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66 制服

 アラマンダが貴族学院でナトラ王国のガルーム第二王子の補佐役を務めることが決まった数日後。

 ルートロックが、上背があり堂々とした体躯の男性を執務室に連れてきた。


「アラマンダ。カンタリー公爵家の令息であるフレッド・カンタリーをもう一人の補佐役にすることにしたよ」


 アラマンダは、王宮で開かれる夜会などにルートロックと婚姻する前は参加してこなかった。しかしながら、ルートロックとの婚儀の祝いのパーティーでカンタリー公爵家の当主と一緒にお祝いの挨拶に来てくれた目の前の男性、フレッドのことを思い出す。


「ご無沙汰しております。アラマンダ王太子妃殿下」

「こちらこそ、お越しいただきありがとうございます。私だけでは補佐役、とても心細かったので引き受けていただき感謝申し上げます」


 フレッドは海松(みる)色の短髪で、服を着ていても胸板が厚いのがよくわかる。確か、公爵家の中でもカンタリー公爵家の一族は頭が切れるだけでなく武闘家でもあるというのは有名な話だった。


(隣国のガルーム第二王子を守るだけでなく……私の身の安全確保できるように考慮してくださった人選に違いないわね)


 アラマンダはルートロックが、アラマンダの身にも危険が及ぶ事がないように、頭の回転が良くて、なおかつ腕の立つ者を選んだことを感じとる。常にメオがいる指輪を身に着けているのだから、そうそう危険な場に遭遇するとは限らないけれど、他国の王子がいる以上、護衛は多ければ多いほどいい。


「アラマンダ。フレッドは貴族学院に今、在籍しているからとても心強いと思う。わからないことはフレッドに聞けばいいし、アラマンダはナトラ王国からガルーム第二王子が到着する前に通い始めて、ある程度学院内の施設や授業内容を把握しておいてもらえると助かるのだが」


「ルートロック殿下、かしこまりました。来週から通えるように準備致します。フレッド様、どうぞ宜しくお願い致します」


「こちらこそ宜しくお願い致します」


 フレッドは、見た目からもわかるようにどちらかというと硬派で無口なタイプのように見える。

(フレッド様には確かまだ決まった婚約者はいらっしゃらなかったわよね。これからの情勢を(かんが)みて隣国の高位貴族がシーダム王国に輿入れしてくる可能性もゼロとは言えないということよね……)


 ひょっとしたらそういう可能性も視野に入れて、ナトラ王国にもフレッドの人となりを知ってもらうためにルートロック殿下は彼を選んだということも考えられる。

 ルートロックは他者が気が付かないようなことまで、先を見通すことができる。

(でも、ひょっとしたらフレッド様、ご本人がただ単に女性に興味をあまり示してこなかっただけ……という可能性もありますわね)


 アラマンダが、フレッドを起用した経緯を想像しているとルートロックは、貴族学院に必要な物を思い出して声を発する。


「そうだ! アラマンダ。忘れていたけれど、貴族学院には制服があるんだ。男爵や子爵も通うからお洒落に気を取られて勉学がおろそかになったり、家計を圧迫しないように制服を着ることになっている。私も学院に在籍していた時は制服を着用していたが、意外と着心地が良いから気に入ると思うよ」


(まぁ、前世でも制服はありましたが、アラマンダとしても制服を着られるなんて!)


 アラマンダは、森野かおりの時にセーラー服とブレザーを着た経験があったことを思い出して、懐かしく感じる。

(さすがにセーラー服はシーダム王国にはないのでしょうけど、どんな制服かしら!!ちょっと楽しみですわ!)


 アラマンダは自分の制服姿を想像してワクワクしてくる反面、目の前の愛する人の制服姿を見逃してしまったことを残念がった。


「私も……ルートロック殿下の制服姿……見てみかったです……」

「ははははは。そうだったね。アラマンダは見た事が無かったか。アラマンダもきっと制服姿が良く似合うと思うぞ。フレッド、アラマンダに他の男が寄ってこないようにしっかりガードをするんだぞ」


 アラマンダの指輪の中にいた聖獣メオも、その場に居合わせたフレッドも、夫婦の甘い会話をただひたすら静かに聞いていた。 

お読みいただきありがとうございます。


制服の話を書いていて、ふと思い出しました。

想いを寄せていた人にお願いして、卒業式の日にいただいた大事な制服の第二ボタン。

どこにしまい込んだかなぁ。

甘酸っぱい恋の想い出とともにどこかにあるとは思うのですが……。

今の時代は卒業式に第二ボタンはもらったりしないのでしょうか……。どうなんでしょうね。

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