53 罠
シーダム王国の王太子妃アラマンダが毒に精通しているということで、ファイ国のユイン第五王子を手伝い、無事にババタの駆除に効果が出始めて、目に見えてババタ大量発生が収束に向かっていた。
明日の朝、アラマンダはシーダム王国に向けて帰国するためにルートロックの聖獣ドラゴンが迎えにくる予定になっている。
その深夜遅く。
アラマンダの貴賓用の寝室の扉が強く叩かれる。
「メオ様!」
アラマンダは、寝台で共に横たわってリラックスしていたメオを自分の右手の指輪の中に隠す。
何だかやけに外が騒がしい。
「おい! ここを開けろ!!」
アラマンダは慌てて、夜着から着替えて身なりを整えた。その上に厚手のショールを羽織り、自分が貴賓として扱われていない状態に嫌な予感がする。
(罠にはめられたようね……)
アラマンダが扉を開けると、騎士服を着た男性三名に取り押さえられ、すぐに拘束される。
「ユイン第五王子が手引きした毒を扱う者とはそなたで間違いないな? よし、連れて行け」
(あー、やっぱりね)
毒を扱う時の注意点は、何か事件があったときに自分が一番最初に疑われる可能性があるということだ。
ということは、他国であるこの地で何か毒に関する事件が起きたということになる。
「あのう、何かあったんですか?」
アラマンダの手首を縄で拘束して、歩き始めた騎士の一人に声をかける。
「何をのんきなことを言っている。そなたが持ち込んだ毒で国王陛下が倒れられたに決まっているだろう」
「……私はユイン第五王子に依頼されて、この国に参ったのですが?」
「そんなものは知らん。疑いがかかっているのだから、大人しく牢屋に入っておくこったな」
王国騎士団だろうか。牢屋の衛兵なのか、よくわからないが今はそのまま牢屋に入るのが一番だろう。
疑いがかかっているなら仕方がない。疑いが晴れるのを待つしかない。
……でも、ひとつ気になることがある。
「すみません。ちなみに国王陛下が飲まれた毒の種類はご存じですか?」
「そんなものはわからん。息ができないと言って寝台の中で真っ青になって倒れていたということしかな」
(呼吸困難を引き起こす毒……どれかしら。ファイ国の医師が解毒できるといいのだけれど)
「万が一、私の知識がご入用になりましたらお呼びくださいとどなたか王族の方にお伝えいただけますか?」
アラマンダが、騎士にそう伝えた瞬間。
後ろから男性がツカツカと速足でやってくるのが見えた。
こげ茶色の髪と瞳を持つ人物だ。
「そこの女。そんな必要はない。お前の手助けなどいらん。お前が毒を持ち込んだのであれば解毒薬も持っているという意味だろう」
「いえ。解毒薬は持っておりません」
「ふん。どっちでもいい。父上が亡くなったら、お前の命もないと思っておくんだな」
(この方は……この物言いからして、父上とおっしゃっているので、王子で間違いないでしょうね。何番目かはわかりませんが)
アラマンダは、その勝ち誇った様子の男性の顔を見て、ペコリとお辞儀をするとそのまま塔の中の牢屋の中に入れられた。
その男が扉を閉める瞬間にニヤッと薄気味悪く笑ったような気がする。
(他国に毒を持って行ったら、こういう罠には嵌められそうねぇと思っていたけれど、やっぱり予想通りだったわね)
さきほどの男が王子であって、国王陛下の毒殺を目論んでいるとしたら彼は国王陛下を助けるわけがない。私を呼び寄せたユイン第五王子が姿を現さないことから考えると、彼も私を手引きした者として捕えられているか、すでに殺されている可能性が高い。
国王陛下とユイン王子をともに葬ってしまえば、一気に邪魔者は片付くし、毒を持ち込んだ私を犯人にして捕まえて処罰を与えたと国民に知らせれば、賞賛されて新たな王が誕生するというストーリーが出来上がる。
結局、事実など調べるつもりは最初からないと考えておいたほうが良さそうだ。
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