第3話 2人目の殺人
実は、獣人の村編は、とっても短いのです!
今回から少しグロ入ります。
第3話 2人目の殺人
「なっ……」
目の前には、首がちぎれた遺体。顔から見て、女性だろう。そして、遺体の近くには膝から崩れ落ちているうさぎの耳と尻尾が生えた女性がいた。俺、エルヴィン・ノワールは慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですか?怪我は?」
「だ、大丈夫です……でも……これ、偽物じゃ……ない、です、よね……?」
震える声で彼女は言った。どう、返したらいいのだろう。何を言っても、彼女を苦しめそうだ。
「お兄!」「エルヴィン!」「何かあったのか!?」
後ろから、俺の双子の妹のクラリーセ・ノワール、彼女が幼い頃からの友人の町娘であるレストワ・パドーラ、そして、青髪褐色の村長の息子のガイスト・シュヴァルが駆け寄ってくる。そして、遺体を見て固まった。
「これは……」
「……………………2人目の殺人だ……」
俺はそう答えた。
「クラ、レストワ、前の遺体……覚えてるか?」
そう聞くと、2人は静かに頷く。
「首が噛みちぎられかけてたよ……」
うんうんとレストワの言葉にクラは頷いた。
「……同一犯だろうな」
俺が言い終わると、ガイストが近づいてきて、遺体を抱えた。
「……何してるんだ?」
「村1番の医者に一応見せに行く。医者にしか分からないことがあるかもしない」
成程、納得だ。レストワとクラに近くに居た女性を任せて、俺はガイストについて行った。
ー
「不気味な家だな」
「この村自体が不気味だから何ら問題は無い。入るぞ」
そう言ったまま、ガイストは動かない。俺をジロリと見る。………………あっそっか、ガイストは遺体で両手が塞がっている。俺が開けないとなのか。
「お前、鈍感だよな」
「……?」
まぁ、察する能力は低いと思うが……。
そのまま、家に入ると、大きな魔法陣のような物が床にほられていた。魔女みたい。
「アールツティン」
「…………入れよ。開いてる」
高い声が聞こえ、部屋に入る。消毒や薬草の香りがぶわっと押し寄せてくる。
「よぉー。久しぶりだな。ガイスト」
「あぁ…………エルヴィン。こいつはアールツティン。猫人族の医者だ」
アールツティンと呼ばれたのは小さめな少女だ。癖のあ?茶髪を伸ばしており、くりくりとした大きな目と猫の耳と尻尾、大きな三角帽子とローブ、その下には白衣を着ている。魔女みたい。
「ん……この人、獣人じゃないの?」
ふと疑問がよぎる。
「あたしみたいな猫人族は珍しいんだ。獣人の上位種族って捉えてもらって構わない。……それで、あんたは?」
アールツティンが椅子からジャンプして降りる。
「俺はエルヴィン・ノワールって言います。死神で……」
「あぁ、ストロベリー・ノワールに住んでる双子か」
え……なんで分かるの……怖い
「なんで分かるの?怖いって顔をしているな……あたしは千里眼でな、100年ほど前に死神の双子が生まれたことを直感していたわけだ。凄いだろ」
「えぇ……?まぁ」
やばいな……完全にアールツティンのペースに飲み込まれてる……
「アールツティン。本題だ」
ガイストが間に入って制してくれた。アールツティンはつまんなそうに口を尖らせた。
「その遺体のことだろ?わーってるって。その遺体を戻す事は無理だ。確かにあたしは細切れにされてようと、臓器ぶち取られても、元に戻すことができる。でも、それは生きてる時限りだ。生きてなきゃ意味がない」
椅子に座り、くるくる回りながらアールツティンはそう言った。
「あと、獣人でも牙で人を殺せるような奴らは限られてるぞ」
「えっ」
「私みたいな猫人族、ガイストみたいな普通の猫の獣人、狼の獣人、虎の獣人……まず兎とかリスとかの小動物系の獣人には無理だろうな。人の骨は頑丈だ。首を噛みちぎるのであれば、力強い力と硬い骨に負けない歯が必要だ。まぁ、獣人じゃないかもしれないけどな」
アールツティンはそう言って、イタズラっぽく笑った。
ー
「遺体はアールツティンが親族に引渡しに行ってくれるそうだ」
アールツティンの家から出てきたガイストがそう言った。
「そうか……」
俺たちは獣人の仕業だと思ってこの村へやって来たけど、見当違いだったのだろうか。でも……この2人目の殺人は村の中で起きた。
「なぁ」
「なんだよ。今色々考えてるんだけど……」
ガイストは相変わらずの無表情に近い顔で言ってきた。
「寝間着から着替えなくていいのか?」
「……あ」
ー
「ふぅ、」
ガイストに言われ、俺はいつもの服に宿で着替えた。リボンは昨日のガイストとの戦いで切れてしまったので、別の色のリボンを代用で付けている。思い出の品だったんだけどな……
「その髪型は固定なんだな」
「ん?まぁ、色々とあってこれが1番気に入ってるんだよ」
リボンで低めのサイドに結んだの髪型。クラとの思い出がこの髪型には沢山詰まっている。
「ふーん……あのままでも良かったのに」
「しばんなきゃ動きづらいだろ」
そこは理解してもらいたいな。君こそ、フードは邪魔じゃないのかい?
「お兄!」
「クラ」
クラが手を振りながら駆けてくる。手には新聞を持っていた。
「朝刊貰ってきたよ」
クラは俺に新聞を手渡す。
「おっ、さんきゅ」
これで朝の事件を憲兵がどう考えているのかが分かる。
「…………………………」
「なんて書いてあるんだ?」
ガイストが新聞を覗きこんでくる。
「…………狼の仕業って書いてある」
そんな事ありえないのに。ここら辺には温厚な性格の狼しかいない。理由は獣人族が飼い慣らしいているから。それに、狼1匹であんな凄惨な事が出来るのだろうか?にわかに信じ難い。
「憲兵は殺人と考えていないようだな」
「まぁ……そうだよな。村の掟で殺しが禁止されてるのに殺す理由がないよな」
俺は肩を落とした。クラも絶妙な顔をしている。やめてくれ、その顔ジワジワくるんだよ……
「なにお兄ったらニヤニヤしてるの」
その顔のせいだよ……
「そういえば、クラ、レストワは?」
「レストワちゃんなら、村長さんとお話してるよ。オセロですっかり意気投合しちゃったみたい」
レストワ恐るべし。ガイストも引いちゃってるじゃん。
「……2手に別れて調査するか。ガイストは俺と来てくれるか?クラはレストワと」
「分かった」「了解!お兄」
こうして俺たちは2手に別れた。ただ、これが悲劇始まりだなんて、誰が思うだろうか。
ー
村の外、獣人の森、1匹の生き物が通った。狼のような、猫のような兎のような、蛇のような。よく分からない、キメラのような生き物。唸り声をあげて、とある1点を見つめていた。目線の先には、青髪の獣人といる、赤髪の死神が居た。




