70 強固な魔法陣と絶世の美女
メオに貴族学院の門を通過する時に、防犯対策として顔認証と個人情報の照合ができる魔法陣を展開してもうことになった。
「メオ様。今日はよろしくお願いいたしますね」
アラマンダは制服に袖を通しながら、指輪から出て来た白くてモフモフのメオに、魔法陣を強固にして欲しいと再度お願いをする。
「ルートロック殿下がおっしゃるには、事前に王宮魔術師の方に魔法陣を描いてもらって可能な限り魔力を注いでおくとのことですわ」
「わかったにゃ」
ルートロックとアラマンダが朝早くから動いているのには訳がある。
学院生が登校してくるよりも先に魔法陣を作っておき、今日、魔法陣の上を歩く際に顔と個人情報を魔法陣本体に記録してしまうためだ。
学院生が登校してくるよりも先に、魔力たっぷりの魔法陣を用意しておく必要がある。
メオは白くて長い尻尾をピンと立てながら、アラマンダの横を歩いて貴族学院まで一緒に向かった。
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門に到着して、アラマンダは周囲を見渡す。
「まだ、誰も登校してきておりませんわね。人が来ないうちに魔力を注いで強固にしておいていただけますか?」
ルートロックが早朝に手配して、王宮魔術師がすでに発動させてくれている魔法陣が門の中央に描かれていた。
「これだけだと十数人しか登録できないにゃ」
メオは王宮魔術師が作成した魔法陣の上をぐるっと一周しながら歩いて、容量が小さいことを指摘する。
きっと何日間かにわけて、魔力を注げば王宮魔術師だけでも個人情報と顔認証ができるくらいは魔力を貯められるだろうけれど、今回は隣国ナトラ王国のガルーム第二王子の来訪が目前に迫っている。
あまり時間がないから、アラマンダの聖獣メオに頼らざるを得ない状況だ。
メオは、すでに展開されている魔法陣の真上まで来て、ちょこんと座る。
傍から見れば、白い可愛らしい猫が門の中央に座りこんでいるようにしか見えないだろう。
「魔力注入!」
メオは可愛らしい肉球を魔法陣の中央にペタンと押し当てた。
その瞬間。
パァーーーーーー
眩しくて目が開けていられないほどの閃光が魔法陣全体を包み込んだ。
一瞬光に飲み込まれて、見えなくなったメオがゆっくりと姿を現す。
光がゆっくりと落ち着いてきたということだ。
「アラマンダ。できたにゃ~」
メオは自分の魔力がたっぷりと注がれた魔法陣を見て、ニンマリと笑う。
(メオ様、何だか嬉しそうですわね)
メオは「上出来!」と言いたげな表情で、魔法陣が強固になったことに満足しているように見える。
(我ながら完璧にゃ。ついでに結界も張っておけばよかったかにゃ? さすがにそれはやりすぎかにゃ?)
メオは、自分の力が強すぎてどこまでやればちょうど良いのか少しわからなかった。
手加減しておかないと、人間が聖獣に頼りっぱなしになることは目に見えている。
そうなると、人間は自分自身の努力を怠るようになってしまうということは、今までの歴史の中で何回か経験している。”やりすぎない”ということも時には大事なのだとメオはわかっていた。
「ありがとうございます。メオ様」
「どういたしましてにゃ~」
アラマンダは、メオにお礼を述べてから今後のことについてメオに確認してみる。
「ところでメオ様は、私が授業を受けている間はずっと指輪の中にいるのでしょうか? 指輪の外に出てのんびりと過ごされますか?」
「ん~、どうしようかにゃ~」
メオはどうやって過ごそうか、少し悩んでいる。
メオは猫の聖獣だから学院内をうろちょろしていても目立たないだろうが、校舎の中を歩き回るのは難しいかもしれない。
「そうにゃ!」
メオは、何か思いついたような顔をしてアラマンダの方を見上げる。
(……メオ様……子供が何か悪だくみをしている時のような……表情に見えるのですが、気のせいでしょうか……)
当たらずとも遠からず。アラマンダの予想は的中している。
まだ人が誰もいない早朝の魔法陣の上で、メオがニヤリとアラマンダに向かって笑う。
アラマンダもメオは確実に何か企んでいるのだとその時、気が付く。
その瞬間。
ポンッ
一瞬にしてメオが姿を消す。でも、指輪に入ったような感じには見えなかった。
「メオ様?」
アラマンダは、メオが先ほどまでいた魔法陣の上を眺めているけれど気配が感じられない。
「アラマンダ様」
その時、一人の女性の声がして思わずアラマンダは後ろを振り返る。
(メオ様が消える瞬間を目撃されてしまったかしら……)
アラマンダは、ドキドキしながら声の主に視線を向ける。
そこには、絹のような白い髪に翡翠色の瞳をした絶世の美女が制服姿でこちらを見てほほ笑みかけている。
「アラマンダ様。私、メオと申します」
とても上品な笑顔で、美女が話しかけてカーテシーをしてくれる。
(ん? 何て言いましたか?)
アラマンダの頭には一瞬、疑問符が浮かぶ。
(メオと申します?)
先ほど耳に届いた言葉を反芻する。
「え!! もしかして!!」
「そうですの。アラマンダ様、私ですわ。あなたの最強のパートナーのメオですわ」
アラマンダは、口元に手を当てて驚きを隠すことができない。
聖獣メオが……姿を変えて化けることが可能だとは思ってもいなかったからだ。
「うふふふふ。私の能力の一つですわ」
「でも、メオ様。魔石と顔認証を登録しないと学院内には入れませんのよ?」
アラマンダの言葉に、メオは美しい笑顔とウィンクで答える。
「魔石の情報の上書きも魔法陣に認証させてしまうのも簡単ですもの。だって、私の魔力たっぷりの魔法陣なのですから」
(さすが……メオ様。レベル9999の能力以外にも姿を変えられるなんて……お見事ですわ)
アラマンダは、この時、突如編入していた絶世の美女の噂でもちきりになると確信した。
これにより、アラマンダと共に美女メオが学院に一時的に通う事が決定したのである。
お読みいただきありがとうございます。
メオ様も学院に通うことになりましたね。
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