57 瀕死のユイン王子
「う~ん。二つ目の毒がどれかしら。シーダム王国にない毒から選びましょう」
アラマンダは手にした資料を読んでいく。虫由来の毒、魚由来の毒……動物由来の毒。
順番に目を通していく。致死量もきちんと確認しておかないといけない。
「ん~。私の知らない毒はこの虫の毒と、この動物の毒の二つかしら」
他の毒は、接種したことはないけれど、知識としてどんな症状が出るのかは以前、王宮の禁書庫で読んだことがあるから該当していない。
アラマンダは右手と左手にそれぞれの小瓶を手に持つ。
「この二つのどっちかだと思うのだけれど、どっちかしら……」
アラマンダの独り言が聞こえたようで、指輪の中からメオがひょこっと飛び出してきた。
「もう一つの毒は、こちらにゃ」
メオが可愛い肉球で小瓶をちょんちょんと触る。
「メオ様は、そんなこともわかりますの?」
「にゃ。わかる時とわからない時があるにゃ。今は、もう一匹のメオが歩き回って調べた情報からわかったにゃ」
どうやら、メオは分裂して動いていても、意識と情報は共有できているらしい。
(まぁ、メオ様が特定してくださったのなら、この毒で間違いないわね。この解毒薬を作ってもらったら国王陛下の容態も快復するのではないかしら)
二つ目の毒が特定できたところで、牢屋の小窓からメオが戻ってきた。
「ただいまにゃ」
「おかえりにゃ」
そう二匹のメオがお互いに声をかえると、スーッと影が重なり元の一匹のメオに戻ってしまった。
「おかえりなさい、メオ様」
「もーーう! 大変だったにゃ!!」
少しばかりお怒りモードのメオに、アラマンダは目を丸くする。
(メオ様の怒ったところ初めて見ましたわ)
「どうでしたか? ユイン様はご無事ですか?」
「にゃ。無事……ではないにゃ! あの拷問していた人間みんな電気でビリビリの刑にしてやったにゃ」
電気でビリビリと感電させてしまうほど、ひどいことをユイン様に行っていたとアラマンダは彼がどうなったのか心配になる。
「それで、メオ様。今、ユイン様はいずこですか? お怪我などされているのでしょうか?」
「ユイン王子は、今、我の『空間収納』の中にいるにゃ」
アラマンダは嫌な予感がして、背筋がゾクゾクするのを感じた。
「アラマンダの予想通りにゃ。拷問で大けがをして瀕死の状態ゆえ、手当てができる環境が整うまで我の空間の中で時間を止めてあるにゃ」
「……そんな……瀕死の状態ですって……」
アラマンダは、口元を手で覆う。
(いくらなんでも……ひどすぎるわ。そこまでしてユイン様が脅威の存在になったということなの?)
毒を持ってきたのはアラマンダだが、ババタの大量発生を収束するのに必死だった彼の功績をそんな風に一瞬に奪ってしまうなんて許せなかった。彼が国民の為を思って奔走した結果、助けを求めたのがシーダム王国だったにすぎない。
「……でも、今はまだ息があるということですわね」
「まぁ、アラマンダがここを出て無事を確認してからゆっくり我が治療したら、問題ないはずにゃ」
メオは、傷の程度までは詳しくアラマンダに伝えなかった。今は、アラマンダが動揺するような発言をして不安にさせてはいけないとの配慮したからだ。




