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番外編6:一緒に持っていく


「たろちゃん何してるの。笑」


 さっきからずっとぼくの後ろにきてぼくを抱きしめてる。


「凪紬くんを充電中」


 カバンの中に荷物を詰めてながら背中にたろちゃんの重みを感じる。


「だって!明日から5日間も凪紬くんいないんだもん」

 顔が見えなくてもたろちゃんがほっぺを膨らませて不満顔をしてるのがわかる。


「こんなにたろちゃんと離れるのってお正月とか以来?」

 手は動かしながらたろちゃんと話す。


「ううん。5日は初めて!お正月でもちょこっと会ったりしてたよ」

「確かに。お互いの家行き来はしてたもんね」


「うん……。だから……さみしい」


 ぼくの背中にぽつんと落とされた声。

 くるっと向きを変えて、たろちゃんを抱きしめる。


「ぼくも同じ。でも頑張ってくるね」


 授業の一環で研修先に泊まる。

 明日から出発して帰るのは金曜日になる。


「……うんっ」

 ぼくをぎゅ――っと力いっぱい抱きしめてくるたろちゃん。


 (苦しいけど、まぁたろちゃんの気持ちなら)


 苦しさよりも温もりが全身に広がる。


「着いたら連絡する。多分夜だったら連絡できるはずだから」

 たろちゃんの背中にゆっくり手を持っていきそのまま上下に手を動かす。


「凪紬くんの夢のためのお勉強だから。たろう、明日はちゃんといってらっしゃいする」

「うん。ありがとう。寂しくなったらこの部屋で過ごしてね」


 たろちゃんにそう伝える。


 たろちゃんは、ぼくを抱きしめてる腕を少し緩めた。


「いいの?凪紬くんいないのに?」

「うん。だってここはたろちゃんの家と同じ」


「そうする」

 ぽつり、とそれだけ言った、たろちゃん。


 しばらくお互い無言で抱きしめ合う。


「たろちゃん。最後に忘れ物ないか、ぼく荷物の確認する。それ終わったら、一緒にテレビ見よう」


 そう言ってたろちゃんから離れた。


 (温もりなくなっちゃった……)


 たろちゃんの前では強がりを言ったけど……。


 ぼくも、さみしい。


 5日間もたろちゃんに会えないとか考えられない。

 お正月だって、いつだってたろちゃんに会う理由を作って会えてたのに。


 今回は……それはできない。


「うん……。たろうちょっとお部屋に行ってくる」

 たろちゃんはそう言って立ち上がってぼくの部屋から出て行った。


 忘れ物がないか、カバンの最終チェックをする。


 机に目を向ける。


 そこには、初めてくれたクマちゃんと大学に入るときにくれたクマちゃんが仲良く並んでる。



(明日……これ持って行こう)


 立ち上がって、机に向かう。


 そのまま2体のクマちゃんをそっと抱き上げる。


 (この子達を持っていけば、さみしくないかな)


 ぎゅっと胸に抱き締めてみる。


 さっきのたろちゃんの温もりを……感じた気がした。


 うん。この子達を持って行こう。

 そしたら5日間大丈夫な気がした。


 カバンに入れるスペースを作ろう。

 今日から入れるのは嫌だから明日の朝入れてと頭の中で段取りをつけ始める。


「凪紬くん」

 たろちゃんが部屋に戻ってきた。


「たろちゃんおかえり」

 カバンから目線を上げてたろちゃんをみる。


 両手を後ろに隠してるたろちゃん。


「たろちゃん?」


 何も言わないたろちゃんに声をかける。


 そのままゆっくりぼくに近づいて来た。

 そして、そのまま左手をぼくに差し出した。


 そこには……。


「クマちゃん?」


 カバンにつけてるクマちゃんよりも少し大きなクマちゃん。


「うん。あのね、この子をぼくだと思って連れて行って欲しいなと思って……」


 少しだけ視線を下に向けて話すたろちゃん。


 たろちゃんに近づき、そっとクマちゃんを受け取る。


「いいの?」

「うん。連れて行って欲しくて作ったの」


 恥ずかしそうに笑うたろちゃん。


「たろちゃん」

 ぼくはクマちゃんを抱きしめたいまま、たろちゃんに抱きついた。


 クマちゃんとぼくを抱き締めてくれるたろちゃん。


「嬉しい。ぼく……あのクマちゃんたちを連れて行こうって思ってた」


「へへっ。たろうと凪紬くん考えることは同じだね」

 たろちゃんが優しい声で言ってくれる。


「うん。ぼくもたろちゃんと5日も一緒に入れないのさみしいと思ってた。でも……」


 たろちゃんに抱きついてたの離れる。


 そしてたろちゃんにクマちゃんを見せる。


「このクマちゃんがいれば頑張れる」


 たろちゃんを安心させるように笑いかける。


「うん。たろうと思って一緒にいて」

 たろちゃんもそう言って頷いてくれる。


「うんっ!これでぼくもっと頑張れる!」

 たろちゃんにガッツポーズをした。


「たろうもさみしいけど、凪紬くんがクマちゃんを連れて行ってくれてると思って頑張る」

 たろちゃんもぼくにガッツポーズをしてくれた。


 明日の朝、カバンじゃなくて袋に入れよう。

 たろちゃんの気持ちが嬉しい。



「じゃあ、たろちゃん行って来ます」

 朝いつもの駅でたろちゃんにそう言う。


「うん。凪紬くん頑張って来てね」

 たろちゃんも笑ってそう言ってくれる。


 肩に大きめのカバンをかけて、左手にはクマちゃんが入った袋が握られてる。


「クマちゃん連れて行くから頑張れる。しっかり勉強してくるね」

 そう言ってたろちゃんに手を振って大学までの道のりを歩き始めた。


 左手に心地いい重みを感じ。



 (うん。これがあるからぼくは頑張って来れる)


 歩きながら袋に入ったクマちゃんをみて微笑んだ。


 大学に着いて、同級生たちとバスに乗り込み目的地に向かう。

 荷物はトランクに預けたけど、袋は握った車内に持ち込んだ。


 そのまま移動して今日から数日間過ごす場所に着き、各自割り当てられて部屋に入る。


 まず、袋からクマちゃんを取り出した。


 ベッドの枕の隣にクマちゃんを置く。


 (ここにしよう。数日間よろしくね)


 クマちゃんの頭をそっと撫でる。


 そしてスマホを取り出しクマちゃんの写真を撮った。


 そのままスマホのメッセージアプリを立ち上げた。

 

 

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