76 復興支援の依頼
ガルーム第二王子がナトラ王国に緊急帰国して、しばらく経った頃。
シーダム王国のルートロック王太子殿下宛てに一通の封書が届いた。
「殿下、こちらガルーム第二王子殿下からのお手紙でございます」
宰相のサルフとともに封を開け中身を確認する。
「う~ん。やはり疫病の件と洪水被害のあった地域の復興支援のお願いか。まぁ、我が国でも同じような問題を抱えているのだから、ともに手を取り合ってこの問題を解決していかないといけないだろうな」
ルートロックは予想していた通りの内容だったので、支援するために人員はすでに確保してあった。
王都周辺の領主にお願いして、各地域から二十名ずつ人手を確保しており、延べ百名の人員を被災地に送る段取りがしてある。
「貴族学院で共に学んでもらったフレッドは、支援に行くように手配はしてあったのだがな……」
ルートロックは支援要員の中に先方から指名してきている名前があり少し驚く。支援に来て欲しいと書かれていたのは妻であり、王太子妃のアラマンダだった。
「アラマンダを指名してくるとは……。どうしたものかな」
ルートロックは、ナトラ王国に何か意図があるのか、前回のファイ国に渡航した時のように何らかの陰謀に巻き込まれる予感がして、アラマンダを支援要員の候補には考えてもいなかった。
「今回は、毒に関する知識は不要ですので、アラマンダ王太子妃殿下が訪問する必要はないかと存じます」
どうやらサルフも同意見のようだ。
「……どういうつもりでアラマンダの名前を出したのかはわからないが、恐らく貴族学院でガルーム第二王子と共に治水事業の話し合いをしていたから、そのまま打ち合わせしたいという意図があったのかもしれないな」
ルートロックは、ガルーム第二王子の考えも理解できるが、王太子妃が隣国に行く必要など全くないはずだ。
「サルフ。ナトラ王国へは百名の人員を復興支援として送るし、フレッドも行くと記載して返事をしておいてくれ。アラマンダは自国の公務で忙しいから、残念ながら訪問できない旨もあわせて書いておくべきだな。せめて疫病が収まってからなら、被災地へお見舞いに行くのは可能だろう」
ルートロックは、先だってのファイ国でアラマンダが牢屋に入れられた件を、未だに許してはいない。離れた国で、奮闘している彼女も素敵だが、不当な扱いを受けたのだから二の足を踏むことはしたくない。
「そうですね。アラマンダ王太子妃殿下にはお子を産んでいただくという役目もございますので、他国に行かれてしまうとそれの日が遠ざかるのは、当たり前のことでございます」
「その件も、理解している」
ルートロックもアラマンダとの子供を早く授かりたいと願っている。自分自身も多忙だけれど、何年も子供が授からなかったら、側妃を娶れと臣下が進言してくるのは目に見えている。
(私には……アラマンダ、彼女一人で十分なのだから早く子を授かった方が良いのかもしれないな)
ルートロックは王太子としての役割も頭ではわかっているけれど、もう少しアラマンダと二人だけの甘い生活を楽しみにながら共に内政を強固にしたいとも考えている。
(はぁ~。アラマンダの事を考えていたら……彼女を抱きたくなってしまったじゃないか)
ルートロックは、火照る身体のまま、ひたすら執務をこなし夜まで熱を孕んだまま過ごすことになった。




