇〜初めての一人暮らしの夜

作者: tama
掲載日:2026/09/17

「やっと片付いた…かな?」


部屋を見渡す私。今日から一人暮らし開始!

まだちらほらと残る段ボールはあるものの、座れる場所も眠る場所も整えられた状態にはできたはずだ。

朝から動き回って、西日が差し込む時間になっていた。


「さて、と。。。晩ごはんはどうしようかな~。」


ここで話す言葉は全部ひとりごとなんだなぁ。

そう思ったら少し淋しくなった。

あ、そうだ。


朝から忙しくて見ていなかったスマホを取り出した。


「うわ、すごい履歴w」


たくみとひろしそれぞれから着信がたっぷり。

メッセージを開くと2人ともそれぞれに心配してくれていたことがよく分かった。


「なんで電話に出ないんだよ…って、忙しかったんだもん。。。え、ヤバい。来るって書いてる!!」


そのメッセージは2時間前に送られていたもので、あまりに連絡がつかない私にしびれを切らしたたくみが、用事終わりに見に来ると書かれているものだった。

慌てて時間を確認したら、

「もう来ちゃうじゃん!!!」


ピンポーン♪


「え!タイミングばっちり!?」


インターホンに映るのは、ソワソワキョロキョロしてるたくみ。


ドアスコープで確認して、ガチャっと鍵とチェーンを外したら、


「お!ちゃんと、チェーンかけてたんだな!関心関心!」

「かけるよ、そりゃ!初めての一人暮らしだし。」

「オレらのマンションのすぐ近くだなんて、頼りにされててうれしいぜ!」

そう言って、ハグしてくるたくみ。

ちょっと胸がキュンと鳴った。

「ふ、2人の所によく遊びに来てたからさ、この辺りの雰囲気が、好きだなーっておもって。それに職場にも一本で行けるから決めちゃった。」

私たちはもう社会人になり、2人は一足先に1人暮らし…いや、正確には2人暮らしを始めている先輩なのだ。

「そんなにオレの近くにいたかったの?」

「え、いや、そういうわけでは…」

「またまたぁwちょっと耳赤いですよ、お姉さん!」

そういいながら、私を解放してくれたたくみ。

私はたくみの肩をペシンと叩いて背中を向けた。

そんなやり取りをしながら、たくみは私を追いかけるように玄関から片付いたばかりのリビングへ入ってきた。


「はい、これ引っ越し祝い!」


渡された少し重いビニール袋にはビールの缶がたくさんと、おつまみがちょろっと入っていた。


「引っ越し祝いって、それを名目にお酒飲みたいだけじゃないの?」

「いーじゃん、三人揃うんだからさ!飲みたいでしょう?」

「え!?ひろしも来るの?」

「おぅ、休みなのに急に入った仕事終わりに駆けつけるってよ」

そう言いながら、部屋の中をジロジロ見るたくみ。

「ねぇ、そんなに見られたら恥ずかしいんだけど…」

「初めての一人暮らしっていうしさー、変なモン付いてないか確認してるんだよ!」

「変なものって何よwww」

「決まってんじゃん、カメラ付いてないか確認だよ」

そんなのあるなんて都市伝説だよーって冗談半分で笑ったんだけど、少しだけ、ちょっとだけゾワッとした。

「まぁ、それは冗談だけどさ。」

たくみが私の両肩に手を置いて、目を見つめる。

「ゆいこは、オレの大事な女の子だからさ。夜道とか、寝てる時とか。気をつけてくれよ?」

真面目な顔でたくみが言う。

「うん、それはもちろん気をつける。」

「いや、気にしてほしいの、そこじゃないんだけどなー…」

小さな声でたくみが何か言ってたけど聞き取れなかった。


ピンポーン♪


そんな話の最中に大きな音で響くインターホンに、私は肩がビクッとなるぐらい驚いてしまった。

あんな話するたくみが悪い。


「はーい!」

声を出しながらインターホンを見ると、映っていたのはソワソワしているひろし。

「お疲れ様ー!!開けるねー!」

ひろしは、ニコリと手を振ってくれた。

玄関のドアスコープもちゃんと見て、鍵とチェーンを開けたら

「ちゃんとチェーンまでかけてるんだな。」

と、たくみと同じことを褒められた。

「お父さんみたいw」

そう言うと、二人して少しムッとした顔をした。


「これは引っ越し祝いだ。」


ひろしも、ビニール袋を渡してくれた。

中身はあつらえたようにおつまみや、私の好きなお菓子のオンパレード。


「たくみが酒を持ってくると思ってな」

「分かってるねー!!」

「2人は夫婦みたいに息が合ってるね!」

「いやー、オレはどっちかって言うとゆいこと夫婦に…」

「あ、氷がないや…」

都合よく聞こえていないゆいこに、たくみもひろしも苦笑いするのだった。

「コンビニ近くにあるから、買ってくるよ」

「ゆいこが1人で夜に買い物は危ないから。俺が行ってくるよ」

「え、でも…」

「じゃあ、3人で行くか?」

「あ、じゃあひろしとたくみで行ってきてくれる?私、ちょっとだけおつまみ作っておくから!」

「えー、料理できるのかー??」

「私もちょっとは成長してるんですぅー!あ、でも期待しないで?」

「行くぞ、たくみ。」


ブツブツ言っているたくみを引っ掴むようにして買い物に出てくれたひろし。

さて、少しだけ頑張るぞ、と意気込んで冷蔵庫を開ける。

実は昼間に近くの散策がてら買い物に行っていた私。

新鮮な野菜が置いてある八百屋さんを見つけた。

キレイな色のトマトとか、ブロッコリーにレタスを買って来たから、トマトはたくみに「切っただけかよ」とか言われるんだろうけど。

ブロッコリーはニンニクと炒めよう。レタスは湯がいてオイスターソース…あれ?オイスターソース買ってきたよね?

あると思っていた冷蔵庫にない…あれ?たしかに冷蔵庫にしまったはずなのに…

調味料が入っていた段ボールをガサゴソ。

あれ?どこに入れたんだっけ…

あ、見つけた!そうだ、ここにまとめてあとでって思ったんだった。

さて、料理を進め……


きゃーーーーっ!!!!


廊下にも響いた私の叫び声に、氷をぶら下げたひろしとたくみが慌ててドアを叩いた。


「ゆいこ!?おい、大丈夫か!?」

「ゆいこ!!!開けろ、おい、ゆいこ!?」


ガチャっと音がして、鍵が開いたのが分かったので、勢いよくドアを開くと、明らかに涙目のゆいこが立っていた。


「おい、どーした!?」

「誰だ!?誰か入ってきたのか!?」


必死の2人に、泣きそうなゆいこが精一杯で指を指す。

指の先には、シンク。


「…シンク?」

「うん、そこに…!!!!」


近づくひろし。たくみはゆいこを背中に庇って立っている。


「…あー、なんだ。コイツか…」

「え?何?」

「あ、、、青虫…やだーーーー!!!」

「青虫!?オレもヤダーーーー!!!!」


苦笑いのひろしが指に乗せて、青虫をたくみに見せつけたら、たくみも青い顔をして、すばやく私の背中に隠れた。

私も苦手だから、たくみの腕にしがみついて、二人でギャーギャー騒いでしまった。


「引っ越し初日からうるさいヤツだって思われたかなー…反省しなくちゃ…」


ひとしきり騒いでから、ひろしがベランダからサヨナラしてくれた青虫のことを思いながら、私は冷静な自分をとり戻して正座しながら小さめの声で言った。


「そうだな、まさかあんなに大きな叫び声で、犯人は青虫とは…(笑)」

「青虫は大声出るだろー!?」

「たくみはゴキ」

「まてひろし。それ以上言うな。名前聞くのも我慢できない。どうしても言いたいなら、黒いアイツって言ってくれ」

「…黒いアイツが出てきても毎回大騒ぎだからな」

「え!?やっぱりいるの?そんなに頻繁に出てくる…?」

「ここは階が高いから大丈夫じゃないか?まぁ、何かあったら俺を呼べばいい。」

「あ、オレ虫はダメだから…そういう時はひろしな?」

「頼りにしてます…ありがとう、ひろし」

「え、オレは?」

「私を前に押し出して逃げたくせに…」

「逃げてない!避けたんだよ!」

「ゆいこ、このレタス美味いぞ…どう作るんだ?」

「え、ほんと!?良かったー!!簡単なんだよ?」

「え、オレも食べるー!」


お酒も手伝って、いつもの他愛ないお喋りに花が咲く。

たくみはずっとペース早く飲んでいたから、真っ先に眠ってしまった。

たくみにブランケットをかけていたら、ひろしが食器を洗い始めた。

「いいよー、あたしやるよ?」

「朝から片付けで疲れただろう?甘えておけよ。」

「え、いいの?ひろしはいつも優しいなぁ」

「お前にだけだよ。」

「え?」

「ゆいこが、俺の特別だから、ゆいこだけに特別優しくしてるんだよ。」

左側から聞こえてくる言葉に、思わずドキッとした。

「え?」

「何かあったら、いつでも、何でも言えよ?絶対、すぐ駆けつけるから。」

「うん。。。」

よく見たら、耳が赤いひろしにクスッとしながら、キュンと鳴る胸に気がついた。

「ひろし?」

「ん?どうした?」

「ありがとう。大好き。」


ゴトンと、音がして、洗っていたお皿を取り落としたひろし。


「すまん!手が滑った…」

「大丈夫!?ケガしてない?」

「あぁ、大丈夫だ、皿も割れてない…な?」

「いいんだよ、安物だから。無事で良かった。あー、ほんとひろしとたくみがいてくれて、私は幸せ者だなぁ…2人とも大好き。」


一瞬、ピクリとひろしが固まったあと、何事もないように洗い物を終えた。


「さて、じゃあ俺たちは帰る時間だな。」

「え…帰っちゃうの?」

「え、、だってこの部屋に泊まるわけにはいかないだろう?」

「そっかぁ…帰っちゃうのかぁ…」

「心細くなったのか?」


ひろしの優しい声に思わずコクンと頷いてしまった。

ハッとして首を振る。


「いいいや、でも、1人で夜過ごすことにも慣れた方がいいよね?大丈夫!」

「ハハハッ、無理するな。分かったよ、今日は泊まらせてもらおうかな?でも、週明けからは1人で過ごせるように頑張るんだぞ?」

髪を優しく漉くように撫でてくれる温かい手。

嬉しいのに、私は悪態をつく。


「ねぇ、だから、お父さんみたいーーw」

「んー…え、、、オレ…寝てた?」

「たくみ!起きた?」

「あ、ひろし!お前なんでゆいこの髪触ってんだよ!!」

「しーーーっ!!もう夜中だから!これ以上騒がないで!」


初めての一人暮らしの最初の夜は、二人のおかげで、とっても楽しくて、刺激的で、ほわほわした思い出になりました。





終わり


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― 新着の感想 ―
初めての一人暮らし、楽しみと不安が混じるなか2人がきてくれるのは頼もしいですね。2人の想いに気付かず天真爛漫なゆいこが、らしいなと思いつつ、罪作りですね。
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