「孤独な魔物が少年を守る話」
我は魔物だ。
長い間、孤独に生きてきた。
森の中の獣では話をすることなどできず、さりとて人に見つかれば攻撃されるため、森の奥へと逃げるしかなかった。
そのため、我は長い間、一人で生きるしかなかった。
このまま一人、寂しく生きるしかないのだろうか。
それをいつまで? 誰とも話すこともできず?
そんなことを考える日々であった。
我はたまたま人に見つかり、大規模な討伐体を組まれて、追われることとなった。。
そして、大怪我を負い、どこかの屋敷の森に身を隠すこととなった。
「我はこれで終わりなのか……」
と思っていた矢先、
「誰かいるのかい……?」
と、声がした。
それが少年との出会いだった。
ぼっちゃんは我に驚きつつも、つたない手で手当てしてくれ、食料を運んできてくれた。
我を初めて恐れずに、おしゃべりに興じてくれたのが少年だった』
“この少年とともにいたい”
心からそう望んだためか、我はいつの間にか人間の姿になっていた。
どうしてそうなったのかはわからないが……なに少年といられるなら些細なことだ。
女性の姿となった我は少年の侍女として雇用され、共に過ごすようになった。
少年は王族の落とし子であり、権力から遠ざけるためにこの辺境の地で過ごしていた。
しかし、我にはどうでもいいことだった。
少年――ぼっちゃんもまた孤独であり、我は少年の境遇に深い共感を覚え、共にいたいと願ったのである。
だが、屋敷がいま炎を上げている。
ぼっちゃんと我の屋敷になにものかが押し入ってきたからだ。
おそらく、坊ちゃんが生きていると困ることが起きたのだろう。
だが、しかし、我がいる限り、ぼっちゃんに手出しはさせない。
「ぼっちゃん、あなたは我が必ず守りますから――!」
そうして、我は人化を解き、元の魔物の姿へと戻っていった。