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選挙活動

 この女性だけの町の政党は、民権党と女性党しかない。

 JF党や正道党など過激派な政党は一時的にセンセーショナルな印象を残すもテロ事件を起こして自壊し、結局その二党だけが残っている。


 両党を平たく言えば、内向的と外向的だった。




「隗より始めよと申します!我々が清廉潔白であればあるだけ、正しい意味で後を追う存在も出てまいります!民権党、民権党の手によりこの町をよりきれいに、より正しくします!どうかお願いいたします!」


 現在の政権与党である民権党の演説。


 選挙カーの上で手を振りながらと言う極めて古典的な姿を見せながら、比例代表第2位の議員が海風に吹かれている。


 比例代表側の議員として見れば、政党の価値>本人の価値であり投票用紙も民権党または女性党に丸を付けるだけと言う方式である以上政党をアピールするしかない。

 一方で小選挙の候補者はそれこそどぶ板選挙を行うと共にポスターの撮影も行われている。比例代表で貼り付けられるポスターは基本両党の党首だけで、比例代表1位でも表に出ない事も多い。これはもう党利党略であり、政治信条とは違う。



 一六〇人もの議員が職を失うに当たり、民権・女性党内で選別が行われた事は想像に難くない。

 各地区ごとに小選挙区担当・比例代表担当の議員の選別が行われ、秘書や事務所職員などになった元議員も相当な数がいた。そして立候補者になれた人間も、それぞれ勝算によって期待値も違って来る。激戦区であればあるだけ熱も入り、楽勝そうだったり逆に勝算が薄かったりすると予算を削られる。


 実際この北区はまだともかく、西区における女性党の活動は極めて貧相だった。

 当主の応援すら一日しかなく、それも中央区にほど近い4区だけ。後は西地区支部長とでも言うべき比例代表1位の候補に丸投げしているだけだった。

 


「東区の候補にも予算を回してほしいんですがね…」

「そればっかりはうまく行かないって言ってましたよ」

「この北区にも気合い入れて欲しいですけどね、こっちも小選挙区全勝を狙いたいのに」

 候補者が演説をする一方で事務所の旧議員及び職員たちも党の事情を思い苦笑いをしていた。勝つべき所で勝ち、捨てるべき所は捨てる。そんな容赦のない政略こそ、選挙戦だった。




※※※※※※




「私たちは!私たちの正しさを!外の皆様にお伝えせねばなりません!そのためにも!我々女性党は世界のために、決して無理をせず、されど確実に拡大して行きます!」


 一方、女性党も女性党で張り切っていた。


 かの正道党事件で空室の目立つマンションの下で、こちらは小選挙区に立候補した議員が政策を訴えかけている。








 北区は農・漁業区でありどちらかと言うと富裕層の多い区だ。

 西区は第二次産業従事者が多くはっきり言って女性だけの町の中で一番の「セレブ街」である、もっともそれらしい店は中央区や南区にあるのでセレブ街には見えないのだが。

 東区は逆に労働者階級、と言うか有り体に言って貧困層が多くかつてJF党が圧勝した事のある地域だ。

 南区は女性だけの町と外の世界の玄関であり、そのため移民者やそれに携わる人間が多い。一応東西にも女性だけの町と外の世界をつなぐ門はあるが、物資も人員も八割以上南から来ている。


 そして中央区は誠心治安管理社の本社および町議会が存在する文字通りの中心であり、南区と並んで先進的な風を思わせる街並みになっている。



 民権党と言う保守政党を好むのがどこか、女性党と言う外向的政党を好むのがどこか、実に分かりやすい構図だった。


 そして選挙の要がどこにあるのかは、もっとわかりやすかった。

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