48 毒耐性を持ったババタ
ファイ国の王城の中にユイン第五王子と共にルートロックとアラマンダはやってくると、そのまま貴賓室の横にある応接室に案内される。
街中の服装から着替えて髪型も整えたユイン第五王子は、どこからどう見ても王族らしく凛とした青年だった。
(ははは。さっきは暗殺者かと思ったがきちんと身だしなみと所作を見ればどこをどう見ても王子だな)
ルートロックは先ほどとは、全く異なる表情を持つユイン王子をそっと目を細めて眺める。
(美しい所作を持ち合わせているのに、街中ではそんな素振りは全く見せなったな。……王子らしさを醸し出さないところも演技というわけか……)
ルートロックはユイン王子が知的な部分を隠して生き抜いてきた王子なのかもしれないと、同じ王子の立場として察する。
(後継者争いで暗殺されることを危惧して、賢さを隠しているのに違いない)
「申し訳ございません。本日は国王陛下の謁見は難しいので、後日、日を改めて予定を組みたいと思います」
「ユイン殿。今回は我々もお忍びで立ち寄っているだけで……貴国が本当に困っているのかどうか視察に来ただけだから、気にせずとも良い」
「……恐れ入ります。まさか、封書を送ったばかりですぐに訪問していただけるとは……思っておりませんでしたので、準備不足で申し訳ございません」
ユイン第五王子は、自分が書いた手紙を読んでまさかファイ国まで様子を見に来てくれるとまでは、予想していなかったようだ。
「私、妻のアラマンダと申します。……あのう、私、ババタを一度近くで見てみたいのですが、あとで実物を見せていただくことは可能でしょうか」
アラマンダは、シーダム王国の書庫でババタの姿図は見てきたがいまいち実物を見ないとよくわからなかった。
「ええ、もちろんです。今年はババタの産卵が多く発見されていたので、卵を見つけ次第駆除するように各地に知らせは出したのですが、その駆除が追い付かずすでに成虫になっております。それが穀物を食べてしまい農作物や牧草地を食べ始めたため、今、小麦などの価格が高騰し始めている現状です」
アラマンダは、森野かおりとして生きていた時にテレビ番組で見たニュースと内容が似ているので、やはりバッタのような空を飛んで移動できる昆虫なのかもしれないと考え始める。
「貴殿に問うてみたかった件がある」
ルートロックは、今もなお、なぜ遠く離れたシーダム王国に助けを求めてきたのか理解できていないので、直接ユイン第五王子に聞いてみることにした。
「なぜ、我が国に助けを求めた? それがわからなくてな。隣国の方が良いとは思わなかったのか?」
「……そうですよね。疑問を持たれるのは当然のことです。私がシーダム王国に封書を送ったのは……アラマンダ王太子妃殿下にお知恵を拝借したいと思ったからです」
一瞬にしてルートロックの眉間に皺が寄る。
(やはりアラマンダの召喚した聖獣絡みなのか?!)
「アラマンダ王太子妃殿下が毒に精通しているというお話を耳にしまして、ババタの駆除用の毒餌をご指南いただけないかと思い封書を送りました」
ルートロックはユイン第五王子のこの説明だけでは納得ができないでいる。
「毒に詳しい者なら、このファイ国にもいるだろう? その者たちには相談したのか?」
「えぇ、もちろん相談しました。……その彼らがこのファイ国よりも別の地域に生息している植物で毒餌を作った方が良いと申したのです」
そこまで話を聞いたアラマンダは、一つのことに思い至る。
「……それは、もしやババタが雑食性の生き物だと仮定したら……すでにこの国の毒を持つ植物にも耐性ができてしまっていて、毒が効かないから……ということでしょうか?」
俯き加減に話していたユイン第五王子が、勢いよく顔を上げる。
「おっしゃる通りです! 毒餌を作って試しましたが……すでにババタはこの国の植物の毒耐性をつけてしまっていたため、駆除することが叶いませんでした」
(……そうなのね。であれば、確かにシーダム王国の毒を用いて駆除するのも一つの手かもしれないわね)
アラマンダはユイン王子がババタに有効な毒を知りたがっていることがわかり安堵する。
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