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番外編10.ふたり夏祭り


 テーブルに置いてるスマホが震えてる。


 パタパタ。


 キッチンからスマホを確認しに行く。


『たろちゃん今から帰るよ』

 凪紬くんからのメール。


『待ってる。たろうも今準備してる』

 そう返してまたテーブルにスマホを置く。



 パタパタ。


 スリッパを響かせてキッチンに戻る。


 準備をしながら、あの日のことを思い出す。


「たろちゃん」


 帰ってくるなりぼくに突撃してきた凪紬くん。

 抱き止めるも、こんな凪紬くん珍しい。


「夏祭りの日、実習前の説明会になった」

 ぼくの胸元でぽつぽつと話す凪紬くん。


「でもぼくは、たろちゃんと夏祭り行きたいから休む」


 そんなこと言う凪紬くん。

 ぼくの方がびっくりする。


「凪紬くんそれはダメだよ」

 ぼくの胸で首を左右に振る凪紬くん。


「ヤダ。だってたろちゃんがお揃いの甚平作ってくれたもん。あれ着ていきたい」

 普段はぼくの方がごねるのに、凪紬くんがこんなふうになるのは珍しい。


「うん。また別の夏祭り探してきていこう」

 凪紬くんを抱きしめながらそう伝える。


 凪紬くんがぼくから離れてぼくの顔をみる。

 不満そうな凪紬くんの顔。


「たろちゃんはぼくと行きたくないの?」

 

 (拗ねてる凪紬くん可愛い)


「行きたいよ。でも説明会休めのはダメだよ」

「むぅ。たろちゃんのいじわる!」


 完全にむくれてる凪紬くん。


「たろちゃんが作ってくれた甚平着て夏祭り2人で行きたいのに」

 

視線を下に落としてそう言う凪紬くん。


(そうだ!)


 ぼくはあることを閃いた。


「凪紬くん」


 そう声をかける。顔をあげてくれるけど不満げな顔。


「たろうね、いいこと考えた。絶対凪紬くんも気にいる。だから説明会行ってきて」

「いいこと?」

「うん!たろう自信ある」


 凪紬くんの手を握って凪紬くんを安心させるように伝える。

 黙ってる凪紬くん。



 沈黙が部屋を包む。



「……わかった。たろちゃんを信じる」


 こくん。と頷いた凪紬くん。


「うん!任せて、たろうのこと信じてね」




 料理の最終確認をしながら、思い出し笑いをした。


 (拗ねた凪紬くんも可愛かった)


 何より、ぼくの甚平を着て夏祭りに行きたいと言ってくれたのは嬉しかった。


 でも。

 ぼくも凪紬くんの夢は応援したい。


 普段はテーブルでご飯を食べるけど、今日はソファーの前のテーブルに料理を並べていく。


 ぼくの部屋からもテーブルを持ってきて2つを並べてる。

 そこに次々と並ぶ料理たち。


 (よし!できた)



 バタン。

 ダダダ。



 凪紬くんだ。


「たろちゃんただいま!」

 廊下からリビングに入ろうとした凪紬くんを受け止める。


「凪紬くん。このままたろうの部屋に行こう」

 凪紬くんの体を回れ右して、玄関に歩き出す。


「たろちゃんの部屋?」

「そう。行こう」


 そう言って凪紬くんをぼくの部屋に連れて行く。


「これって?」


 ぼくの部屋のリビングでびっくりした顔でぼくを見るたろちゃん。


「うん。これに今から着替えよう」

 ぼくが作ったお揃いの甚平。


 凪紬くんは目をキラキラさせて頷いてくれた。


 2人で着替えてお揃いの甚平を身につける。


「ふふっ。たろちゃんに包まれてる感じがする。着心地もピッタリ」

 そう言って喜んでくれる凪紬くん。


「ぼくね、この袖のクマちゃんがお気に入りなの」

 凪紬くんがそう言って袖を触る。


「たろうとぼくのくまちゃんを刺繍気に入ってくれてるの嬉しい」

「気にいるよ。これはぼくとたろちゃん以外着れない服だもん」


 そう言って笑う凪紬くん。


「さっ。じゃあ凪紬くんの部屋に行こう」


 そう言って凪紬くんを促してまた凪紬くんの部屋に戻る。


「たろちゃん何するの?」


 不思議そうな顔をしてる凪紬くん。


「楽しみにしてて」


 凪紬くんの驚く顔もうすぐ見れると思うと、ワクワクしてくる。



「じゃ——ん」


 ソファーの前に凪紬くんを連れてきてテーブルの上を見せる。

 目を丸くしてぼくを見る凪紬くん。



「たろちゃん!これって」

「うん。ここにお祭り会場を持ってきました」


 テーブルの上にはお祭り定番の料理たち。


「すごい!唐揚げにイカ焼きに。あっ!アメリカドックもある」


 1つ1つの料理を見ながら手を叩いて喜んでくれてる凪紬くん。


「たろちゃんすごい!たこ焼きに焼きそばもある」

「うん。あとね、かき氷もあるよ」

「たろちゃん!」


 凪紬くんがぼくに抱きついてくれた。


「たろちゃんありがとう。準備大変だったんじゃない?」

「ううん。楽しかったよ」



 (凪紬くんが喜んでくれる顔見るためなら全然大変じゃない)



「ぼく、すっごく嬉しい。夏祭りたろちゃんと2人でやれるね」

 凪紬くんがぼくの顔を見上げて笑顔を見せてくれる。


「うん。ここがぼくたちの夏祭り会場」

 そう言ったら凪紬くんも頷いてくれた。


「たろちゃん!2人で夏祭りしよう!」

 そう言って2人でテーブルの前に座る。


「凪紬くん今日はどれから行く?」

「ここはやっぱりぼくたち定番のイカ焼きから行こう」


 そう言って2人で串に刺さったイカ焼きを頬張る。


「うん!美味しい」

 食べながらニコニコ笑う凪紬くん。


 2人でおしゃべりしながらどんどん食べて行く。

 最後にかき氷を食べる。


「たろちゃん、ありがとう。ぼくすっごい楽しかった」

 ブルーハワイを食べて舌が青くなってる凪紬くん。


「良かった。たろうも楽しかった」

 凪紬くんと2人なら、全部楽しい。


「ねぇ。たろちゃん」

 ぼくの方をみて話す凪紬くん。


「来年からは夏祭りこうしよっか。来年はぼくも一緒に準備からする」

 そう言って笑う凪紬くん。


「うん。そうしよ。来年はヨーヨー釣りとかも準備しよっか」

「それいいね!楽しみ」


 凪紬くんがスプーンを置いた。


「早く来年来ないかな。甚平着たい」

 

 そう言って凪紬くんは、袖に刺繍してるクマちゃんを撫でた。



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