62 ユイン王子の心の痛み
それから数日後、ユイン王子が目が覚めたと連絡が入り、アラマンダはユイン王子に会いに行った。
(なんて言葉をかけたら……いいのかしら。きっとご本人が一番つらいに違いないわ)
「失礼いたします。ユイン様、お加減いかがでしょうか」
「アラマンダ様!! 良かった! ご無事で!!」
扉をゆっくりあけるや否や、ユイン王子が寝台から身を乗り出して、駆け寄ってこようとする。
「ユイン様、いけません。まだ歩き回って良いとは医師に許可されていないんでしょう?」
「あはは。つい嬉しくて無意識にアラマンダ様のところに歩みよろうとしてしまったよ!」
(この明るさは……空元気なのかもしれないわね)
「目は……痛みますか?」
「……あぁ、まだズキズキとはするけれど、我慢できるくらいだよ」
(そんなはずないでしょうに……鎮痛剤がないとかなり辛いはずだと医師がおっしゃっていたもの)
アラマンダは、綺麗な赤い瞳が一つしか向けられていないのを見るとポロリと本音をこぼす。
「私……ユイン様の宝石のように赤く輝く瞳が大好きでした。片目だけになってしまい……とても残念です。あの瞳にもう一度、お会いしたかったです……」
「ありがとうございます。私は、今、まだ見えているだけでも幸せですよ。こうして、アラマンダ様が悲しんで下さる泣き顔を見ることができますからね」
ちょっと冗談まじりに慰めてくれるが、ユイン王子の心の痛みは誰にも代わってあげられないのだとアラマンダはわかっていた。
(彼は……自分と向き合って、この状況を受け入れ生きていくしかないものね。私は遠くから応援することしかできないわ)
「私は、ずっとこの赤い瞳で……血を連想させるからと人を不快にさせてきました。だから、それが一つでも取り除けたら、嫌な思いをする人が少しは減るでしょう? だから、後悔はしていないのですよ。それよりも、私はアラマンダ様が捕らえられて、無実の罪で処刑されてしまうのではないかと、そちらを心配しておりました。本当に、ご無事で良かったです。アラマンダ様に何かあったら、ルートロック王太子殿下に顔向けできませんからね」
「ご心配いただきありがとうございます。今は、ノア様が国王陛下の容態を見ながら、公務をサポートしていらっしゃると伺っております。……あのう、他の第二王子、第四王子は今、ファイ国にはいらっしゃらないのでしょうか?」
「私が、お話していなかったから、こんな後継者争いの渦中にアラマンダ様を巻きこんでしまったのですよね。説明が至らず、申し訳ございません。第二王子、第四王子は今、他国に留学中なのです。こんな王位継承権争いの中にずっといたら、疲れますからね。兄たちは学びと息抜きを兼ねて外遊中なのです。だから、このファイ国にいたのは第一王子、そしてノア第三王子と、この第五王子の私、ユインの三名ですね」
「そうだったのですね。ご説明ありがとうございます。それと……ユイン王子の笑顔を確認することが叶いましたので、明日、一度シーダム王国に帰ります」
「そうですね。まだ第一王子の処罰をどうするか……や、国王陛下が公務復帰できておりませんので、ゴタゴタのこの国にアラマンダ様を留め置くのは、さすがに心苦しいです」
「よそ者の私がいつまでもこの国に滞在するのもおかしいですからね。あとは、ババタの駆除は終わりましたけれど、食料支援が残っておりますでしょう? その件をルートロック殿下と話合ってから、またお会いしたいと思います」
「そうですね。それがいいかもしれません。王都以外の地域では、稲や小麦が食べつくされて主食に困って、餓死する者が出てきていると報告は受けているのですが……王室がこんな感じだから、国民の食糧事情を改善するのには、正直、時間を要するのではと思っております」
「わかりました。また一度、シーダム王国に持ち帰りまして、その件もルートロック殿下に伝えておきますね」
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