54 牢屋の中
「ユイン第五王子……大丈夫かしら……。国王陛下もすぐに解毒できるといいのだけれど……何を飲まされたのかしら……」
今は、何もすることがない。
しばらく状況を見て探るしかない。
そして冷たい石室でできた牢屋の中で座ったまま朝を迎えた。
「ちょっとショールを羽織るだけだと寒いわね。腰も痛くなってしまうわ」
アラマンダは自分の両腕で身体を抱え込み、寒さをしのぐ。
すると、指輪からほんのりひだまりのような色が発光してぽかぽかと身体が温かくなってきた。
(メオ様だわ。指輪の中から魔法で温めてくれているのね)
「ありがとうございます。メオ様」
アラマンダは、指輪の中にいるメオに向かってお礼を述べる。
「そろそろドラゴン様も迎えに来る時間じゃないかしら? どうやって伝えたら良いかしら……」
アラマンダが独り言をつぶやくと、それを聞いたメオが指輪の中からスルッと現れた。
「あら? 私がお呼びしなくても出てこれますの?」
「もちろんだにゃ。これは王宮魔導士が作った指輪だけれど、解析なんて簡単だから自分で出入りできるように書き換えたにゃ。ドラゴンは……書き換える能力はないみたいだけどにゃ」
(確かにドラゴン様が自力で出入りすることが可能だったとしても、身体が大きすぎるからちょっと大変よね。それに引き換えメオ様は、どこからか迷い込んだ猫にしか見えないわね)
メオは牢屋の上部の天井付近に取り付けてある鉄格子のはまった小さな小窓にピョンと飛び乗り、外に身を乗り出す。
「もうドラゴン、来ているにゃ。おーーーい!!」
メオが人語で声をかける。
ドラゴンは、すぐ近くに『隠ぺい魔法』をかけた状態で待機していたらしい。
「ドラゴンよ。アラマンダが捕まったからその旨、ルートロックに伝えるにゃ。まぁ我がおるから処刑だど最悪の事態にはならないから安心せよと伝えよ。我はしばらくアラマンダとこの国の情勢を見極める。ことによっては……この国にはお仕置きが必要になるにゃ」
メオは冷静なようで、言葉の不穏な言葉をにじませる。
アラマンダが捕らえられたことを内心、怒っているのかもしれない。
メオがドラゴンに言伝を頼むと、今度は塔の下に目を向けて、下の様子を見る。
目を閉じて、しばらくヒゲをぴくぴくと震わせていた。
(やっぱり、あのおヒゲはセンサーみたいね)
アラマンダはメオ様の真剣な横顔を見ながら、どんな能力を秘めているのかしらと想像を楽しんでいた。
「アラマンダ。やっぱりユイン王子も捕まっているみたいだにゃ」
「それは……ご無事だといいのですけれど。メオ様、私は構いませんので、ユイン王子の様子を見に行っていただけませんか? 私より立場が不安定な方ですので、何かされていないかとても不安です」
「うむ、ユイン王子が死ぬ前に助け出したほうが良さそうにゃ」
そのメオの不穏な発言を聞いて、アラマンダは青くなる。
(メオ様は……そこまでわかるということよね? 拷問にでも合っているということかしら)
「アラマンダ。我の相棒をここに置いておくゆえ、まぁ、相棒と言っても能力は我と全く一緒の猫ゆえ我だと思って扱っておくれ」
「相棒ですか?」
アラマンダが質問を返すのが早いか、メオが分裂するのが早いか。
(メオ様が……二匹になったわ)
「ちょっと行ってくるにゃ」
「えぇ、ユイン王子をどうぞ宜しくお願い致します」
アラマンダが言い終わらないうちに、塔の小窓からメオは飛び出していった。




