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第2章「ひとすじの光、たゆたう影・前編」

ご訪問ありがとうございます。

この物語はプロローグ+全8章+エピローグ構成となっています。

本日は第2章「ひとすじの光、たゆたう影」の前編をお届けします。


小さな憧れと、あたたかな時間。

何かを好きになる気持ちは、きっと誰の心にもあるものですよね。

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです──。

日曜日の昼下がり、明るく澄んだ空の色がいつもより輝いて見える。

解放感のある心地いい風が駆け抜け、りりあの胸は高鳴っていた。


《ご来場ありがとうございます。本日13時より、当デパート屋上にて『プリティ☆マジカル ルミナスハート』のヒーローショーを開催いたします。

お子さま、大人の方もお誘い合わせの上、ぜひご覧ください》

──落ち着いた女性の声が、店内のスピーカーからやわらかく響き渡っている。


憧れの女の子にとっては"本物"のルミナたちが現れる『プリ☆マジショー』。

りりあもこの日を心待ちにしていた、女の子の一人だ。

無垢な少女たちの瞳の先には、「ちびっ子あつまれ!ヒーローショー!」の幕が掲げられた特設ステージが見える。

《光のきらめき、あなたに届けっ!プリティ☆マジカル・ルミナ!よいこのみんな~ぜ~ったいっ見にきてね~♡》

──主人公ルミナの元気な声が、ステージ周辺から聞こえていた。


家族連れが大半の中、ステージ前のベンチ最前列に、

周りの子どもたちよりも少し大きなおねえさんが一人堂々と腰をかけていた。

「う~ん、はやくはじまらないかな~♪」

兄・拓実からもらった“大切な宝物”を握りしめ、

今か今かとショーの始まりを待つ、りりあの姿があった。


「リリちゃ~んっ♡」

聞き馴染みのある可愛らしい声のする方に目線をやると、

元気よく駆け寄ってくる一人の少女がいた。

「あっ、そらちゃん!そらちゃんのママさん、こんにちはっ♪」

小さな子の目線に合わせて、少しかがんで挨拶をするりりあ。

「リリちゃん、こんにちはーっ!」

──お人形のように愛らしい女の子、名前は「美空 (みそら)」。

この春、小学校に入学するピカピカの一年生だ。


「こんにちは、りりあちゃん。やっぱり今日も来てたのね~」

「もちろん!今日もばっちり来ちゃったよ~」

元気な女の子と、優しげな若いお母さん──

この二人とは、以前プリ☆マジショーで出会って以来の"友達"だ。

最近のショーの時は、この三人で観るのがいつもの楽しみになっていた。


「あっ!リリちゃん、そのルミナちゃんっ、かわいい~♡」

「いいでしょ~?おにぃにもらったんだ~♪」

「え~っ!いいなぁ~~…」

母親の静かに首を横にふる動きがより一層、美空の欲望に火をつける。

「え~~~!そらもほし~~っ!!」


今にも駄々をこねそうになった、その時──

不穏な音楽と共に、ステージの左右から白いガスが勢いよく噴き出した。

『ウワッハッハッハ~~っ!!』

悪そうな怪人の声が響き、子どもたちの目が一気にステージへと引き寄せられる。

ようやく、ショーの開幕だ。

ステージでは、怪人が子どもたちの前をウロウロと歩き回る。

『う~ん、今日のオヤツはどの子にしようかな~?』

会場内に子どもたちの悲鳴が響き渡たり、これぞ怪人冥利に尽きるといったところだ。

『やめなさ~いっ!!』

正義感いっぱいの声に、先程までの悲鳴がかき消されていく。

『光のきらめき、あなたに届けっ!プリティ☆マジカル・ルミナ!!』

ルミナを筆頭に仲間のブレイズ、ミストが登場し、会場の熱気は一気に最高潮に!

ステージを見る、りりあと美空の目は、ルミナという希望の光に照らされ輝きに満ちていた。


『悪はぜ~ったいに許さないっ!闇を照らす、まっすぐハート☆正義はいつも、輝いてるんだからっ♪』


ルミナスステッキを振りかざし、

あっという間に怪人を退治して、いつもの決めポーズ。

大きな拍手に包まれて、ショーは幕を閉じた。


その後も、りりあと美空はプリ☆マジ談義に花を咲かせていた。

「いつも美空と遊んでくれてありがとうね~」

美空の母親が、微笑みながら言った。

「ううん、わたしのほうこそ、そらちゃんとお話しできて嬉しいよっ」

少し照れたように、りりあは言葉を継ぐ。


「……友だち、そらちゃんしかいないからさ……」


「え~っ!?リリちゃんおともだちいないの~~!?」

純粋なその言葉は、鋭くりりあの胸を突いた。

「わたしね~、おともだちた~くさんいるよっ♪

やっちゃんでしょー、しんちゃんでしょー、みかちゃんにー、ともくんもー……それから~~」

「こらこら、美空。りりあちゃんが困ってるでしょ~」

母親が優しくたしなめる。

「ごめんね、りりあちゃん。この子、悪気はないのよ」

美空の頭を軽くなでながら、母親が静かに謝った。


「だいじょーブイッ!本当のことだからっ♪」


少しおどけて、ピースサインをするりりあ。

「きゃはははっ!リリちゃん、おもしろーいっ♡」

美空の無邪気な笑顔に、りりあもつられて笑った。


──この時のりりあは心のどこかに小さな痛みを感じながらも、それでもあたたかく満ち足りていた。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

今回の前編では、りりあの日常に光が差し込むような場面を中心に描きました。

後編では、りりあの世界が少しづつ変化していきます──。


次回【第2章・後編】は、【5月28日(水)18時頃】を予定しています。

よろしければ、続きも覗きに来ていただけたら嬉しいです。

※この作品は第13回ネット小説大賞応募作品です。

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